民法

☆留意点・知識等

●法律効果・生の請求から考える。→請求権
●物権(財貨の移転・帰属)→債権(契約→法定)
●全要件の「羅列」は求められていない。1要件で切れれば、後は論じなくても不利とはならない。らしい。なお、逆に、法律効果発生のためには全要件認定が必要なことは当然。
●「借地借家法10条1項、31条」等の条文適示・「第三者」等の定義・「付従性」等のKeyword。等を丁寧に。基本を示す。
●売買の場合、(錯誤、詐欺等による前に)契約不適合責任の検討から入る。解除・損害賠償請求は並行してOK(564条)。(以上、私見)。●検討:どちらでも良いか。
●債権者代位権・債権者取消権の利活用(事例において発想が必要。とりわけ、自身の請求(時効援用等)が立たない場合の発想の転換として。「無資力」は当然として。)
●転売により利益が上がる事例では、「債務不履行の基づく損害賠償の範囲には履行利益も含まれる。」と述べ、認定する。●確認:論証不要?「瑕疵」概念は無くなり、契約責任であることは明確ゆえ?●確認:転売は必然ではなく、転売利益は416条1項の損害ではないとの判例(大判昭和9年1月16日)との関係。
●土地賃借人が土地を購入した場合、原則として、賃借権は混同により消滅(179条1項本文類推)。その後、対抗要件で負けた場合、所有権を失う点は甘受すべきである一方、賃借権まで消滅することは酷。そこで、179条1項ただし書き類推適用(根拠:賃借権の物権類似性)により、賃借権が遡及的に復活すると解される。●判例:最判昭和46年10月14日●検討:酷ではないのでは?●参考:旧平成15年
●賃貸人が対抗関係で負けた場合、負けた者からの賃借人は遡って無権利者となり、対抗要件を備えていても不法占拠者となる。●認識:当然だが、その時は権利があった、等の理屈に依拠してしまう可能性に注意。
●賃貸人の使用収益させる債務が履行不能となった場合、双務契約上の債務の牽連性から、賃料請求権を存続させる合理性がなく、賃貸借契約は当然終了(最判平成9年2月25日)。
●抵当権の実行により従たる権利としての土地賃借権も移転しうるが、賃貸人の承諾が必要(612条1項)。もっとも、借地借家法20条による救済が可能。また、信頼関係破壊の法理により、特段の事情がある場合にも、保護可能。
●即時取得していない者に対しては、占有回収の訴えにより引渡請求可能となりうる。200条、201条の要件吟味次第。即時取得している場合も、193条を失念しない。
●旧105条の削除趣旨は復習しよう。使用者責任等に関連するらしく。●認識:あまり
●履行不能の場合、危険負担(536条)による履行拒絶も、解除(542条1項1号)も、いずれも可能。なお、債権者帰責性ありの場合の536条2項前段を失念しない。
●受領遅滞中、特定(準備・分離・通知)→引渡しとす進んだ場合、引渡しまで危険は移転しない(567条2項)なので、特定は危険の移転基準ではない(新債権法)。引渡しまでは、緩和された自己の財産に対するのと同一の注意義務(413条1項)を負担するが、危険は移転していない。●検討:特定(物ではない)ドグマがなくなったから、と理解しうるか。●認識:特定していないければ、保存義務の話にすらならない。保存義務は、415条1項ただし書きの免責事由の話。●参照:旧55年第2問。●確認:結果債務とは?。●確認:改正前から、受領遅滞+特定で初めて危険移転だったのでは?
●受領遅滞以降であっても、種類債権の場合、基本的には履行不能はありえないので413条2項第2項の適用はない。●認識:受領遅滞になっているので不履行にはならない、と単純には決められない。特定物ドグマがなくなったから、とは関係ないだろう。
【条文「集」】
●履行不能(412条の2第1項)●参照:616条の2
●分割債務(427条)
●保証人の相殺に関する履行拒絶権(457条3項)
●同時履行の抗弁権(533条本文)●理解:「本文」を。
●催告に基づく解除(541条本文)
●催告に基づかない解除(542条●項●号)●認識:末尾は項・号まで適宜特定
●追完請求権(562条1項本文)●認識:「追完」は、適宜「修補」・「代替物引渡」・「不足分引渡」に入れ替える。
●代金減額請求権(563条●項)●理解:催告による、は1項。無催告は2項。●補足:代金支払い済み、かつ解除前であれば、703条・704条(解除後は545条1項)
●損害賠償請求権(415条1項本文)●理解:末尾は、適宜415条2項●号等に入れ替える。
●559条(有償契約)・564条(売買契約)を適宜冒頭に追記する。●認識:有償契約は、請負、賃貸借が多い。

☆総則

☆留意点・知識等

●フレーズ:「…の趣旨は、…の表示に対する第三者の信頼保護にある。」
●問題:物に対する構成員の権利等。●結論:総有。●理由:社団としての社会的実体を有している。
●趣旨(87条2項):かかる効果が社会経済上望ましいため。●結論:従たる権利は、主たる権利の処分に従う(87条2項類推)。●抵当権の場合は370条類推。
●フレーズ:「…は無断で…。よって、無権代理として、…に効果帰属しないのが原則である(113条1項)。」
●代理と通謀虚偽表示、代理人の権限濫用は論点消滅(107条に収斂)。●注意:表意者の帰責性を問題とすることはできない。別の法律構成たる94条2項類推でも同様。107条を前提にした更なる第三者には94条2条類推余地あり。
●票権代理の重畳適用も論点消滅(109条2項・112条2項)。
●署名代理も有効。顕名の趣旨は、法的効果帰属主体を相手方に明示する点にある。
●表見代理が成立する場合も無権代理人の責任(117条)も選択的に追及可能。表見代理は相手方保護のための制度であるから。
●表見代理における「第三者」(109条等)は、代理行為の直接の相手方に限られる。転得者が代理権の存在を信頼することは通常ないことから。
●時効の援用権者については、「当事者」(消滅時効の場合、「正当な利益を有する者」を含む。)に該当するか?の問題(●論点消滅?いずれにしても、ほぼ文言通り)。後順位抵当権者については、順位上昇による反射的利益を受けるに過ぎないため、否定。
●債権者による時効援用権の代位行使は可能。当事者の財産的利益のみに関するものであり一身専属権ではなく、債務者の援用権不行使が債権者を害する場合にまで、債務者の自由意志を尊重する必要性はない。
●時効の法的性質については、当然効果が発生するとも解される条項(「取得」(162条)・「消滅」(166条)に対し、援用(145条)を要する点を整合的に考え、援用を停止条件として権利の得喪という実体的効果が確定的に発生する制度と解される。
●時効完成後の債務の承認は、時効の完成を知らなければ放棄(146条)の意思とは認められない。しかし、かかる行為は、時効による債務の消滅と矛盾し、債権者としてはもはや時効援用はないと信頼するのが通常。そこで、かかる信頼保護を要する場合には、信義則(1条2項)上、援用権は失われると解される。
●再度の時効取得の可否は、抵当権の存在を容認していた等の抵当権の消滅を妨げる特段の事情があるか否か次第(最高裁)。他は通常の話。
●主債務者による債務の承認(152条1項)による時効の更新は物上保証人に及ぶか?原則(153条3項)。457条のような規定もない。よって、及ばないとも思える。しかし、物上保証人は時効の援用権者である(145条)こととの公平。担保権の付従性。396条の趣旨。よって、及ぶと解される。●補足:物上保証人による弁済は「承認」(152条1項)非該当。物的責任のみで債務を負っていないので。
●法定代理の場合の代理権の濫用、親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情が必要(判例)。
●「中断」(164条)という文言は残っている。時の経過に関する消滅時効の期間とは異なり、占有の継続期間たる取得時効の期間については、事実的支配状態の断絶がありうることから。
●無権利者を委託者とする販売委託契約を所有者が、同契約に基づく債権債務関係を自己と受託者との間に発生させる意思で追認しても、同契約に基づく販売代金引渡請求権は取得しない。契約は有効に成立、債権債務が発生する理由なく、また受託者の無権利者に対する抗弁を奪う等の不利益あり(最判平成23年10月18日)。●認識:物権的効果を発生させる、という追認(116条類推)(最判昭和37年8月10日)とは別の話。

(心留保)
第九十三条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

(虚偽表示)
第九十四条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

(錯誤)
第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

「目的の範囲内」(34条)(C)

●問題:「目的の範囲内」(34条)の意義
●結論:権利能力の制限
●理由:(1)法人の存在意義は自然人以外で権利・義務を有する点こそにあり、また(2)「権利を有し、義務を負う」との文言がある。
●帰結:目的範囲外の行為は絶対的無効(●例外的にその主張が信義則違反になる等のケースはありえるが)
●問題:取引の安全を害する。

●補足:非営利法人の場合、目的の公益性・構成員の予測可能性確保等の見地から、比較的厳格な解釈が必要となる。

「損害を賠償する責任を負う」(C)

●問題:「損害を賠償する責任を負う」(一般社団・財団法人法78条)
●結論:不法行為能力を肯定(●検討:民法34条とは別途)
●理由:法人は活動する社会的実在であること。
●問題:代表者の個人責任は否定?
●結論:肯定(709条)
●理由:代表者の行為は、法人・個人の行為の二面性を有する。
●帰結:そして、両者の責任は、不真正連帯債務となると解される。

「職務を行うについて」(C)

●問題:「職務を行うについて」(一般社団・財団法人法78条)
●理由:ある行為が職務に属するか否かが不明確では、相手方の予測可能性を害する。
●結論:そこで、行為の外形上職務行為自体と認められるもの、及び社会通念上これと密接に関連するものを含むと解される。
●展開:他方、職務に属しない点につき悪意・重過失の相手方との関係では、実際の職務に属するか否かを検討すれば足りる。

●補足:民法117条もありえる。

理事の行為(定款違反)(C)

