民事執行法

昭和五十四年法律第四号
民事執行法
目次
第一章 総則第一条第二十一条
第二章 強制執行
 第一節 総則第二十二条第四十二条
 第二節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行
  第一款 不動産に対する強制執行
   第一目 通則第四十三条第四十四条
   第二目 強制競売第四十五条第九十二条
   第三目 強制管理第九十三条第百十一条
  第二款 船舶に対する強制執行第百十二条第百二十一条
  第三款 動産に対する強制執行第百二十二条第百四十二条
  第四款 債権及びその他の財産権に対する強制執行
   第一目 債権執行等第百四十三条第百六十七条
   第二目 少額訴訟債権執行第百六十七条の二第百六十七条の十四
  第五款 扶養義務等に係る金銭債権についての強制執行の特例第百六十七条の十五第百六十七条の十六
 第三節 金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行第百六十八条第百七十九条
第三章 担保権の実行としての競売等第百八十条第百九十五条
第四章 債務者の財産状況の調査
 第一節 財産開示手続第百九十六条第二百三条
 第二節 第三者からの情報取得手続第二百四条第二百十一条
第五章 罰則第二百十二条第二百十五条附則

【留意点・知識】

●強制執行の要件:①債務名義(cf.請求異議の訴え(民執法35条))、②目的物の債務者所有(cf.第三者異議の訴え(民執法38条1項))。

●強制執行・担保執行の他、形式的競売(195条)(第2章の末尾に一条文のみ)、そして財産状況調査手続(196条~211条)がある。212条~215条は罰則規定。
●財産状況調査手続:(1)財産開示手続(196条~203条)、(2)第三者からの情報取得手続(204条~211条)((2)は令和元年新設)
●担保執行の手続については、強制執行の手続を大幅に準用している(188条、192条、193条2項)。
●不動産担保権の執行:187条は特則(競売開始決定前の保全処分)。競売の公信的効果(184条。根拠:182条・183条1項1号・2号)。
●動産競売:190条1項3号は、占有を有しない担保権者(動産売買の先取特権者等)のための規定。1号・2号では不足。
●不動産収益執行については、強制管理の条文を全面的に引用している(188条)が、両者は別の制度。
●強制執行の実体的要件:(1)債務名義、(2)執行文
●認識:総則の後は、(1)各民事執行の種類ごとに条文があり、(2)各々差押え→換価→満足等の手続が規定されている。
●民事執行規則もある。
●令和元年改正:(1)債務者財産の開示制度の実効性向上(197条、204条~211条、213条)、(2)暴力団排除関連(65条の2、213条、68条の4,71条)、(3)差押禁止債権に係る教示制度(145条4項)。
●転付命令(159条)によれば執行終了する。譲渡命令(161条)の場合は配当がなされる。
●強制執行の停止(39条等)もある。
●担保執行の場合、存在を証明する文書の提出が原則であり、債務名義は不要。権利移転に登記・登録を要するもの等については、法定文書(193条1項、181条)。●認識:債務名義ではない、という点では同じ。
【参考】試験上は無視でOK
・差押の効力発生(民執法145条4項)、差押者による法定訴訟担当(民執法157条1項)、間接占有者に対する債権的返還請求権(民執法170条1項)
●引換給付判決の反対給付の履行は、執行開始の要件であり、条件成就執行文は不要。単純執行文で足りる。●実務:執行の場で、執行官立ち合い下、金銭授受が確認されて建物明渡し、等。
●差押禁止動産(131条)。
●差押禁止債権(152条)。

(留置権による競売及び民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売)
第百九十五条 留置権による競売及び民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による。

☆民事執行

●強制執行
1.金銭執行
(執行方法:差押え→換価→満足(扶養義務等に係る執行においては間接強制も可能))
(1)不動産執行
イ.強制競売
ロ.強制管理
(2)準不動産執行
イ.船舶執行
ロ.航空機執行
ハ.自動車・建設機械執行
(3)動産執行
(4)債権その他の財産権に対する執行


2.非金銭執行
(1)物の引渡請求権の執行
(執行方法:直接強制・間接強制)
イ.不動産
ロ.動産
(2)作為・不作為債権の執行
(執行方法:代替執行・間接強制)
(3)意思表示債権の執行
(執行方法:意思表示の擬制)

●担保執行
(執行方法:差押え→換価→満足)
1.金銭執行(のみ)
(1)不動産
イ.担保不動産競売
ロ.担保不動産収益執行
(2)準不動産競売
(3)動産競売
(4)債権その他の財産権に対する担保権の実行

