刑事訴訟法(R4)

【問題文】

次の【事例】を読んで、後記〔設問〕に答えなさい。
【事例】
 司法警察員Pは、Aが覚醒剤を密売しているとの情報を得て、内偵捜査を進めた。その結果、その拠点は、Aが妻甲及び息子乙と同居するアパート1階にあるA方居室であるとの疑いが強まった。
 そこで、Pは、令和3年11月13日、Aを被疑者とする前記覚醒剤営利目的譲渡被疑事件に関し、捜索すべき場所をA方居室、差し押さえるべき物を「覚醒剤、注射器、計量器等」とする捜索差押許可状の発付を受けた。
 Pは、同月15日、他の司法警察員らと共に、A方居室付近に赴き、同日午後1時30分頃、玄関扉を少し開けて顔を出した甲に対して、捜索を実施する旨告げた。
 Pは、Aが不在であったため、甲を立会人としてA方居室の捜索を実施することとし、甲に対して、前記捜索差押許可状を呈示して捜索を開始した。その際、甲が同室玄関内において、コートを着用し、靴を履いてキャリーケースを所持していたことから、Pは、甲が同室内から覚醒剤の密売に関する物を同キャリーケースに入れて持ち出そうとしていたのではないかとの疑いを抱き、甲に対し、再三にわたり、同キャリーケースを開けて中を見せるように求めた。しかし、甲は、同キャリーケースの持ち手を握ったまま、これを拒否した。そこで、Pは、①甲の承諾を得ることなく、無施錠の同キャリーケースのチャックを開けて、その中を捜索し、覚醒剤や注射器を発見した。
 その後、Pは、他の司法警察員らと共に、同室の捜索を継続し、同室から覚醒剤、注射器及び計量器を発見した。そして、その頃、乙がボストンバッグを所持して同室に帰宅した。乙が同室内に入った後も同ボストンバッグを手放さなかったことから、Pは、同ボストンバッグ内にも覚醒剤の密売に関する物が入っているのではないかとの疑いを抱き、乙に対し、再三にわたり、同ボストンバッグを開けて中を見せるように求めた。しかし、乙は、同ボストンバッグを両腕で抱きかかえて、これを拒否した。そこで、Pらは、②乙を羽交い締めにした上、乙から同ボストンバッグを取り上げて、その中を捜索し、覚醒剤を発見した。
〔設問〕
下線部①及び②の各行為の適法性について論じなさい。なお、前記捜索差押許可状は適法に発付されたものとする。

(参照条文) 覚醒剤取締法
第41条の2 覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第42条第5号に該当する者を除く。)は、10年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。
3 (略)

【メモ】

●自己評価:C(実際F)
・構成が甘い。
・222条1項本文前段、102条2項で良かったか?(少なくともメインではなかった模様。加重要件として、証拠存在の蓋然性が必要とする考え方に立つこともありえた、ということ。司法平成29年採点実感参照)
・結果次第で、論点論証の必要性の程度が判る。
●判例:最判平成6年9月8日、最決平成19年2月8日

【答案例】

第1 ①について
1.A方居宅という場所に対する捜索令状で、甲の所持するキャリケースの捜索ができるか。
(1)●場所に対する捜索許可状に基づき、その場所に存在する「物」を捜索することの可否
(場所に対する捜索差押許可状の効力は、当該場所の管理権者とそこにある物の管理権者が同一である場合には、場所に付属するものとして当該物にも及ぶ。という考えが一般的。)
(2)あ:重大犯罪、同居なので認識ある可能性、小さいので隠せる。等
2.適法

第2 ②について
1.
(1)●捜索差押許可状の効力が、令状呈示後に同居室内に搬入された物品にも及ぶか
(2)あ:出入り(判例)、発見後、「抱きかかえて」、生活拠点、譲渡なので隠し場所である可能性(同居)。
2.
(1)●捜索の際に処分を受ける者の身体に有形力を行使することの可否・程度
(2)あ:…
3.適法

以上

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