●問題:「善意」(一般社団・財団法人法77条5項)
●理由:法人の代表者には包括的な代理権があるのが原則(同法77条4項)である。
●結論:無過失までは要しないと解される。
●問題:仮に悪意であっても、「制限」(同法77条5項)を解除する理事会決議がある等と信頼した第三者は保護する必要性がある。
●結論:110条類推適用(●理事の法令違反行為の場合も同様)
●展開:他方、理事が当該解除がありと装った等の場合、一般社団・財団法人法78条の不法行為責任も成立しうる。
●結論(私見):相手方は、いずれをも選択可能。

●補足:一般社団・財団法人法77条1項

動機の不法

●問題:動機のみ不法な場合
●理由:動機は、契約の要素ではない。また、外部からは伺い知れないため、考慮すると取引の安全を害する。
●結論:原則として、契約は有効と解される。
●要件:もっとも、不法な動機が表示され、契約内容となっていた場合には、
●結論:例外的に、契約は無効と解される。

「第三者」(94条2項)

●問題:「第三者」(94条2項)
●趣旨:この点、同項の趣旨は、虚偽の外観に対する第三者の信頼保護
●結論:そこで、「第三者」とは、虚偽表示の存在を前提として、新たに独立の法律上の利害関係を有するに至った者をいう。
●理由:また、表意者の帰責性が重いこと、及び文言上の制限が無いことから、
●結論:第三者の過失の有無は問わないものと解される。
●理由:さらに、表意者と第三者とは前主後主の関係にあることから、
●結論:第三者に登記は不要である。

●前提:転得者も、趣旨が妥当することから、「第三者」に含まれる。
●問題:悪意の転得者は「善意の第三者」ではない。
●理由:しかし、その保護をしなければ、善意者に対する債務不履行責任(415条)追及のおそれが残る等、法律関係が安定しない。
●結論:そこで、悪意の転得者は、善意者が取得した権利を承継取得すると解される(絶対的構成)。
●歯止:ただ、殊更に善意者を介在させた場合、信義則上(1条2項)、権利主張は許されない。●検討:権利を取得しない、か。
●検討:93条2項の「第三者」につきあまり議論されない理由。心裡留保は有効(93条1項本文)だから。甲が、乙に「俺の家をやるよ」と伝え、乙名義の登記がされた。通謀なし。の場合、有効になる。第三者保護の話にならない。第三者が悪意又は有過失(93条1項但書)の場合、第三者保護の話にならない。また、前提を欠き、登記の要否の話にならない。

94条2項類推(A)

●問題:「通じて」いないため、94条2項の適用はない(原則)。
●趣旨:虚偽の外観を作出した真の権利者の負担の下、外観を信頼した第三者の信頼を保護する。
●要件:そこで、①虚偽の外観、②真の権利者の帰責性、③第三者が善意であれば、
●結論:94条2項を類推適用できると解される。
●展開:もっとも、②真の権利者の帰責性が小さい場合には、
●理由:110条の法意に照らし、
●結論:③については無過失まで要すると解される。

●補足:94条2項の解釈論は、93条2項の解釈論としても基本的に妥当する。

動機の錯誤(A)

●問題:「表示」(95条2項)
●理由:認識可能性のみでは足りるとすると、錯誤に該当するケースが拡がり過ぎ、取引の安全を害する。
●結論:明示・黙示の表示により、相手方にも了解され法律行為の内容となっていることまで要すると解される。


●補足:動機の錯誤は例の論点自体は消滅。
●補足:錯誤取消し化により、無効との二重効の論点消滅。

●「第三者」(95条4項)

●問題:「第三者」(95条4項)
●趣旨:取消しの遡及効(121条)を制限し、第三者の信頼を保護すること。
●結論:錯誤に基づく法律関係について、新たに独立の法律上の利害関係を有するに至った者、即ち取消し前の第三者をいう。
●展開:そして、表意者と第三者とは前主後主の関係に立つことから、
●結論:第三者に登記は不要と解される。
●問題:また、前後関係は偶然に過ぎず、取消後の第三者についても保護の必要性はある。
●理由:取消しの遡及効は法的擬制とすると、実質的には復帰的物権変動があり、取消権者を起点とした二重譲渡類似の状況にある。他方、取消した者は登記を速やかに取り戻すべきといえる。
●結論:そこで、取消し後の第三者と取消権者との関係は、対抗関係に立つと解される。
●認識:詐欺行為者に登記が移っていないのに信頼すれば、過失ありとなるだろうから、登記がある事例しかないだろう。

●補足:詐欺取消の相手方の無過失は明文化(96条3項)。

●「第三者」(96条3項)

●問題:「第三者」(96条3項)
●趣旨:取消しの遡及効(121条)を制限し、第三者の信頼を保護すること。
●結論:詐欺に基づく法律関係について、新たに独立の法律上の利害関係を有するに至った者、即ち取消し前の第三者をいう。
●展開:そして、表意者と第三者とは前主後主の関係に立つことから
●結論:第三者に登記は不要と解される。
●問題:また、前後関係は偶然に過ぎず、取消後の第三者についても保護の必要性はある。
●理由:取消しの遡及効は法的擬制とすると、実質的には復帰的物権変動があり、取消権者を起点とした二重譲渡類似の状況にある。他方、取消した者は登記を速やかに取り戻すべきといえる。
●結論:そこで、取消し後の第三者と取消権者との関係は、対抗関係に立つと解される。
●認識:詐欺行為者に登記が移っていないのに信頼すれば、過失ありとなるだろうから、登記がある事例しかないだろう。
●認識:本人の帰責性は、第三者に無過失まで要求する点で考慮されており、登記の要否については不要。

●補足:詐欺取消の相手方の無過失は明文化(96条3項)。
●補足:96条3項の解釈論は、95条4項の解釈論としても基本的に妥当する。が、錯誤の原因が、自ら(95条)か、詐欺されてか(96条)は大きい。別に。

代理権授与行為(法的性質)

●問題:法的性質
●理由:代理権授与行為なき事務処理契約がありうる等、両者は法的には別ものと考えられる。そして、代理権授与行為は、その受け手である代理人の私的自治の観点からも正当なものである必要がある。
●結論:よって、代理権授与行為は、本人と代理人との契約(無名契約)と解される。
●展開:その上で、事務処理契約と代理権授与行為とは、目的・手段の関係にあることから、有因と解される。

代理(一般)

●問題:「正当な理由」は、本人保護とのバランス上、善意無過失と解される。
●問題:「第三者」は、転得者は一般に代理権への信頼はないことから、直接の相手方に限られると解される。

代理権授与行為の取消し等(A)

●前提:代理権授与行為(法的性質)
●問題:事務処理契約の取消しを有因として、代理権授与行為が消滅した場合(又は、代理権授与行為自体が取消しされた場合)の処理
●理由:遡及的に効力を失い(121条)。
●原則:無権代理となる。
●理由:遡及的にとはいえ、消滅した代理権に対する相手方の信頼を保護する必要性はある。
●結論:本人による取消しの場合、112条の類推適用
●理由:他方、代理人による取消しの場合、本人保護の必要性は高くなく、また代理人にも不利益はない。
●結論:その場合には、無名契約取消しの条理上特殊の効果として(●私見)、取消しは将来効に止まるものと解される。

代理と詐欺

●問題:代理人に対する詐欺(相手方による)
●理由:101条1項
●結論:本人は詐欺取消し可能(96条1項)
●理由:本人が瑕疵を知っている場合、本人保護の必要性はない。また、101条3項は、本人による代理人コントロール可能性がある場合を広く想定した規定とも解される。
●結論:そのような場合、101条3項が適用される。

●問題:本人に対する詐欺(相手方による)に基づき、本人が代理人に代理権授与行為をした場合
●理由:本人保護の必要性が大きい一方、代理人は代理権が消滅しても不都合はない。
●結論:96条1項(第三者による詐欺(同条2項)ではない)

●補足:(1)本人による詐欺(相手方に対する)の場合は勿論、(2)代理人による詐欺(相手方に対する)の場合についても、相手方の観点からは、法的効果帰属主体たる本人による詐欺と同視できることから、「第三者」(96条2項)による詐欺とはならないと解される。よって、単なる詐欺(96条1項)となる。

無権代理と相続

●前提:相続という偶然の事情で悪意の相手方が保護され、或いは善意の相手方の無権代理人責任追及(117条)・取消権(115条)を奪うことは妥当ではない以上、相続によっても、相続人・被相続人の有した従前の法的地位は融合等することなく、そのまま併存する。●判例:最判昭和40年6月18日は資格融合説らしいが、共同相続の場合の最判平成5年1月21日は、資格併存説。無視でOK。

●問題:無権代理人の本人相続
●原則:この場合、無権代理人は追認拒絶権をも相続する。
●理由:しかし、その行使は信義則(禁反言)(1条2項)に反する。
●結論:よって、追認拒絶不可

●問題:本人の無権代理人相続
●原則:この場合、本人は、追認拒絶権を行使できる一方、無権代理人の責任(117条)をも相続する。
●理由:しかし、履行責任まで負担すると、実質的に追認をしたのと同様となり酷であり、相手方保護に過ぎる。cf.相手方は本来保護されず。
●結論:そこで、整合的解釈により、損害賠償責任(117条)のみを負担すると解される。

●補足:無権代理人の本人相続において、本人が追認拒絶してから死亡した場合、当該追認により法律関係は確定する。無権代理人も追認拒絶可脳。

●問題:無権代理と共同相続
●論点:無権代理人の本人相続
●理由:しかし、追認拒絶権は、その性質上、共同相続人が準共有し不可分に帰属(264条)しており、全員の同意なく分割行使できない(251条)。また、仮にできるとすると、法律関係が複雑化する可能性がある。
●結論:無権代理人たる相続人の持分についても、当然に追認したことにはならないと解される。

●補足:順次相続の場合、本人・無権代理人間の相続の問題と類似する。分析的に検討すれば良い。●検討
●補足:他人物売買と相続も同様(117条ではなく、415条が問題となる点、及び権利が当然移転することぐらい。)。-

