商法総則・商行為

【留意点・知識】

●債権法改正により削除された条文:
商事法定利率
商事時効
●●●
●商行為法で省略したもの:
交互計算(商法529~534条)
匿名組合(商法535~542条)
仲立(商法543~550条)
問屋営業(商法551~558条):551条1項(定義)、552条2項(趣旨:経済的実質を重視)、553条等
運送取扱営業(商法559~564条):565~568条は削除。

商法総則

商人資格の取得時期

●条文:501条・502条→4条1項・2項→503条(付属的商行為) ●参照:522等

●問題:いつの【~】の時点で「商人」(例:503)と言えるか、【商事法務連帯(511条)】の適用がありうるため、問題となる。
●理由:この点、善意の取引の相手方保護のため、基準の明確性が必要である。
●結論:そこで、相手方が営業意思を認識し、又は客観的に認識可能となった時点と解される。(最判S.47.2.24)。

商行為

(商行為の代理)
第五百四条 商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。

(商行為の委任)
第五百五条 商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる。

(商行為の委任による代理権の消滅事由の特例)
第五百六条 商行為の委任による代理権は、本人の死亡によっては、消滅しない。

第五百七条 削除

(多数当事者間の債務の連帯)
第五百十一条 数人の者がその一人又は全員のために商行為となる行為によって債務を負担したときは、その債務は、各自が連帯して負担する。
2 保証人がある場合において、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるとき、又は保証が商行為であるときは、主たる債務者及び保証人が各別の行為によって債務を負担したときであっても、その債務は、各自が連帯して負担する。

商事代理(商法504条)

●問題:「履行の請求」
●趣旨:取引の簡易・迅速のため、顕名主義(民法100条)の例外を定めた(商法504条本文)。
不測の損害を被る相手方の保護(同ただし書き)。
●結論:契約は、相手方・代理人間、及び相手方・本人間に成立し、相手方は、一方のみを選択的に請求しうる(最大判S43.4.24)。
●要件:「本人のためにすることを知らなかった」は善意無重過失。ただし書の趣旨から。
●参考:反対説は、文言通り(契約は成立せず)「請求」が可能なだけであり、不真正連帯債務となるとする。が、過剰な保護、と批判される。

●問題:本人の請求により代理人の債権につき時効が更新されるか?
●結論・理由:肯定・両債権は権利の帰属につき択一的だが、実体的には単一。
●私見:論点消滅?(民法153条2項、民法150条、及び商法522条の削除)

商事保証(商法511条2項)

●問題:債権者にとり商行為があるに過ぎない場合も「保証が商行為であるとき」もあたるか。
●結論:あたらない(通説)。
●理由:2項の趣旨は商人の信用強化ゆえ商人が保証する場合のみで足りる。また、511条1項との整合性。
●判例(大判S14.12.27):あたる。2項の趣旨は、債務の履行確保。

(商人間の留置権)
第五百二十一条 商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、この限りでない。

商事留置権(商法521条)

●問題?:「商人」
●問題:「物」(抵当権を害するが、不動産も、と解されている。)
●問題:「占有」(事実上の支配で足りる)

●問題:民法295条2項のような規定なし。
●結論:類推適用(私見)

第二章 売買

(売主による目的物の供託及び競売)
第五百二十四条 商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる。この場合において、売主がその物を供託し、又は競売に付したときは、遅滞なく、買主に対してその旨の通知を発しなければならない。
2 損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、前項の催告をしないで競売に付することができる。
3 前二項の規定により売買の目的物を競売に付したときは、売主は、その代価を供託しなければならない。ただし、その代価の全部又は一部を代金に充当することを妨げない。

(定期売買の履行遅滞による解除)
第五百二十五条 商人間の売買において、売買の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなす。

(買主による目的物の検査及び通知)
第五百二十六条 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。
2 前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。売買の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することができない場合において、買主が六箇月以内にその不適合を発見したときも、同様とする。
3 前項の規定は、売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことにつき売主が悪意であった場合には、適用しない。

(買主による目的物の保管及び供託)
第五百二十七条 前条第一項に規定する場合においては、買主は、契約の解除をしたときであっても、売主の費用をもって売買の目的物を保管し、又は供託しなければならない。ただし、その物について滅失又は損傷のおそれがあるときは、裁判所の許可を得てその物を競売に付し、かつ、その代価を保管し、又は供託しなければならない。
2 前項ただし書の許可に係る事件は、同項の売買の目的物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
3 第一項の規定により買主が売買の目的物を競売に付したときは、遅滞なく、売主に対してその旨の通知を発しなければならない。
4 前三項の規定は、売主及び買主の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)が同一の市町村の区域内にある場合には、適用しない。