第一章 総則

(趣旨) 第一条 強制執行、担保権の実行としての競売及び民法(明治二十九年法律第八十九号)、商法(明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の規定による換価のための競売並びに債務者の財産状況の調査(以下「民事執行」と総称する。)については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。

(執行機関) 第二条 民事執行は、申立てにより、裁判所又は執行官が行う。

(執行裁判所) 第三条 裁判所が行う民事執行に関してはこの法律の規定により執行処分を行うべき裁判所をもつて、執行官が行う執行処分に関してはその執行官の所属する地方裁判所をもつて執行裁判所とする。

(任意的口頭弁論) 第四条 執行裁判所のする裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。

(審尋) 第五条 執行裁判所は、執行処分をするに際し、必要があると認めるときは、利害関係を有する者その他参考人を審尋することができる。

(執行官等の職務の執行の確保) 第六条 執行官は、職務の執行に際し抵抗を受けるときは、その抵抗を排除するために、威力を用い、又は警察上の援助を求めることができる。ただし、第六十四条の二第五項(第百八十八条において準用する場合を含む。)の規定に基づく職務の執行については、この限りでない。  執行官以外の者で執行裁判所の命令により民事執行に関する職務を行うものは、職務の執行に際し抵抗を受けるときは、執行官に対し、援助を求めることができる。

(立会人) 第七条 執行官又は執行裁判所の命令により民事執行に関する職務を行う者(以下「執行官等」という。)は、人の住居に立ち入つて職務を執行するに際し、住居主、その代理人又は同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに出会わないときは、市町村の職員、警察官その他証人として相当と認められる者を立ち会わせなければならない。執行官が前条第一項の規定により威力を用い、又は警察上の援助を受けるときも、同様とする。

(休日又は夜間の執行) 第八条 執行官等は、日曜日その他の一般の休日又は午後七時から翌日の午前七時までの間に人の住居に立ち入つて職務を執行するには、執行裁判所の許可を受けなければならない。  執行官等は、職務の執行に当たり、前項の規定により許可を受けたことを証する文書を提示しなければならない。

(身分証明書等の携帯) 第九条 執行官等は、職務を執行する場合には、その身分又は資格を証する文書を携帯し、利害関係を有する者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。

(執行抗告) 第十条 民事執行の手続に関する裁判に対しては、特別の定めがある場合に限り、執行抗告をすることができる。  執行抗告は、裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間内に、抗告状を原裁判所に提出してしなければならない。  抗告状に執行抗告の理由の記載がないときは、抗告人は、抗告状を提出した日から一週間以内に、執行抗告の理由書を原裁判所に提出しなければならない。  執行抗告の理由は、最高裁判所規則で定めるところにより記載しなければならない。  次の各号に該当するときは、原裁判所は、執行抗告を却下しなければならない。  抗告人が第三項の規定による執行抗告の理由書の提出をしなかつたとき。  執行抗告の理由の記載が明らかに前項の規定に違反しているとき。  執行抗告が不適法であつてその不備を補正することができないことが明らかであるとき。  執行抗告が民事執行の手続を不当に遅延させることを目的としてされたものであるとき。  抗告裁判所は、執行抗告についての裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで原裁判の執行の停止若しくは民事執行の手続の全部若しくは一部の停止を命じ、又は担保を立てさせてこれらの続行を命ずることができる。事件の記録が原裁判所に存する間は、原裁判所も、これらの処分を命ずることができる。  抗告裁判所は、抗告状又は執行抗告の理由書に記載された理由に限り、調査する。ただし、原裁判に影響を及ぼすべき法令の違反又は事実の誤認の有無については、職権で調査することができる。  第五項の規定による決定に対しては、執行抗告をすることができる。  第六項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。 10 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第三百四十九条の規定は、執行抗告をすることができる裁判が確定した場合について準用する。

(執行異議) 第十一条 執行裁判所の執行処分で執行抗告をすることができないものに対しては、執行裁判所に執行異議を申し立てることができる。執行官の執行処分及びその遅怠に対しても、同様とする。  前条第六項前段及び第九項の規定は、前項の規定による申立てがあつた場合について準用する。