後見人による追認拒絶

●問題:無権代理人の本人相続と類似した利害状況。追認拒絶が許されるか?
●理由:後見人は善管注意義務(869条・644条)を負うことから、被後見人の置かれた状況を考慮し、その利益に合致する適切な裁量行使を求められる。
●結論:取引の安全等の観点で正義に反する例外的場合を除き、追認拒絶可能。
●補足:考慮要素としては、一般的な要素の他、無権代理人と後見人との関係、及び本人の意思能力に関する相手方の認識の程度等も。

日常家事債務と代理

●問題:「日常の家事」
●趣旨:761条は、「連帯…責任」と規定するものの、日常的な取引の円滑の観点から、日常家事に関する代理権を付与した規定と解される。
●結論:当該夫婦が共同生活を営む上で通常必要な法律行為をいう。
●理由:夫婦の一方と取引する第三者の保護の観点も加味して、
●結論:夫婦共同生活の内部事情や個々の行為の目的に限らず客観的にその法律行為の種類・性質等をも考慮して判断
●補足:内部事情の例(職業、収入、資産、生活状況等)

●問題:「日常の家事」に含まれない場合でも、110条の適用がないか?
●前提:条文上の限定がないことから、法定代理権も基本代理権たりうる。
●理由:しかし、常に表見代理(110条)が成立すると、夫婦別産性(762条)を害する。
●理由:そこで、110条の趣旨を類推し、
●要件:相手方において、当該法律行為が夫婦の日常家事の範囲内にあると善意無過失で信じた場合、
●結論:夫婦の他方に法的効果帰属

●補足:公法上の行為の代理権は、原則として、基本代理権とはならない。しかし、特定の私法取引の一環として行為される場合に限り、外観に対する第三者の信頼保護の観点から、基本代理権となると解される。
●補足:代理は法律行為に関する制度であるから、事実行為の代行権限は、基本代理権たりえない。
●補足:「正当な理由」(110条)は、代理権に対する相手方の正当な信頼保護の観点から、善意無過失を意味すると解される。

時効(一般)

●存在理由:①永続した事実状態の尊重、②証拠の散逸からの救済、③権利の上に眠る者は保護しない。
●認識:消滅時効か、取得時効か、等、また場面にもよる。
●効果:援用の法的性質(実体法説・停止条件説)

相続と新権限

●前提:占有は完全に事実的なものには限られないことから、相続により観念的占有が相続人に移転すると解される(認めないと相続人の占有訴権行使に支障を生じる等)。

●問題:賃借人が死亡した後、相続人は「前の占有者」(187条1項)の占有を基にした時効取得ができるか?
●前提:実質的区別の必要性、及び文言上の限定がないことから、「承継」(187条)には、包括承継を含むと解される。
●理由:「所有の意思」(162条)は、占有権限の性質、及び占有態様等に基づき、外形的客観的に決せられる。この点、前主の占有が賃借権に基づく他主占有である以上、その相続人の占有も他主占有である。
●結論:よって、「前の占有者」の占有を基にした時効取得は認められない。

●問題:では、相続を「新たな権限」(185条)として、自主占有への転換、ひいては時効取得しうるか?
●原則:相続は包括承継である以上、原則として、かかる新権限にはあたらない。
●理由:しかし、相続人固有の「所有の意思」が外形的客観的に認められれば、相手方に時効の更新等の機会が与えられているといえる。
●結論:よって、かかる場合には、「新たな権限」に基づく時効取得をし得ると解される。

●補足:自己固有の自主占有のみ主張も可能。187条1項の趣旨は、占有の二面性保護にあり、包括承継についても妥当。
●補足:「瑕疵をも」(187条2項)については、(1)同一人による占有継続の場合には占有開始時の善意・無過失のみ問題とすること(162条2項)、及び(2)「をも」は瑕疵のないことは勿論との含意が認められることから、瑕疵のないことをも承継すると解される。
●検討:無視で良い?

自己物の時効取得

●問題:「他人の物」(162条)
●趣旨:①永続した事実状態の尊重、立証の困難からの救済
●展開:自己物であっても認める必要があり、他方で「他人の物」は典型的な場合を例示したと理解しうる。
●結論:自己物でも時効取得は可能
●私見:拡張解釈

賃借権の時効取得

●要件:①10年間、②自己のためにする意思(「所有」の意思ではない)、③行使(「占有」ではない)、④平穏・公然、⑤善意・無過失(基準時が問題となる)(163条・162条2項)。なお、取得時効について、契約時点から占有開始、という考え方は通用しない。らしい。●司法平成29年
●問題:賃借権は債権ではない。(典型的な債権は、単発での給付を目的とするため、継続的な権利行使はない。)
●理由:不動産賃借権は物権たる地上権と同様の機能を有する。また、債権も「財産権」ではある。
●結論:よって、不動産賃借権も「財産権」(163条)に該当する。
●歯止:他方、賃貸人の時効更新の機会付与が必要。
●要件:そこで、①土地の継続的利用という外形の存在があれば、「行使」ありと言え、また②賃借の意思に基づくことが客観的に表現されていれば、「自己のためにする意思」ありと言えることから、
●結論:賃借権の時効取得も可能と解される。

☆物権

☆留意点・知識等

●二重譲渡の敗者に同時履行の抗弁権なし
●土地の賃貸借契約・建物所有・登記なし→土地に抵当権設定・実行・競落人による建物収去土地明渡請求→抗弁:抵当権設定登記後、賃借権の時効取得に必要な期間の占有。●結論:賃借権の負担を受けるのは所有権者であり、抵当権者ではない。賃借人と抵当権者との間に、物権変動の当事者に準じた関係は生じない(最判平成23年1月21日)。●検討
●不動産所有権の取得時効完成後に設定された抵当権と再度の取得時効の完成(平成24年3月16日)。占有者が抵当権の存在を容認していた等、抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、時効取得により抵当権は消滅。●認識:上記判例と違いは、あくまで賃借人は債権であり、かつ所有権者との関係で対抗関係類似の関係に立つに過ぎないから。
●不動産登記法の改正(平成16年)により、登記原因証明情報の提出が必須となったため(同法61条)、中間省略登記は事実上不可能となった。
●強い付合の場合、「権限」(242条但書)に基づく所有権の留保等は認められない。同条本文による。ただし、248条(703条・704条)あり。譲渡担保権者の場合、物上代位の問題となる。
●賃貸借:費用償還請求権(608条2項)、用法遵守義務(616条・594条1項)、増改築部分の収去権・収去義務(622条・599条1項)
●明認方法:趣旨(立木が土地と独立して譲渡されることが多いため認められる制度)。土地と立木が共に譲渡される場合は、土地の定着物(86条1項)として、原則通り登記による。立木所有権留保の場合は、立木の譲渡と見て、留保については明認方法による。
●多数持分権者は、他の共有者が共有物を単独で使用していていても、明渡請求できない。特段の合意等なき限り、249条により。
占有者の費用償還請求権(196条●項)●理解:1項は必要費。2項は有益費。
●推定規定(186条・186条)
●共有物の場合、保存行為(252条ただし書き)等の行為の根拠規定が指摘できるとベターではある。●認識:あまり

物権的請求権の相手方

●問題:土地上の建物につき、譲渡により所有権者ではなくなったが、登記名義人ではある相手方
●原則:権利の実現を現に妨げている者として、所有権者が相手方となる。
●理由:しかし、実質的所有者の探求は困難となりうる。また、土地所有者と建物登記名義人とは、建物所有権の「移転」(177条)につき対抗関係に類似した関係に立つ。
●要件:そこで、建物登記名義人が、(1)自らの意思で当該登記を経由し、且つ(2)当該登記名義を継続保有する限り、
●結論:登記名義人も物権的請求権の相手方になると解される。

物権的請求権(法的性質)と費用負担

●問題:通常問題となる費用負担に関する明文なし。
●理由:物権的請求権(202条参照)は、物権の直接的・排他的利用権を確保するため認められる権利である。
●原則:相手方に対する行為請求権、且つ費用は相手方負担と解される。
●理由:もっとも、①返還請求の事例において、②相手方に故意・過失がない場合は、かかる結論は相手方に酷である。
●例外:そこで、かかる場合に限り、物権的請求権は、例外的に行為認容請求権、且つ費用は物権権利者負担と解される。
●補足:判例(大判S.12.11.19)は行為請求権のみ。上記は我妻。

「第三者」(177条)

●問題:「第三者」(177条)
●趣旨:物権変動を公示することにより、登記されていない物権変動は存在しない前提での行動を認め、取引の安全を図る点にある。
●結論:よって、「第三者」とは、かかる信頼保護に値する者、即ち登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有するものをいうと解される。
●展開:そして、悪意者についても、自由競争の範囲内で、かかる前提での行動をする必要性・許容性が認められるため、「第三者」にあたる。

●例外:しかし、登記の欠缺を主張することが自由競争の枠を逸脱する背信的悪意者は、信義則(1条2項)上、「第三者」には該当しないと解される。
●展開:もっとも、背信的悪意者であっても権利者であはるため、背信的悪意者から譲受人については、当該権利の移転はあることを前提に、信義則に照らし「第三者」性を個別に判断すれば足りると解される。
●補足:背信的悪意者ではない者からの転得者:絶対的構成による。ただ、わら人形を介した場合、背信的悪意者の法理による。

●例外:通行地役権が設定されている土地の譲受人
●基準:(1)譲渡の時に、継続的に通路として使用されていることが客観的に明らかであり、且つ(2)譲受人がそのことを認識可能であった場合には、特段の事情がない限り、
●結論:「第三者」(177条)にあたらない。

●補足:受寄者は「第三者」にあたらない(662条1項)。●確認

取得時効と登記

●問題:時効完成前の譲受人
●理由:(1)時効完成前の譲受人と現占有者とは前主後主の関係に立ち、且つ(2)現占有者による時効完成前の登記の具備は事実上不可能である。
●結論:よって、時効完成前の譲受人は、登記の欠缺主張する正当な利益を有する「第三者」ではないと解される。

●問題:時効完成後の譲受人
●理由:(1)譲受人と現占有者とは譲渡人を起点とした二重譲渡類似の関係に立ち、且つ(2)現占有者も、時効完成後の登記であれば具備可能である。
●結論:譲受人と現占有者とは対抗関係に立つと解される。

