刑法(R5)

【問題文】

[刑 法]
以下の【事例1】及び【事例2】を読んで、後記 及び に答えなさい。〔設問1〕 〔設問2〕
【事例1】
1 甲は、かねてより会社の上司であるXから執ように叱責されるなどしていたことに恨みを募らせ、登山が趣味のXを登山に誘って山中に連れ出し、Xを殺害した上でXが滑落によって事故死したように装い、犯跡を隠蔽しようと考えた。甲は、某月1日、Xを登山に誘い、Xが喜んで応じたことから、同月10日、Xと2人で1泊2日の登山に出掛けた。
2 甲とXは、同日午前10時頃から登山を始めたが、同日午後4時頃、天候が急変して降雨となったため、当初の登山計画を変更し、山頂付近にあった無人の小屋で一晩を過ごすことにした。甲は、同日午後5時頃、疲れていたXが上記小屋内で熟睡したことから、この機会にXを殺してしまおうと決めた。ちょうどその頃、雨が止んだため、甲は、Xを殺した後にXの滑落死を装うための場所をあらかじめ探そうと思い立ち、上記小屋周辺を下見しておくことにした。甲は、しばらくの間、上記小屋を離れ、外に出ることにしたが、外にいる間にXに逃げられないようにするため、同日午後5時5分頃、同小屋の出入口扉を外側からロープできつく縛り、内側から同扉を開けられないようにした。なお、上記小屋は、木造平屋建てで、窓はなく、出入口は上記扉1か所のみであった。
3 その後、甲は、上記小屋から歩いて約100メートル離れた場所に、高さ約70メートルの岩場の崖があるのを確認し、同日午後6時頃、同小屋に戻り、上記ロープをほどいた。Xは、同日午後5時頃に熟睡した後、一度も目を覚まさなかった。

〔設問1〕
【事例1】において、甲に監禁罪が成立するという主張の当否について、具体的な事実関係を踏まえつつ、反対の立場からの主張にも言及して論じなさい。

【事例2】(【事例1】の事実に続けて、以下の事実があったものとする。)
4 甲は、上記小屋内に戻った後、Xを殺そうと思ったが、死体がすぐに見つかってしまっては何らかの殺害の痕跡が発見され、滑落による事故死ではないことが判明してしまうと不安に思った。そこで、甲は、同日午後6時10分頃、Xの携帯電話機をXの死体から遠く離れた場所に捨てておけば、同携帯電話機のGPS機能によって発信される位置情報をXの親族等が取得した場合であっても、Xの死体の発見を困難にできる上、Xが甲とはぐれた後、山中をさまよって滑落したかのように装う犯跡隠蔽に使えると考え、眠っているXの上着のポケットからXの携帯電話機1台を取り出し、自分のリュックサックに入れた。
5 甲は、同日午後6時20分頃、Xを殺すため、眠っているXの首を両手で強く絞め付け、Xがぐったりしたのを見て、Xが死亡したものと思い込んだ。しかし、この時点で、Xは、意識を失っただけで、実際には生きていた。
6 甲は、同日午後6時25分頃、Xの死体を上記崖まで運んで崖下に落とすため、Xの背後から両脇に両手を回してXの身体を抱え上げた。その際、XのズボンのポケットからXの財布が床に落ち、これを見た甲は、にわかに同財布内の現金が欲しくなり、同財布内から現金3万円を抜き取って自分のズボンのポケットに入れ、同財布をXのポケットに戻した。
7 甲は、同日午後7時頃、Xを上記崖まで運び、Xを崖下に落とした。甲は、Xが既に死んでいると軽信し続けていたが、この時点でもXはまだ生きており、上記崖から地面に落下した際、頭部等を地面に強く打ち付け、頭部外傷により即死した。
8 甲は、すぐに上記崖から離れ、同日午後10時頃、同崖から約6キロメートル離れた場所まで来ると、その場に上記携帯電話機を捨てた。同月11日、Xが帰宅しなかったことから、Xの親族が上記携帯電話機のGPS機能によって発信される位置情報を取得し、その情報を基にXの捜索が行われたが、Xの発見には至らなかった。

〔設問2〕
【事例2】における甲の罪責を論じなさい(特別法違反の点は除く。)

【メモ】

●評価:E
・第1行為・第2行為の整理の仕方がまずかった(第2行為に着目しすぎ)。
・出題趣旨:反対説も。趣旨から書く。●認識:マイナー論点の場合に特に。だろう。他では時間ない。設問形式等から適宜判断。
・量を書く必要があった模様。刑訴法は軽く。ゆえシッカリ記憶。

【答案例】

第1 設問1
1.「監禁」とは。
可能的自由v.s.現実的自由 ●趣旨から。
2.あ(シンプルでOK)

第2 設問2
1.首を絞めた行為(199条)
(1)生命断絶〇・結果〇・因果関係〇
(2)
ア もっとも、首絞め死亡と誤信。崖から落としている。そこで、因果関係の錯誤。
イ あ:〇

2.崖から投げ捨てた行為
(1)抽象的事実の錯誤
(2)重なり合いがなく、死体遺棄罪は不成立。

2.携帯を自分のリュックへ(235条)
(1)「他人の財物」〇、「窃取」〇
(2)
ア もっとも罪責隠蔽。そこで、不法領得の意思 ●GPS利用もポイントだったらしいが無理。
イ あ:〇

3.3万円(235条)
(1)「窃取」〇(気絶でも)
(2)
ア もっとも死亡と思っている。そこで、死者の占有(主観面で) ●方針:事後的奪取意思も問題になり得たようだが、出題趣旨になく、またこちらを厚く書く方が重要。無視。
イ あ:かかる認識も〇

なお、携帯電話を捨てた行為は、105条不成立。自己の犯罪。不可罰的事後行為ともいえる。
以上、45条。

以上

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