(取消決定等に対する執行抗告) 第十二条 民事執行の手続を取り消す旨の決定に対しては、執行抗告をすることができる。民事執行の手続を取り消す執行官の処分に対する執行異議の申立てを却下する裁判又は執行官に民事執行の手続の取消しを命ずる決定に対しても、同様とする。  前項の規定により執行抗告をすることができる裁判は、確定しなければその効力を生じない。

(代理人) 第十三条 民事訴訟法第五十四条第一項の規定により訴訟代理人となることができる者以外の者は、執行裁判所でする手続については、訴え又は執行抗告に係る手続を除き、執行裁判所の許可を受けて代理人となることができる。  執行裁判所は、いつでも前項の許可を取り消すことができる。

(費用の予納等) 第十四条 執行裁判所に対し民事執行の申立てをするときは、申立人は、民事執行の手続に必要な費用として裁判所書記官の定める金額を予納しなければならない。予納した費用が不足する場合において、裁判所書記官が相当の期間を定めてその不足する費用の予納を命じたときも、同様とする。  前項の規定による裁判所書記官の処分に対しては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内に、執行裁判所に異議を申し立てることができる。  第一項の規定による裁判所書記官の処分は、確定しなければその効力を生じない。  申立人が費用を予納しないときは、執行裁判所は、民事執行の申立てを却下し、又は民事執行の手続を取り消すことができる。  前項の規定により申立てを却下する決定に対しては、執行抗告をすることができる。

(担保の提供) 第十五条 この法律の規定により担保を立てるには、担保を立てるべきことを命じた裁判所(以下この項において「発令裁判所」という。)又は執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭又は発令裁判所が相当と認める有価証券(社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第二百七十八条第一項に規定する振替債を含む。)を供託する方法その他最高裁判所規則で定める方法によらなければならない。ただし、当事者が特別の契約をしたときは、その契約による。  民事訴訟法第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、前項の担保について準用する。

(送達の特例) 第十六条 民事執行の手続について、執行裁判所に対し申立て、申出若しくは届出をし、又は執行裁判所から文書の送達を受けた者は、送達を受けるべき場所(日本国内に限る。)を執行裁判所に届け出なければならない。この場合においては、送達受取人をも届け出ることができる。  民事訴訟法第百四条第二項及び第三項並びに第百七条の規定は、前項前段の場合について準用する。  第一項前段の規定による届出をしない者(前項において準用する民事訴訟法第百四条第三項に規定する者を除く。)に対する送達は、事件の記録に表れたその者の住所、居所、営業所又は事務所においてする。  前項の規定による送達をすべき場合において、第二十条において準用する民事訴訟法第百六条の規定により送達をすることができないときは、裁判所書記官は、同項の住所、居所、営業所又は事務所にあてて、書類を書留郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者の提供する同条第二項に規定する信書便の役務のうち書留郵便に準ずるものとして最高裁判所規則で定めるものに付して発送することができる。この場合においては、民事訴訟法第百七条第二項及び第三項の規定を準用する。

(民事執行の事件の記録の閲覧等) 第十七条 執行裁判所の行う民事執行について、利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。

(官庁等に対する援助請求等) 第十八条 民事執行のため必要がある場合には、執行裁判所又は執行官は、官庁又は公署に対し、援助を求めることができる。  前項に規定する場合には、執行裁判所又は執行官は、民事執行の目的である財産(財産が土地である場合にはその上にある建物を、財産が建物である場合にはその敷地を含む。)に対して課される租税その他の公課について、所管の官庁又は公署に対し、必要な証明書の交付を請求することができる。  前項の規定は、民事執行の申立てをしようとする者がその申立てのため同項の証明書を必要とする場合について準用する。

(専属管轄) 第十九条 この法律に規定する裁判所の管轄は、専属とする。

(民事訴訟法の準用) 第二十条 特別の定めがある場合を除き、民事執行の手続に関しては、民事訴訟法の規定を準用する。

(最高裁判所規則) 第二十一条 この法律に定めるもののほか、民事執行の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

☆各論

(転付命令) 第百五十九条 執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、支払に代えて券面額で差し押さえられた金銭債権を差押債権者に転付する命令(以下「転付命令」という。)を発することができる。  転付命令は、債務者及び第三債務者に送達しなければならない。  転付命令が第三債務者に送達される時までに、転付命令に係る金銭債権について、他の債権者が差押え、仮差押えの執行又は配当要求をしたときは、転付命令は、その効力を生じない。  第一項の申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。  転付命令は、確定しなければその効力を生じない。  差し押さえられた金銭債権が第百五十二条第一項各号に掲げる債権又は同条第二項に規定する債権である場合(差押債権者の債権に第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権が含まれているときを除く。)における前項の規定の適用については、同項中「確定しなければ」とあるのは、「確定し、かつ、債務者に対して差押命令が送達された日から四週間を経過するまでは、」とする。  転付命令が発せられた後に第三十九条第一項第七号又は第八号に掲げる文書を提出したことを理由として執行抗告がされたときは、抗告裁判所は、他の理由により転付命令を取り消す場合を除き、執行抗告についての裁判を留保しなければならない。