相続と登記

●問題:共同相続と登記
●理由:(1)共同相続人には持分権以上の権利はないから、それを超える権利の譲受人は無権利者に過ぎない。また、(2)相続分は遺産分割で変更されるため、登記を要求することは酷である。
●結論:よって、相続人の持分については、譲受人は登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する「第三者」にはあたらないと解される。

●問題:相続放棄と登記
●理由:(1)相続放棄の期間制限(915条1項)があり、放棄前の第三者が現れる可能性は高くなく、相続放棄の申述(938条)があり、放棄後の第三者は家庭裁判所への照会により放棄の有無を確認できる。また、(2)放棄については、絶対的遡及効を定める一方、第三者保護規定を置いていない(939条)。
●結論:よって、第三者は単なる無権利者であると解される。

●補足:遺産分割と登記(遺産分割の前後を問わず、相続分を超える部分については、登記が必要(899条の2第1項))。177条の特則。
●検討:909但書との関係

●問題:遺贈と登記
●作成

占有改定・指図による占有移転と即時取得

●問題:占有改定(183条)は「占有を始めた」(192条)にあたるか?
●趣旨:動産占有の外観を信頼し取引をし、その支配を確立した者を保護する点にある。
●展開:占有改定では、かかる支配を確立したとはいえない。
●結論:よって、占有改定は「占有を始めた」にあたらないと解される。

●問題:指図による占有移転(184条)は「占有を始めた」(184条)にあたるか?
●趣旨:動産占有の外観を信頼し取引をし、その支配を確立した者を保護する点にある。
●展開:指図による占有移転により、譲渡人ひいては所有者も占有を失う結果、第三者は動産の支配を確立したといえる。
●結論:よって、指図による占有移転は「占有を始めた」にあたると解される。

盗品等に関する特則

●問題:「回復」(193条・194条)に際し、使用利益の返還まで請求できるか?(703条・704条)
●理由:回復請求された場合に限り使用利益の返還を要するのは占有者の地位を不安定にする。また、194条に基づく代価には利息は含まれないこととの公平から。
●結論:使用利益の返還請求はできないと解される。

●補足:任返還した場合でも代価弁償請求権はある(最高裁判例)。文言は抗弁権のようだが。任意返還した者が害されるのは不当。

●私見:192条の存在意義、及び「回復」との文言(「返還」ではない)から、193条の期間中、所有権は占有者にある(⇔判例(大判T.10.7.8)が、上記は債権の話なので無関係。

●参考:マイナー論点(「被害者」(193条))。趣旨:盗難被害からの救済。よって、占有の回復請求権者(所有者に限らず。)。

☆担保物権

☆留意点・知識等

●問題:責任転質(348条)の法的性格●結論:質物再度質入●債権と質権の両方なら、債権だけと同じ。「質物について、転質」との文言。把握価値を質入れすると理解。よって原質権・その被担保債権額の範囲内の制限あり。
●消費貸借契約が無効となった場合、原則として、抵当権も消滅(付従性)。しかし、例外として、信義則(1条2項)による消滅主張制限。
●抵当権登記の流用:原則無効(付従性)。しかし、現在の権利関係と一致する限り、有効。もっとも、流用前の第三者との関係では無効。
●抵当権に基づき賃料に対する物上代位は可能。賃料は目的物の交換価値のなし崩し的実現。371条は容認。
●抵当権に基づく損害賠償請求と設定者が得る損害賠償請求権への代位は並存する。物上代位には差押え等の煩雑な手続が伴うため。
●抵当権に関する損害の算定時期:弁済期。債務者の不履行額が確定する。実行時とすると、抵当権者が不安定な地位に立つ。
●法定地上権は、設定時・実行時の各関係者(抵当権設定者・抵当権者(先順位・後順位)・競落人・共有者(土地・建物))の利害関係をその場で考える。なお、任意設定された土地利用権については、抵当権の目的となっている点(370条類推・87条2項類推)、及び179条(混同)1項但書による例外が認められる点に注意。
●将来債権の譲渡(民法467条1項括弧書き)が明文化されたが、従来通り、特定性は必要。特定性の判断要素としては、債権の発生原因となる取引の種類、発生期間、第三債務者、金額、弁済期等の事情を総合考慮し、目的債権が識別可能であるか否かを判断。なお、公序良俗(90条)に反しない必要があることは勿論、発生可能性が非常に低かった場合には、例外的に錯誤取消し等の話にもなりうる。
●将来債権の譲渡と賃貸人たる地位の移転との優劣:判例なし。自由に考える。
●代理受領に関する第三債務者の承諾の効果:①代理受領権限を確認する趣旨に止まり、受任者との間に契約は生じないので、債権者への弁済は債務不履行とはならない。②正当な理由なくその利益を害さない趣旨は当然含むため、不法行為責任(709条)を負う可能性はある。

留置権(「その物に関して生じた債権」)

●要件(4点セット):①「他人」(論点:被担保債権の債務者以外の者を含むか)の物を占有、②その物に関して生じた債権を有する(下記)、③被担保債権の弁済期到来、④占有が不法行為により始まったものではない。
●問題:「その物に関して生じた債権」
●趣旨:留置権は、公平の観点から、物の返還を拒絶により債務者に心理的な圧迫を与え、債務の履行を促す権利である。
●結論:よって、「その物に関して生じた債権」か否かは、かかる履行を促す状況の有無により判断されると解される。
●補足:賃貸借契約終了後に支出した必要費償還請求権を被担保債権とする場合等についても、趣旨に照らし、適宜類推適用(応用)。

先取特権(物上代位と差押え)

●問題:動産売買の先取特権(311条5号)に基づく物上代位に際しての「差押え」(304条1項但書)と債権譲渡との優劣
●趣旨:「差押え」を求めた趣旨は、動産売買先取特権の非公示性に照らし、債権譲受人等の第三者を保護する点にある。
●要件:よって、差押えは、物上代位の目的債権が譲渡され、「払渡し又は引渡し」(304条1項但書)としての第三者対抗要件(467条2項)具備前にされる必要があると解される。

●注意:登記による公示がある抵当権については、別途議論がある。

質権(物の返還)

●問題:質権者が任意に目的物の占有を失った場合、対抗力(352条)を失うことに加え、質権自体が消滅するのか。
●趣旨:質権の本質は優先弁済的効力にあり、留置的効力は、そのための手段的効力に過ぎない。
●結論:目的物の引渡しを受けた第三者に対しては、返還請求できないと解される。

●補足:当事者たる設定者との関係では、対抗力すら失わず、返還請求が可能。

抵当権(付加一体物)

●問題:「付加して一体となっている物」(370条本文)に従物(87条1項)が含まれるか。
●趣旨:担保権機能発揮の観点から、交換価値全体を把握する点にある。
●帰結:そこで、「一体」とは、物理的一体性に限らず、経済的一体性をも含むと考えられる。
●結論:よって、抵当権設定とその設置等の前後を問わず、従物も付加一体物に含まれると解される。

抵当権(分離物と第三者)

●前提:分離に関わらず、効力は及んでいる(追及効)。
●問題:第三者に対抗できるか。
●理由:抵当権の対抗要件は登記であるから、登記により公示される範囲で対抗力を有する。
●結論:よって、分離物が抵当不動産上に存在する限りで、第三者に対抗できると解される。

抵当権(物上代位の対象)

●問題:転貸料債権(賃借人(転貸人)は「債務者」(372条・304条1項本文)にあたるか。
●理由:抵当権は抵当不動産の物的交換価値を把握するものであるから、「債務者」は、抵当不動産につき物的負担を負う者と解される。この点、賃借人(転貸人)はこれにあたらない。また、仮にかかる物上代位を認めると、賃借人(転貸人)の利益を不当に害する。
●要件:所有者と賃借人(転貸人)を同視すべき特段の事情がある場合を除き、
●結論:賃借人(転貸人)は「債務者」にあたらず、物上代位は認められないと解される。

●補足:売買代金債権は、「売却」(372条・304条1項本文)にあたり、物上代位の対象となる。追及効あるからあたらない、という考えあるも。

●補足:保険金請求権は、「滅失又は損傷によって…受けるべき金銭」(372条・304条1項本文)にあたり、物上代位の対象となる。保険料支払の対価、とする考えあるも。保険料と保険金との金額差から、保険金は、実質的には目的物の価値代表物といえる。

●補足:請負代金は、物自体の対価ではないから、請負代金債権の全部又は一部が転売による代金債権と同視できる等の特段の事情がある場合を除き、原則として、物上代位の対象とはならない。●考慮要素:物の価格・請負代金額の比較。請負債務の内容。等

抵当権(「差押え」(372条・304条1項但書))①:差押え

●問題:抵当権に基づく物上代位に際しての「差押え」
●趣旨:弁済相手方を明確にすることにより、二重弁済の危険から第三債務者を保護する点にある。
●帰結:他方、第三者については、抵当権設定登記により抵当権の存在・効力が公示されているから、差押えによる保護対象ではない。

●帰結:弁済相手方を明確にするため、差押えは抵当権者自らがしなければならない。

●帰結:差押えは第三者対抗要件ではないから、差押えは、他の債権者に先立つ必要はない。
●展開:一般債権者の申立てに係る差押え命令の第三債務者への送達との先後関係が問題となるのは、抵当権設定登記の時である。

抵当権(「払渡し又は引渡し」(372条・304条1項但書):債権譲渡

●問題:抵当権に基づく物上代位の対象債権が譲渡され、対抗要件具備した場合、「払渡し又は引渡し」にあたるか。
●前提:差押えの趣旨から、債権譲受人との関係上、差押え時との先後関係は問題とならない。
●理由:債権譲渡について、対抗要件具備により優先させると、物上代位が容易に妨害されかねない。
●結論:よって、債権譲渡の対抗要件具備のみでは、「払渡し又は引渡し」にはあたらないと解される。
●検討:弁済まで必要、ということ。
●派生:質権設定も同様。第三債務者は、差押え命令送達前の支払いの場合には免責される(366条1項)。支払せずに供託しても免責される。よって、質権設定後の物上代位を認めても第三債務者保護という趣旨に反しない。また、抵当権設定登記は公示済みであり、質権者の取引の安全も害さない。よって、質権設定は、「払渡し又は引渡し」に該当しない。