第五百二十八条 前条の規定は、売主から買主に引き渡した物品が注文した物品と異なる場合における当該売主から買主に引き渡した物品及び売主から買主に引き渡した物品の数量が注文した数量を超過した場合における当該超過した部分の数量の物品について準用する。

商事売買(商法524条~528条)

●問題:商法526条は不特定物売買につき適用されるか。明文なし。
●趣旨:商人である買主の瑕疵発見の容易性を前提に、取引を早期に確定させて売主を保護する。
●理由:かかる趣旨は、不特定物であっても妥当。むしろ商事売買の多くは不特定物についてであり、適用されないと存在意義を没却。
●結論:適用あり。

●問題:完全履行請求にも適用される?明文なし。
●理由:趣旨が妥当(●確認)
●結論:適用される(具体的には、検査・通知が必要)

問屋(商法551条~558条)

●問題:問屋による権利取得後の破産手続開始決定の場合、委託者は取戻権(破産法62条)を行使できるか。
●結論:できる(最判S43.7.11)。
●理由:実質的権利者。問屋の債権者は一般担保として期待すべきではない。
●参考(伝統的な通説):第三者対抗要件を具備しない限り、できない。

第八章 運送営業
第一節 総則
第五百六十九条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 一 運送人 陸上運送、海上運送又は航空運送の引受けをすることを業とする者をいう。
 二 陸上運送 陸上における物品又は旅客の運送をいう。
 三 海上運送 第六百八十四条に規定する船舶(第七百四十七条に規定する非航海船を含む。)による物品又は旅客の運送をいう。
 四 航空運送 航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第二条第一項に規定する航空機による物品又は旅客の運送をいう。

第二節 物品運送
(略)
(高価品の特則)
第五百七十七条 貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するに当たりその種類及び価額を通知した場合を除き、運送人は、その滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負わない。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
 一 物品運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたとき。
 二 運送人の故意又は重大な過失によって高価品の滅失、損傷又は延着が生じたとき。
(略)
第三節 旅客運送(略)

高価品の督促(商法577条)

●趣旨:運送人保護(●確認:定義)
●問題・結論:運送人悪意・適用なし。
●問題・結論:運送人の故意重過失・適用なし。

●問題:民法709条をも適用可能か?
●結論:肯定(最高裁H38.11.5)請求権競合
●理由:二億離任に過失があれば、過失相殺されるので、商法577条の趣旨は害されない。
●参考(●確認):旧商法580条(原則)→578条(特則)

●確認:貨物引換証(573、575、572(文言性))は???
●参考:旅客運送:(略)(589~594)

第九章 寄託

第一節 総則
(受寄者の注意義務)
第五百九十五条 商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合には、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をもって、寄託物を保管しなければならない。

(場屋営業者の責任)
第五百九十六条 旅館、飲食店、浴場その他の客の来集を目的とする場屋における取引をすることを業とする者(以下この節において「場屋営業者」という。)は、客から寄託を受けた物品の滅失又は損傷については、不可抗力によるものであったことを証明しなければ、損害賠償の責任を免れることができない。
2 客が寄託していない物品であっても、場屋の中に携帯した物品が、場屋営業者が注意を怠ったことによって滅失し、又は損傷したときは、場屋営業者は、損害賠償の責任を負う。
3 客が場屋の中に携帯した物品につき責任を負わない旨を表示したときであっても、場屋営業者は、前二項の責任を免れることができない。

(高価品の特則)
第五百九十七条 貨幣、有価証券その他の高価品については、客がその種類及び価額を通知してこれを場屋営業者に寄託した場合を除き、場屋営業者は、その滅失又は損傷によって生じた損害を賠償する責任を負わない。

(場屋営業者の責任に係る債権の消滅時効)
第五百九十八条 前二条の場屋営業者の責任に係る債権は、場屋営業者が寄託を受けた物品を返還し、又は客が場屋の中に携帯した物品を持ち去った時(物品の全部滅失の場合にあっては、客が場屋を去った時)から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。
2 前項の規定は、場屋営業者が同項に規定する物品の滅失又は損傷につき悪意であった場合には、適用しない。

第二節 倉庫営業(略)

場屋営業による寄託(商法596条)

●趣旨:責任厳格化に備を利用する意思で場屋に入った者(契約未締結でも)
●理由:趣旨(●検討)

●問題:「寄託を受けた物品」
●結論:営業主の支配下は該当。保管場所(例:駐車場、コインロッカー)の提供のみの場合は非該当。

●問題:「不可抗力」
●結論:当該営業の外部から発生し、通常必要な方法では予防できない事故(折衷説・通説)
●理由:趣旨(●検討)

●参考:597条は、577条と同様の条文。
●参考:商事寄託(商法595~617条):618~683条は削除。

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