(転付命令の効力) 第百六十条 転付命令が効力を生じた場合においては、差押債権者の債権及び執行費用は、転付命令に係る金銭債権が存する限り、その券面額で、転付命令が第三債務者に送達された時に弁済されたものとみなす。

(譲渡命令等) 第百六十一条 差し押さえられた債権が、条件付若しくは期限付であるとき、又は反対給付に係ることその他の事由によりその取立てが困難であるときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、その債権を執行裁判所が定めた価額で支払に代えて差押債権者に譲渡する命令(以下「譲渡命令」という。)、取立てに代えて、執行裁判所の定める方法によりその債権の売却を執行官に命ずる命令(以下「売却命令」という。)又は管理人を選任してその債権の管理を命ずる命令(以下「管理命令」という。)その他相当な方法による換価を命ずる命令を発することができる。  執行裁判所は、前項の規定による決定をする場合には、債務者を審尋しなければならない。ただし、債務者が外国にあるとき、又はその住所が知れないときは、この限りでない。  第一項の申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。  第一項の規定による決定は、確定しなければその効力を生じない。  差し押さえられた債権が第百五十二条第一項各号に掲げる債権又は同条第二項に規定する債権である場合(差押債権者の債権に第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権が含まれているときを除く。)における前項の規定の適用については、同項中「確定しなければ」とあるのは、「確定し、かつ、債務者に対して差押命令が送達された日から四週間を経過するまでは、」とする。  執行官は、差し押さえられた債権を売却したときは、債務者に代わり、第三債務者に対し、確定日付のある証書によりその譲渡の通知をしなければならない。  第百五十九条第二項及び第三項並びに前条の規定は譲渡命令について、第百五十九条第七項の規定は譲渡命令に対する執行抗告について、第六十五条及び第六十八条の規定は売却命令に基づく執行官の売却について、第百五十九条第二項の規定は管理命令について、第八十四条第三項及び第四項、第八十八条、第九十四条第二項、第九十五条第一項、第三項及び第四項、第九十八条から第百四条まで並びに第百六条から第百十条までの規定は管理命令に基づく管理について、それぞれ準用する。この場合において、第八十四条第三項及び第四項中「代金の納付後」とあるのは、「第百六十一条第七項において準用する第百七条第一項の期間の経過後」と読み替えるものとする。

第三節 金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行

(不動産の引渡し等の強制執行)
第百六十八条
 不動産等(不動産又は人の居住する船舶等をいう。以下この条及び次条において同じ。)の引渡し又は明渡しの強制執行は、執行官が債務者の不動産等に対する占有を解いて債権者にその占有を取得させる方法により行う。 執行官は、前項の強制執行をするため同項の不動産等の占有者を特定する必要があるときは、当該不動産等に在る者に対し、当該不動産等又はこれに近接する場所において、質問をし、又は文書の提示を求めることができる。 第一項の強制執行は、債権者又はその代理人が執行の場所に出頭したときに限り、することができる。 執行官は、第一項の強制執行をするに際し、債務者の占有する不動産等に立ち入り、必要があるときは、閉鎖した戸を開くため必要な処分をすることができる。 執行官は、第一項の強制執行においては、その目的物でない動産を取り除いて、債務者、その代理人又は同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに引き渡さなければならない。この場合において、その動産をこれらの者に引き渡すことができないときは、執行官は、最高裁判所規則で定めるところにより、これを売却することができる。 執行官は、前項の動産のうちに同項の規定による引渡し又は売却をしなかつたものがあるときは、これを保管しなければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する。 前項の規定による保管の費用は、執行費用とする。 第五項(第六項後段において準用する場合を含む。)の規定により動産を売却したときは、執行官は、その売得金から売却及び保管に要した費用を控除し、その残余を供託しなければならない。 第五十七条第五項の規定は、第一項の強制執行について準用する。