抵当権(「差押え」(372条・304条1項但書))②:転付命令

●問題:抵当権に基づく物上代位に対象債権につき転付命令があった場合
●前提:債権譲渡に類似するため(民執159条1項)、債権譲渡同様の論理が妥当するかに思われる。
●理由:しかし、転付命令は、その対第三債務者送達前に「差押え」(同条3項)がなければ効力を生じ(同項反対解釈)、転付債権者が独占的な満足を得る強力な制度である(同160条)。よって、当該「差押え」には、「差押え」(民法372条・304条1項但書)をも含むと解される。
●結論:従って、抵当権者は、例外として転付命令については、第三債務者に送達されるより前に差押えをしなければ劣後すると解される。

抵当権(基づく妨害排除請求)

●問題:抵当権は非占有担保権であることから問題となる。

●理由:占有者の存在により競売価格が下落する場合がある。また、非占有の点は、設定者の使用収益を妨げないというに過ぎない。
●要件:抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、優先弁済を受けることが困難な状況にあれば、
●結論:抵当権に基づく妨害排除請求も認められると解される。
●応用:抵当建物使用者(395条)については、その保護ひいては設定者の使用収益権との調和の見地から、競売妨害目的まで必要と解される。

●問題:抵当権者への直接引渡しの可否。抵当権は非占有担保権であることから問題となる。
●理由:理論的にも管理占有が認められる以上、
●要件:設定者によっても抵当不動産を適切に維持・管理することが期待できない場合には、
●効果:抵当権者への明渡し請求まで認められると解される。

●補足:設定者の有する妨害排除請求権を代位行使することもできる(423条)。その場合の被担保債権は、抵当権の性質に照らし、抵当不動産の価値を維持・保存するよう求める権利(担保価値維持請求権)。

譲渡担保(法的構成)

●問題:形式(表示)か、実質(意思)か。
●理由:第三者が関係しうる以上、取引の安全上、当事者が選択した形式を重視すべきと解される。
●結論:譲渡担保権者は、所有権を取得し、単に債権的拘束を受けているに過ぎないと解される。
●帰結:あとは推論すれば良い。但し、動産(192条)・不動産(94条2項類推)の区別は失念しない。
●補足:受戻権は、債権者が清算金を提供した時点で消滅(処分清算型)。帰属清算型の場合、処分時まで受戻権は消滅しない。●認識:事案毎に、いずれかが決まる。
●補足:賃貸借がからむと、他人物賃貸借(559条、561条)、果実収取権(189条・190条)、賃借権の時効取得等が問題となりえる。

●私見:不動産譲渡担保の場合、抵当権ではない物権を選択しているので、実質(意思)重視。動産譲渡担保の場合、意思に関わらず当該形式しかとりえない以上、形式(表示)重視。

●調査:譲渡担保を原因とする所有権移転登記がされているのか?(真正な登記原因に基づく義務から考えると、そうすべき。そうすると、不動産に関しても、形式(表示)重視で良い?無関係?)

譲渡担保(集合動産)

●問題:一物一権主義に反しないか。
●理由:(1)社会経済上の必要性があり、また(2)例えば契約書等を通じた占有改定の意思表示(又は特別法上の登記)による公示はあるといいうる。
●結論:一物一権主義には反しない。
●限定:但し、対象物が無限定では、担保として機能しえないから、
●結論:集合物は、その所在・種類・数量等により、特定されることが必要と解される。
●展開:そして、当該特定された集合物の同一性の範囲内に入る限り、新たに搬入等された物にも譲渡担保権の効力は及ぶと解される。
●補足:対抗要件は占有改定。
●確認:集合債権も同様。

●動産売買先取特権との優劣:譲渡担保権者は「第三取得者」(333条)に該当し、かつ占有改定は「引き渡した」(同条)に該当する。よって、譲渡担保権者が優先すると解される。●私見:譲渡担保権を認めた以上は必要あり。また、第三者に転売されて即時取得(192条)された場合も同様なので程度問題に過ぎない。
●304条が類推適用される。しかし、集合物譲渡担保契約は、設定者が目的動産を販売して営業を継続することを前提とする。よって、特段の事情がない限り、通常の営業を継続している場合には代位不可(H.22.12.2)。
●304条には「請負」がない。よって、適用されないのが原則。しかし、請負代金全体に占める動産価格の割合、および請負債務の内容等に照らし、動産の転売と同視するに足りる特段の事情があれば、例外的に動産価格相当額につき物上代位の対象となると解される。

所有権留保

●前提:所有権的構成
●理由:敢て既存の所有権の所在を維持する形式を重視。
●問題:ユーザーは代金完済・引渡しを受けた。その後、ディーラーが、サブディーラーとの契約を解除。
●原則:所有権はディーラーに留保されていることから、引渡しを拒否できない。なお、登録済み自動車の即時取得(192条)も否定。
●価値判断:ディーラー・サブディーラー間の所有権留保特約を知らず、且つ代金完済済みのユーザー保護の必要性高い。
●法律構成:ディーラーが本来自己負担すべき代金回収の危険をユーザーに転嫁することは、権利濫用(1条3項)
●考慮要素:①ディーラーはサブディーラーの転売に協力、②転売契約が、ディーラー・サブディーラー間の契約と同時又は先行して締結
●補足(最判平成21年3月10日):留保所有権者は、残債務弁済期限到来までは、交換価値を把握するにとどまるため、特段の事情がない限り、動産の撤去義務等は負わない。しかし、その到来後は、占有・処分可能であることから、妨害の事実を知った場合には、同義務を負う。
●理由:交換価値の把握を超え、占有・処分権能まで有することから。

☆債権総論

☆留意点・知識等

●特定の効果:・・・
●履行対象が特定されれば、債務者は無限の調達義務を免れる効果を生じる。そこで、「物の給付をするのに必要な行為を完了」(401条2項)とは、当該効果に見合った程度の行為をいう。取立債務の場合、準備・通知(493条但書参照)に加え、分離まで要すると解される。
●持参債務の場合、契約不適合物の現実の提供をしても、「物の給付をするのに必要な行為を完了」(401条2項)とはいえない。
●債務者の変更権(例:物が特定した後に、債務者の過失により全部滅失):原則、履行不能による債務不履行。しかし、物の特定の趣旨は、債務者を調達義務から解放する点にある。そこで、債権者に特段の不利益がない限り、信義則(1条2項)上、債務者には変更権が認められると解される。
●履行補助者を用いた場合の債務不履行:通常の場合と同様。415条1項本文・但書に基づき、個別具体的判断
●安全配慮義務:原則として、使用者は賃金支払義務を中心とする債務を負うのみであり、不法行為責任(709条)のみ負う。しかし、特別な社会的接触関係に入った当事者間においては、信義則(1条2項)上、相手方の生命・身体を保護すべき義務をも付随的に負担するものと解される。そこで、雇用関係においては、使用者が、被用者を管理監督する側として、被用者の生命・身体を保護すべき安全配慮義務を負うものと解される。
●708条の主張は「抗弁」(423条の4)に当たらないと解される。大正時代の判例と通説は当たるとするが、708条の趣旨(クリーンハンズの原則)が妥当しないから、という学説がある。●B:判例で良いかも。
●対抗要件具備と債権者取消権:対抗要件具備行為自体は対象とならない。なぜなら、対抗要件具備は、第三者等に対し財産権移転の効果を対抗しうる効果を生じるに過ぎない、財産権移転行為自体とは別個の行為であるから。
●詐害行為取消権の範囲:目的物が不可分の場合、債権者の共同担保を回復させる制度趣旨に照らし、全部につき取消し・現物返還を請求できる(424条の8反対解釈)。しかし、例えば抵当権者に対する抵当目的物による代物弁済により、抵当権者が抵当権の登記を抹消した場合等、現物返還が著しく困難であり、それを認めると債権者・債務者に不当な利益を与える結果となる場合には、公平上、価格賠償に留めるべきと解される(424条の6第1項後段、同2項後段参照)。
●譲渡禁止特約に反する譲渡を追認することもできるが、116条但書の適用はある。
●債権の二重譲渡と478条:478条の善意無過失の要件を充足するか次第。債権の帰属(467条2項)と弁済の効力(478条)とは別問題であるため。但し、467条2項の要件を充足している以上、無過失の判断は厳格になされるべきと解される。
●確認:譲渡禁止特約と転付命令の優劣の問題は、466条の4第1項の規定により消滅。
●確認:異議なき承諾の制度は消滅。単なる譲渡認識通知にしては効果が重大なので。しかし、改正法でも放棄は自由。ただ、90条違反による発生債権は不可だろう。●司法平成28年
●時効消滅した債権による相殺と相殺適状の要件:自動債権のみ弁済期にあれば、相殺できる(136条2項本文・505条1項本文)。しかし、受働債権に弁済期がある場合には、債務者が既に享受した期限の利益を遡及的に消滅させる(506条2項)こととなって相当ではないこと、及び505条1項の自然な文理解釈として、弁済期が現実に到来(期限の利益の放棄(136条2項本文)・喪失(137条)により)していることを要すると解される(最判平成25年2月28日)。●「相殺に適するようになっていた場合」(508条)についても同様の解釈。
●問題:「前の原因」(469条2項1号)●趣旨:相殺への合理的期待の保護●結論:形式的・時間的に「前」であることに加え、自働債権・受働債権の内容・相互関連性に照らし、かかる趣旨に適うか否かによるべき。●511条2項も同様。
●相殺の優劣:相殺適状(銀行)・相殺の意思表示(転付債権者)のいずれが優先するか?まず、511条1項の規定は、転付債権者からの相殺を制限する規定ではない。そして、転付債権者による相殺の意思表示があれば対象債権は遡及的に消滅する(506条2項)ことから、銀行による相殺の時点では、相殺適状の債権は存在しない。よって、問題の優劣は、意思表示の先後による。
●代償請求権(422条の2)。趣旨公平。
●差押えと相殺・債権譲渡と相殺は論点消滅?
●詐害行為取消権の法的性質・効果の論点消滅?
●保証人・物上保証人を兼ねている場合の負担割合(501条3項4号本文)。結論:一人の保証人としてカウント。理由:明確な基準の定立困難。
●該当事例において、根拠規定として、459条を指摘できるとベター。●要件:①主債務の存在、②保証契約、③保証債務履行、④保証委託契約●司法平成28●認識:あまり
●該当事例で、463条に言及できるとベター●司法平成28
●売主の共同相続人の登記義務は不可分債務(430条)。(最判昭和36年12月15日)●司法平成28●認識:あまり
●法定代位と任意代位の区別はなくなった(499条)。債務者の承諾に係る要件削除。正当な利益を有する者以外は要対抗要件(500条、467条)。
●視点:債権譲渡の譲受人が、なんらかの形で債権者代位権を行使できないか。ただし、一般債権者も満足を受ける点に注意。
●注意:主債務が存在しない場合、付従性により保証債務も存在しない(だけであり、保証契約が直ちに無効となる訳ではない)。●司法平成28●認識:あまり
●物上保証人の事前求償権 ●参考:予備平成24年

第二節 債権の効力
第一款 債務不履行の責任等

(履行期と履行遅滞)
第四百十二条 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。
 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

(履行不能)
第四百十二条の二 債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。
 契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第四百十五条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。

(受領遅滞)
第四百十三条 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存すれば足りる。
 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないことによって、その履行の費用が増加したときは、その増加額は、債権者の負担とする。

(履行遅滞中又は受領遅滞中の履行不能と帰責事由)
第四百十三条の二 債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。
 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。

(履行の強制)
第四百十四条 債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
 前項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。

(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
 債務の履行が不能であるとき。
 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

(損害賠償の範囲)
第四百十六条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

(損害賠償の方法)
第四百十七条 損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。

(中間利息の控除)
第四百十七条の二 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。

(過失相殺)
第四百十八条 債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。

(金銭債務の特則)
第四百十九条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

受領遅滞

●受領遅滞の効果:・・・
●趣旨:受領遅滞:413条は、債権者の一般的な受領義務までは規定していないことから、公平の観点から無過失の法定責任を定めたと解される。
●歯止;もっとも、信義則(1条2項)上の受領義務を認めるべき個別的・具体的事情がある場合には、
●結論:債権者は当該義務違反について債務不履行責任を負うと解される。cf.通常反対債務の債務不履行もあり。

損害賠償(相当因果関係)

●問題:債務不履行により生じる損害は無限定に拡大しうることから。
●理由:その賠償範囲を社会的に相当な範囲に絞るべく、
●結論:(1)416条1項は、通常の事情につき予見可能性を問題とせず、通常生ずべき損害(通常損害)の賠償請求を認める。他方、(2)同条2項は、「特別の事情」につき「予見すべきであったとき」に限り、当該事情に基づく通常の損害(特別損害)の賠償請求を認める。

●補足:信義則(1条2項)により、債権者には損害拡大防止のため合理的措置を取る努力義務あり。当該義務違反に基づく損害については、「通常」(416条1項)生じたものではないと解される。

損害賠償(額の算定時期)

●問題:状況変化
●原則:債務不履行時の価格
●理由:金銭賠償の原則(417条)の下、損害の金銭的評価が可能となるため。
●例外:もっとも、(1)目的物の価格が騰貴しつつあるという「特別の事情」があり、且つ(2)「当事者」たる債務者が、履行不能時において、それを「予見すべきであった」場合には、騰貴した現在価格(416条2項)。
●例外:また、目的部につきいわゆる中間最高価格が認められる場合には、中間最高価格の時における転売等による利益獲得を「特別の事情」として、「予見すべきであった」か否かを同様に検討する(同項)。

債権者代位権(転用)

●問題:本来的には、総体としての責任財産保全のための制度。
●原則:被保全債権は金銭債権
●理由:しかし、金銭債権以外の債権についても、債権保全の必要性はありえる。また、423条の7は、そのような場合につき規定する。
●結論:被保全債権が、金銭債権以外の場合でも、転用可能と解される。
●展開:その場合の債権保全の必要性は、無資力を意味しない。
●原則:無資力要件が必要。債務者の財産管理への干渉を必要最小限とする。●確認

●補足:被保全債権が金銭債権であっても、無資力要件が不要となるケースあり(最判50年3月6日)。
●補足:借地上の建物の賃借人が、借地権者の有する建物買取請求権(借地借家法13条・14条)を代位行使することはできない。(●前提:転用は認められるが。)なぜなら、代位行使により借地人が得る利益は建物代金債権であり、賃借権の保全には役立たないから、「保全するため必要があるとき」(423条1項)に該当しない。
●補足:時効援用権には、当事者の意思尊重の趣旨あるも、債権保全の必要性がある場合にまで尊重する必要性はなく、時効援用権は「一身に専属する権利」(423条1項ただし書き)非該当。●判例:最判昭和43年9月26日

詐害行為取消権(財産分与)

●問題:身分行為
●原則:第三者の介入に相応しくない行為として、取消しの対象とはならない(424条2項)。
●要件:しかし、768条3項の趣旨に照らし分与が不相当に過大であり、財産分与に仮託された財産処分であると認められる特段の事情があれば、
●結論:その部分については、詐害行為として取消しの対象となると解される。
●帰結:その結果、あくまで詐害行為は一部であるため、価格賠償のみを認めるべきと解される(424条の6第1項参照)。●確認:424条の4では?

詐害行為取消権(転用)

●問題:本来的には、総体としての責任財産保全のための制度
●原則:被保全債権は金銭債権。●債権者代位権以上に介入度合いが強い権利であり、総債権者のための権利との明文(425条)あり。
●理由:しかし、特定物債権も究極的には損害賠償債権等の金銭債権となりうるため、債務者の一般財産保全の必要性は認められる。
●結論:そこで、「前の原因」(424条3項)に基づく債権が、遅くとも取消し請求の時点までに損害賠償請求権(415条1項、同2項1号)に転化していれば、詐害行為取消権を行使することができると解される。
●補足:二重譲渡で劣後した譲受人も行使可能。なぜなら、177条と424条とは要件・効果が異なる別制度であるから。但し、直接自己への登記移転を請求することはできず、且つ改めて債務者に対し移転登記請求することもできないと解される。177条で劣後した以上の利益を与えることとなるため。

債権譲渡(二重譲渡の場合の優劣)

●問題:債権が二重譲渡され、両譲受人が第三者対抗要件(467条2項)を備えた場合、優劣の基準は。
●理由:通知(467条2項)が要求される趣旨は、債務者の認識を通じた公示機能を果たす点にある。
●結論:よって、通知の債務者への到達の先後が基準となると解される。
●補足:なお、通知に確定日付を要求した趣旨は、債権者・債務者・第二譲受人等が通謀し、通知到達日時を不当に遡らせることを可及的に防止する点にあると解される。

●問題:同時到達
●理由:いずれの譲受人も債務者対抗要件(467条1項)は備えていることから、
●結論:いずれの譲受人も債務者に対し債権全額の履行を請求することができる。
●展開:そして、債権者は一種の連帯債権(423条)を有することから、債務者は、いずれか一方に弁済すれば足りると解される。
●展開:他方、債権者は原則平等であることから、弁済を受領していない債権者は、受領した債権者に対し、不当利得返還請求権(703条・704条)を行使し、債権額に応じ按分された額の支払を請求できると解される。

●補足:「譲渡人に対して生じた事由」(468条1項)には、抗弁発生の基礎となる事実も含まれると解される。
●判例:最判昭和42年10月27日参照

相殺(預金担保貸付)

●問題:定期預金の名義人と出捐者が異なる場合、銀行は、名義人に対する預金担保貸付債権と預金債権とを相殺することができるか?
●問題:まず、銀行の観点から、相殺の要件である債権対立(505条1項本文)の有無判断に際し、自動債権の債務者は名義人である一方、受働債権の債権者(預金者)は誰か、その確定基準が問題となる。
●理由:この点、経済活動上の原則としては、実質を保護する必要性が高いことを重視し、
●結論:出捐者が、銀行に対する債権者(預金者)と解される。
●帰結:従って、自動債権・受働債権の対立(505条1項)は無く、相殺はできないこととなる。

●問題:銀行としては、将来の相殺を期待し、名義人に貸付を行ったことから、その保護が問題となる。
●理由:表見代理による保護では、本人(出捐者)の帰責性が求められる点、要件が厳格に過ぎる。他方、預金担保貸付から相殺に至るまでの一連の行為は、その経済的機能の面で定期預金債権の期限前弁済と同視しうる。
●結論:そこで、銀行が、名義人が受領権者であると善意・無過失で信じた場合には、相殺が許されると解される(478条類推)。

●問題:善意・無過失の基準時(相殺時には、名義人が受領権限者ではない点につき悪意となっていた場合)
●他説:形式上弁済に相当する行為は相殺であることから、相殺時とも考えられる。
●理由:しかし、銀行の相殺への期待を保護するという実質的な趣旨から、
●結論:貸付時が基準となると解される。

第五百三十四条及び第五百三十五条 削除

(債務者の危険負担等)
第五百三十六条 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

(解除権の行使)
第五百四十条 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
 前項の意思表示は、撤回することができない。

(催告による解除)
第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

(催告によらない解除)
第五百四十二条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
 債務の全部の履行が不能であるとき。
 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
 債務の一部の履行が不能であるとき。
 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

(債権者の責めに帰すべき事由による場合)
第五百四十三条 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。

(解除権の不可分性)
第五百四十四条 当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。
 前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。

(解除の効果)
第五百四十五条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
 第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

(契約の解除と同時履行)
第五百四十六条 第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。

(催告による解除権の消滅)
第五百四十七条 解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する。

(解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅)



第五百四十八条 解除権を有する者が故意若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は、消滅する。ただし、解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときは、この限りでない。