(動産の引渡しの強制執行)第百六十九条 第百六十八条第一項に規定する動産以外の動産(有価証券を含む。)の引渡しの強制執行は、執行官が債務者からこれを取り上げて債権者に引き渡す方法により行う。 第百二十二条第二項、第百二十三条第二項及び第百六十八条第五項から第八項までの規定は、前項の強制執行について準用する。

(代替執行)
第百七十一条
 次の各号に掲げる強制執行は、執行裁判所がそれぞれ当該各号に定める旨を命ずる方法により行う。  作為を目的とする債務についての強制執行債務者の費用で第三者に当該作為をさせること。  不作為を目的とする債務についての強制執行債務者の費用で、債務者がした行為の結果を除去し、又は将来のため適当な処分をすべきこと。  前項の執行裁判所は、第三十三条第二項第一号又は第六号に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める裁判所とする。  執行裁判所は、第一項の規定による決定をする場合には、債務者を審尋しなければならない。  執行裁判所は、第一項の規定による決定をする場合には、申立てにより、債務者に対し、その決定に掲げる行為をするために必要な費用をあらかじめ債権者に支払うべき旨を命ずることができる。  第一項の強制執行の申立て又は前項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。  第六条第二項の規定は、第一項の規定による決定を執行する場合について準用する。

(間接強制)
第百七十二条
 作為又は不作為を目的とする債務で前条第一項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。  事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定による決定を変更することができる。  執行裁判所は、前二項の規定による決定をする場合には、申立ての相手方を審尋しなければならない。  第一項の規定により命じられた金銭の支払があつた場合において、債務不履行により生じた損害の額が支払額を超えるときは、債権者は、その超える額について損害賠償の請求をすることを妨げられない。  第一項の強制執行の申立て又は第二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。  前条第二項の規定は、第一項の執行裁判所について準用する。

第百七十三条 第百六十八条第一項、第百六十九条第一項、第百七十条第一項及び第百七十一条第一項に規定する強制執行は、それぞれ第百六十八条から第百七十一条までの規定により行うほか、債権者の申立てがあるときは、執行裁判所が前条第一項に規定する方法により行う。この場合においては、同条第二項から第五項までの規定を準用する。
 前項の執行裁判所は、第三十三条第二項各号(第一号の二、第一号の三及び第四号を除く。)に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該債務名義についての執行文付与の訴えの管轄裁判所とする。

(意思表示の擬制)
第百七十七条 意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決その他の裁判が確定し、又は和解、認諾、調停若しくは労働審判に係る債務名義が成立したときは、債務者は、その確定又は成立の時に意思表示をしたものとみなす。ただし、債務者の意思表示が、債権者の証明すべき事実の到来に係るときは第二十七条第一項の規定により執行文が付与された時に、反対給付との引換え又は債務の履行その他の債務者の証明すべき事実のないことに係るときは次項又は第三項の規定により執行文が付与された時に意思表示をしたものとみなす。
 債務者の意思表示が反対給付との引換えに係る場合においては、執行文は、債権者が反対給付又はその提供のあつたことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。
 債務者の意思表示が債務者の証明すべき事実のないことに係る場合において、執行文の付与の申立てがあつたときは、裁判所書記官は、債務者に対し一定の期間を定めてその事実を証明する文書を提出すべき旨を催告し、債務者がその期間内にその文書を提出しないときに限り、執行文を付与することができる。


第三章 担保権の実行としての競売等
(不動産担保権の実行の方法)
第百八十条 不動産(登記することができない土地の定着物を除き、第四十三条第二項の規定により不動産とみなされるものを含む。以下この章において同じ。)を目的とする担保権(以下この章において「不動産担保権」という。)の実行は、次に掲げる方法であつて債権者が選択したものにより行う。 担保不動産競売(競売による不動産担保権の実行をいう。以下この章において同じ。)の方法 担保不動産収益執行(不動産から生ずる収益を被担保債権の弁済に充てる方法による不動産担保権の実行をいう。以下この章において同じ。)の方法

(不動産担保権の実行の開始)
第百八十一条 不動産担保権の実行は、次に掲げる文書が提出されたときに限り、開始する。
 担保権の存在を証する確定判決若しくは家事事件手続法第七十五条の審判又はこれらと同一の効力を有するものの謄本
 担保権の存在を証する公証人が作成した公正証書の謄本 担保権の登記(仮登記を除く。)に関する登記事項証明書 一般の先取特権にあつては、その存在を証する文書