☆債権各論

☆留意点・知識等

●説明義務違反:当事者間に知識・経験等の格差が存する場合、その点で勝る一方当事者は、他方当事者に対し、適切な情報提供を行う信義則(1条2項)上の義務を負うと解される。cf.不法行為構成(最判H23.4.22。大要「契約に関する説明義務違反を契約違反と構成することは背理」と考える。)。
●費用償還請求権(650条1項)、損害賠償請求権(同3項)●司法平成28●認識:あまり
●動産賃借権については、対抗力を備えることはできない(605条反対解釈)。解除前の第三者には該当しえない。
●他人物賃貸借(559条本文、561条、601条)

(債務者の危険負担等)
第五百三十六条 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

契約交渉の不当破棄

●原則:不法行為に基づく損害賠償請求(709条)のみ。
●例外:しかし、契約交渉中である者は、相互に相手方の利益を害しない点につき、信義則(1条2項)上の義務を負担している。
●要件:そこで、①交渉が、社会通念上契約締結の準備段階に入っており、②契約締結がされると一方当事者が善意無過失で信頼し、且つ③そのことにつき他方当事者に帰責性が認められる場合には、
●結論:当該他方当事者は信義則に基づく債務不履行責任を負担するものと解される。
●展開:そして、そこでの損害賠償の額は、当該他方当事者の行為と相当因果関係の範囲内にある損害と解される。

解除の効果

●趣旨:解除権者を双務契約の法的拘束力から解放すること
●効果:かかる解放を徹底するため、遡及的無効
●例外:第三者(545条1項但書)・損害賠償(545条4項)
●補足:620条の反対解釈も遡及的無効の根拠に。

解除と登記

●論点:解除の効果
●趣旨:解除の遡及効により害される第三者を保護するために遡及効を制限
●帰結:「第三者」(545条1項但書)とは、解除された契約を基礎として新たに独立の法律上の利害関係を有するに至った者、即ち解除前の第三者と解される。
●結論:そして、かかる第三者については、主観的要件を問わないと解される。
●理由:なぜなら、解除原因があっても解除されるとは限らず、条文上も善意等が要求されていないから。
●理由:もっとも、帰責性がない解除権者の不利益の下、保護される立場にあることからバランス上
●結論:かかる第三者は登記(権利保護要件)を具備する必要があると解される。
●補足:解除後の第三者は対抗問題。177条の趣旨が妥当。復帰的物権変動との法律構成も可能。

目的物の滅失・損傷(解除後)

●問題:双務契約において双方の債務履行済みの後、双方の過失によらず目的物が滅失
●帰結:原状回復義務は履行不能となり、履行を求めることはできない(412条の2第1項)。
●展開:解除に基づく原状回復の場面であることから(私見:更なる解除は観念できず、)、清算のため、当該債務は客観的価値の返還債務に転化するものと解される。
●補足:解除が「物の価値不足」(かつ代金支払い済み)の場合、代金額全額の履行拒絶(536条1項)は認められず、本来的金額分のみ。上記「客観的価値」はその趣旨。●参考:旧平成12

☆契約各論

☆留意点・知識等

●私見:売買については、「契約の内容」(562条1項)の認定に尽きる。請負も同様。細かい論点等不用の本質論・常識等が重要。
●「買主がその不適合を知った時」(566条)とは、買主に権利行使を期待できる時、即ち契約不適合責任を追及し得る程度に具体的な事実関係を知った時と解される。
●「通知」(566条)は、契約不適合の事実を認識する機会を売主に付与するためのものであることから、契約不適合を同定することが可能な程度にその種類・範囲等を伝える必要があると解される。
●契約不適合責任の期間制限(566条)とは別に、消滅時効の規定は適用されると解される。なぜなら、①そうでなければ、買主が契約不適合を知らない限り、売主の担保責任が消滅せず過大となるし、また②消滅時効は、かかる期間制限の趣旨(法律関係の早期安定)とは異なる趣旨(永続した事実状態の尊重等)を有する独自の制度だからである。もっとも、買主が契約不適合を知り得るのは目的物の引渡し時以降であるから、消滅時効の客観的起算点(166条1項2号)は、引渡し時と解される。
●契約不適合責任と錯誤取消しとは、要件・効果を異にする別個独立の制度であるから、買主はいずれをも選択的に主張できると解される。
●「履行に着手」(557条1項但書)とは、同条本文により解除権を留保された解除権者と解除される相手方の期待保護とのバランスから、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし、又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をすることをいうと解される。
●借地上の建物が譲渡されれば、当該借地の賃借権も従たる権利として譲渡されたこととなる(87条2項類推)。
●賃借権の無断譲渡・転貸の場合、612条2項による解除が可能。しかし、賃貸借契約は、当事者間の信頼関係を基礎とする継続的な契約である。そこで、賃借人の行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には、解除権は制限されると解される。
●賃貸借の合意解除を転借人に対抗できない場合(613条3項)、賃貸借契約終了により賃借人は転貸借関係から離脱し、賃貸人が転貸人の地位を承継すると解される。賃借人の債務不履行により賃貸借契約が解除された場合も、転貸借契約は社会通念上履行の不能となり、終了と解される。●理解:解除できる場合は、転借人の不当利得(703条、704条)の問題となる。
●賃借人の交替:特約ない限り、敷金返還請求権は移転しない。旧賃借人が新賃借人の債務を担保する意思を有していないのが通常。
●内縁の妻の居住権(相続人がいる場合):原則賃借権の承継なし(借借法36条1項)。しかし、生活の本拠の保護の必要性。また、建物の使用実態は従前通りでありち賃貸人に不当な不利益はない。よって、賃貸人に対しては、相続人が承継した賃借権を援用できると解される(賃料支払債務は相続人のみが負う)。他方、相続人に対しては、原則としてかかる援用はできないものの、場合により権利濫用(1条3項)となる。
●賃借人の妨害停止等請求(605条の4)
●売買契約の目的である敷地の欠陥:「契約の内容」に適合するか否かの問題(559条・562条1項)。私見:だが、基本的には、適合しないとは言えない。606条1項によるべきこと、及び569条の趣旨との均衡等から。
●司法平成28:建物の敷地か、それ以外の土地(駐車場)か。区別を意識して論じる。敷地でなければ、借地借家法10条1項は適用されない(判例)。その上で権利濫用構成とする場合と、対抗関係構成とする場合がありうる。いずれの構成でも主観的事情を考慮できるしすべき。●自説:判例。●確認:敷地上の建物の賃貸について、なぜ土地の転貸にならない(判例)のか。
●「使用収益させた」(612条2項)
●借地借家法2条1号●認識:不要
●確認:継続的契約たる賃貸借は、履行不能により自動的に消滅
●請負と危険負担:完成前の滅失(期限までに完成可能)の場合、仕事完成義務がある請負人の負担(632条)。完成(後引渡)前の滅失(完成不可能):請負人負担(536条1項)
●寄託:既履行分の報酬請求権(665条、648条3項●号)●理解:反対解釈として、冒頭に703条・704条を記載し、支払い済みのうち未履行分の返還請求が可能(●検討:703,704だけで根拠条文として必要十分だろう。)。●理解:665条は寄託について委任の条文を準用するもの。●号は事例毎に。

(不動産の賃貸人たる地位の移転)
第六百五条の二 前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
●趣旨:賃貸人の債務は、所有権と結合したものと考えるのが相当であるため。

 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。

 第一項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。

 第一項又は第二項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第六百八条の規定による費用の償還に係る債務及び第六百二十二条の二第一項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。

(合意による不動産の賃貸人たる地位の移転)
第六百五条の三 不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。この場合においては、前条第三項及び第四項の規定を準用する。

(不動産の賃借人による妨害の停止の請求等) 第六百五条の四 不動産の賃借人は、第六百五条の二第一項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。
 その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求
 その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求

●要件:(1)土地の継続的利用という外形の存在があれば、「行使」ありと言え、また(2)賃借の意思に基づくことが客観的に表現されていれば、「自己のためにする意思」ありと言えることから、
●結論:賃借権の時効取得も可能と解される。

物上代位との優劣(1)一般的債権(貸金債権等)

●問題:抵当権に基づく物上代位と相殺の優劣
●趣旨:抵当権に基づく物上代位に差押えを要する趣旨(第三債務者保護)
●展開:とすれば、かかる差押え後には履行先が明確になる利益の反面として、当該明確になった履行先たる抵当権者への支払を賃借人に義務付けても不合理とはいえない。
●展開:他方、抵当権の効力が賃料債権に及ぶことは抵当権設定登記により、賃借人にも公示されていると考えられる。
●結論:よって、かかる差押え後は、抵当権設定登記後に賃貸人に対して取得した債権を自動債権とする相殺をもって抵当権者に対抗することはできないと解される。
●補足:511条の問題ではないことの根拠を確認。

物上代位との優劣(2)敷金返還請求権

●問題:抵当権に基づく物上代位と敷金充当との関係
●理由:敷金契約は、抵当権者に介入する権利がない用益関係に属する賃貸借契約に付随し締結される契約。敷金契約が締結された場合、賃料債権は敷金による充当を内在的に予定された債権となる。
●結論:敷金返還請求権発生時において残存する賃料債権は、敷金と同額において当然消滅し、賃借人は抵当権者に対しそのことを対抗しうると解される。
●補足:敷金返還請求権は明渡時(差押え後)に発生。しかし、511条の問題ではない。相殺ではない。敷金契約に基づく当然の結果。そもそも差押え対象に含まれない。優劣の問題も生じない。

建物登記(他人名義)の対抗力

●問題:借借法10条1項の建物「登記」の意義
●理由:他人名義の登記では、建物所有権すら対抗できない。また、登記すること自体は容易であり、それをしなかった者を第三者の取引の安全の擬制の下、保護する必要性に乏しい。
●結論:「登記」は自己名義に限られる。
●展開:信義則(1条2項)・権利濫用(1条3項)
●考慮要素:関係者による土地利用の必要性・損失、土地買主の認識・購入経緯、借地権利者による対抗要件具備ないことの事情(例えば、建物を譲渡担保については、社会的ニーズがあり、その対抗方法として担保権者への登記移転しかない。)。

請負契約(所有権)

●前提:合意があれば、それに従う。

●問題:完成した建物は誰に原始的に帰属するか。
●理由:当事者の合理的意思として、材料供給者が所有権を原始取得すると考えるはず。また、有体物を巡る物権的観点からの公平。
●結論(判例):特約なき限り、材料供給者に原始的に帰属する。
(請負人供給:引渡しにより注文者に移転、注文者供給:完成と同時に帰属)
●展開:請負代金支払済みの場合、注文者に原始的に帰属するとの特約があったと推認される。
●応用:段階的支払の場合は、事案毎に判断すれば良い。
●参考:多数説(注文者帰属。本文、295条1項本文、327条によれば良い。敷地利用権はないし。)

●問題:注文者帰属の特約がある場合の下請人の保護
●原則:元請契約は。当事者ではない下請人を拘束しない。
●修正:しかし、下請契約は、性質上元請契約の存在・内容を基にしており、下請人は、履行補助者的立場にあり、独立の立場にはない。
●結論:注文者・下請人間に特約がなき限り、注文者に帰属。

●問題:建築途中の第三者の工事
●理由:建物建築請負契約においては、工事には特段の価値があるため、加工(246条2項)の規定によるべきと解される。
●補足:建前は、動産ではあるが、不動産の前段階としての価値を有する動産である特殊性から、類推適用。
●参考:丸太を製材した材木については、丸太の所有者に所有権帰属(246条1項本文・ただし書き)。

請負契約(報酬支払請求権・損害賠償請求権)

●問題:同時履行(533条かっこ書き)の範囲
●理由:追完(修補)請求については、請負代金請求権全体との同時履行関係にある。それにも関わらず、追完(修補)に替わる損害賠償請求権について対当額のみの相殺を認めると、残代金債権について履行遅滞責任が生じ、追完(修補)請求との均衡を失する。
●原則:追完(修補)請求に代わる損害賠償請求権は、追加(修補)請求の代替であることから、信義則(1条2項)に反すると認められる特段の事情がある場合を除き、それを以って請負代金全額につき履行拒絶可能と解される。●理解:報酬請求権より低くても。●認識:特段の事情があっても、対当(?)額においては、あくまで履行拒絶が認められる。
●判例:最判平成9年2月14日
●原則:505条1項ただし書き
●理由:実質的には代金減額であり、それを認めても請負人に不利益なく当事者の公平に適うから。
●展開:同時履行の抗弁権(533条かっこ書き)が付いていても例外的に相殺可能
●判例:最判昭和53年9月21日
●補足:残金については、相殺時から遅滞(506条2項の趣旨たる公平上)
●判例:最判平成9年7月15日
●認識:請負人が相殺すれば、残額の請求権のみが残る。それまでの過渡的抗弁。
●補足:パターン(損害賠償請求→同時履行→相殺)
●認識:旧法下の判例。債権法改正により、旧634条削除(同2項後段は533条括弧書きへ(ゆえ上記論点枠組みとなる。)。1項前段は、売買分を準用。1項ただし書きは、重要でも技術的には収保可能であり過分の費用を負うのは不合理なので削除(変更権が認められた。563条あたり。●確認。)。2項前段は、売買分を準用。

☆事務管理・不当利得・不法行為

☆留意点・知識等

●121条の2第1項は、703条、704条の特則。
●「他人のため」(697条)と本人のためにする意思とは並存可能(大判大8年6月26日●不法行為に基づく原状回復請求:認められない(金銭賠償の原則(722条1項、417条))。
●不法行為に基づく差止請求:認められる(S.C.H7.7.7)。社会生活上の受忍限度を超える場合には。物に対する侵害すら、物権的請求権としての妨害排除請求権が認められる。●予防も?(cf.行政法上の「差止」)
●「被害者」(「側」ではない)の「過失」(722条2項):趣旨(損害の公平な分担)から、「過失」(709条)とは異なり、事理弁識能力があれば足りると解される。
●被害者側の過失:趣旨(損害の公平な分担)には、被害者負担が適う。また、求償関係につき合理的な一回的解決が可能である。よって、被害者と身分関係上・生活関係上一体をなすと認められる関係にある者の過失は、斟酌することができると解される(722条2項)。
●精神的素因:同種業務に従事する労働者の個性の多様性として通常想定される範囲を超えるものでない限り。斟酌不可。
●被害者即死:受傷と死亡との間の時間は観念可能であることから、損害賠償請求権は発生すると解される。その上で、受傷後一定期間を経て死亡した場合との均衡から、財産的損害賠償請求権については、単純な金銭債権として相続可能。他方、慰謝料請求権についても、この点で民法は財産的損害と区別していない、及び遺族保護の要請から、請求権を放棄したと解され得る特別の事情がない限り、発生するものと解される。そして、同じく相続可能。
●711条:趣旨(損害・因果関係の立証責任を軽減)から、「生命」に限定するものではなく、死亡に比肩すべき精神的損害を被った場合には、709条・710条に基づき請求可能。また、趣旨(損害・因果関係の立証責任軽減)が妥当する限り、例えば生活を共にしていた者等、そこに列挙された者以外にも類推可と解される。
●714条:趣旨(被害者保護のため監督義務につき立証責任を転換)から、監督義務者の責任を714条に限定する趣旨ではない。709条・710条に基づき損害賠償請求可能。●前提:知能なき未成年者は責任を負わない(712条(責任能力))。●注意:713条(責任能力)もある。●判例:責任能力(12歳前後)
●判例(最判昭和39年6月24日):被害者側の過失を考慮するためには、責任能力までは不要であり、事理弁識能力があれば足りる。両者は別もの、とは知っておく。「責任能力」と書く。
●「他人を使用」(715条):孫請けも含む。●論証検討
●「事業の執行について」(715条1項):原則は事業・職務の範囲内。しかし、趣旨(報償責任)に照らし、広く被害者保護。行為の外形から判断し、職務行為の範囲内に属するものと認められるものをも含むと解される。そこから、悪意・重過失の相手方は保護されない。●私見:「使用者の支配領域内」という考え方が、事実行為等を含むため妥当に思われる。債権法改正とも整合?
●715条3項の求償は、信義則(1条2項)上、相当な範囲に限定されうると解される。
●失火責任法:714(監督者について。趣旨(例外だが要限定。自己責任。)から。)。715条(被用者について。趣旨(例外だが報償から広く。代位責任。●確認:かな?)から。)●補足:失火責任法は債務不履行には適用されない(大連判明治45年3月23日)。責任が無限的に拡大することを防止する趣旨は、責任負担が契約当事者に限定されていることから、及ばない。●確認:個人レベルか、大衆レベルか、という話なのか。そもそも。
●「土地の工作物」(717条):趣旨(危険責任の法理)から、機能において危険があるか否かにより判断。そこで、「土地の工作物」とは、土地に付属された人工物、及びそれと機能的一体となった危険物と解される。例:看板・インフラ設備等も含まれる。「瑕疵」とは、工作物が、その種類に応じて、危険に対し通常備えているべき安全性を欠いていること。
●損益相殺:明文なし?公平からOK。損害と利得の同質性が要件。
●趣旨:718条が、占有者・管理者のみに責任を認める趣旨は、動物を制御できる者に限り、特別の責任を負担されるもの(717条が所有者にも責任を負担されることとの対比)。

不当利得

●要件:「利得」「損失」「因果関係」「法律上の原因不存在」
●不当利得の要件:趣旨である公平を実質的に図る観点から、因果関係は、社会通念上の因果関係で足り、また法律上の原因がないことは、当事者間における財産的価値の移動につき実質的な正当化事由がないことと解される。
●騙取金による弁済については、中間者が介在しても。かかる意味での因果関係は認められる。また、悪意・重過失ある者については、かかる意味での法律上の原因がないと言える(なお、軽過失者保護は動産の即時取得(192条)との均衡から)。よって、弁済金は不当利得となる。
●転用物訴権:「法律上の原因」がないと認められるのは、賃貸借契約を全体としてみて、賃貸人が対価関係なしに利益を受けた場合に限られる。この点、費用償還請求権(608条1項)を有していた場合は該当しない(423条1項で対応すべし)。それを有しない(例:賃借人が修理費用を負担する特約ある)場合、賃料が相応に安価であれば、対価関係はあり、「法律上の原因がない」とは言えない。通常賃料の場合のみ。
●利得が消滅していないか、検討すべきケースも(●確認:703条についてのみ問題?704条では利息や損害賠償まで問題となり、有効な反論とならないから?)。●参照:司法2015年(丸太)
●708条:趣旨:クリーンハンズの原則。90条と表裏一体の規定として、「不法」とは、公序良俗違反。
●注意:まず、法律上の原因の不存在を論じる必要がある。いきなり708条からスタートは不可。あくまで708条は給付不当利得の特則。
●「不当利得における因果関係の要件は、…契約当事者間で行われたリスク分配の貫徹(契約関係の自律性)を確保することをその目的とする。」(要件の役割を理解する)●司法平成28

不法行為に基づく損害賠償の範囲

●趣旨:(損害の公平な分担)から
●結論:相当因果関係の範囲内に限定(416条類推)。
●参考:722条1項

共同不法行為(成立要件)

●問題:「共同」(719条1項前段)
●趣旨:社会的に一個の行為における連帯責任を負わせ、被害者を保護する点にある。各人が不法行為の要件を具備することを前提に。
●結論:そこで、「共同」は、主観的関連共同まで要さず、客観的関連共同があれば足りると解される。
●展開:その結果、連帯債務を負担する。
●補足:旧法下では、不真正連帯債務(●定義:主観的共同関連なし。負担部分の観念なし。一人に生じた事由は他に影響せず。よって、436条、及び438条以下の適用なし。●確認:437条は?)だったが、有力学説は、新債権法で連帯債務の絶対効が削減されたことから、区別の実益なしとする。●方針:不確定概念よりもベター。●認識:負担部分なしの考え方は、求償を認めることと矛盾していた。
●検討:求償は442条1項等でOK

不真正連帯債務(免除)

●原則:相対効(441条本文)
●例外:絶対効(441条ただし書き)
●結論:上記例外のあてはめの問題

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