 抵当証券の所持人が不動産担保権の実行の申立てをするには、抵当証券を提出しなければならない。 担保権について承継があつた後不動産担保権の実行の申立てをする場合には、相続その他の一般承継にあつてはその承継を証する文書を、その他の承継にあつてはその承継を証する裁判の謄本その他の公文書を提出しなければならない。 不動産担保権の実行の開始決定がされたときは、裁判所書記官は、開始決定の送達に際し、不動産担保権の実行の申立てにおいて提出された前三項に規定する文書の目録及び第一項第四号に掲げる文書の写しを相手方に送付しなければならない。

(開始決定に対する執行抗告等) 第百八十二条 不動産担保権の実行の開始決定に対する執行抗告又は執行異議の申立てにおいては、債務者又は不動産の所有者(不動産とみなされるものにあつては、その権利者。以下同じ。)は、担保権の不存在又は消滅を理由とすることができる。

(不動産担保権の実行の手続の停止) 第百八十三条 不動産担保権の実行の手続は、次に掲げる文書の提出があつたときは、停止しなければならない。  担保権のないことを証する確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。次号において同じ。)の謄本  第百八十一条第一項第一号に掲げる裁判若しくはこれと同一の効力を有するものを取り消し、若しくはその効力がないことを宣言し、又は同項第三号に掲げる登記をまつ消すべき旨を命ずる確定判決の謄本  担保権の実行をしない旨、その実行の申立てを取り下げる旨又は債権者が担保権によつて担保される債権の弁済を受け、若しくはその債権の弁済の猶予をした旨を記載した裁判上の和解の調書その他の公文書の謄本  担保権の登記の抹消に関する登記事項証明書  不動産担保権の実行の手続の停止及び執行処分の取消しを命ずる旨を記載した裁判の謄本  不動産担保権の実行の手続の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の謄本  担保権の実行を一時禁止する裁判の謄本  前項第一号から第五号までに掲げる文書が提出されたときは、執行裁判所は、既にした執行処分をも取り消さなければならない。  第十二条の規定は、前項の規定による決定については適用しない。

(代金の納付による不動産取得の効果) 第百八十四条 担保不動産競売における代金の納付による買受人の不動産の取得は、担保権の不存在又は消滅により妨げられない。

(担保不動産競売の開始決定前の保全処分等) 第百八十七条 執行裁判所は、担保不動産競売の開始決定前であつても、債務者又は不動産の所有者若しくは占有者が価格減少行為(第五十五条第一項に規定する価格減少行為をいう。以下この項において同じ。)をする場合において、特に必要があるときは、当該不動産につき担保不動産競売の申立てをしようとする者の申立てにより、買受人が代金を納付するまでの間、同条第一項各号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずることができる。ただし、当該価格減少行為による価格の減少又はそのおそれの程度が軽微であるときは、この限りでない。  前項の場合において、第五十五条第一項第二号又は第三号に掲げる保全処分は、次に掲げる場合のいずれかに該当するときでなければ、命ずることができない。  前項の債務者又は同項の不動産の所有者が当該不動産を占有する場合  前項の不動産の占有者の占有の権原が同項の規定による申立てをした者に対抗することができない場合  第一項の規定による申立てをするには、担保不動産競売の申立てをする場合において第百八十一条第一項から第三項までの規定により提出すべき文書を提示しなければならない。  執行裁判所は、申立人が第一項の保全処分を命ずる決定の告知を受けた日から三月以内に同項の担保不動産競売の申立てをしたことを証する文書を提出しないときは、被申立人又は同項の不動産の所有者の申立てにより、その決定を取り消さなければならない。  第五十五条第三項から第五項までの規定は第一項の規定による決定について、同条第六項の規定は第一項又はこの項において準用する同条第五項の申立てについての裁判について、同条第七項の規定はこの項において準用する同条第五項の規定による決定について、同条第八項及び第九項並びに第五十五条の二の規定は第一項の規定による決定(第五十五条第一項第一号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずるものを除く。)について、第五十五条第十項の規定は第一項の申立て又は同項の規定による決定(同条第一項第一号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずるものを除く。)の執行に要した費用について、第八十三条の二の規定は第一項の規定による決定(第五十五条第一項第三号に掲げる保全処分及び公示保全処分を命ずるものに限る。)の執行がされた場合について準用する。この場合において、第五十五条第三項中「債務者以外の占有者」とあるのは、「債務者及び不動産の所有者以外の占有者」と読み替えるものとする。

☆執行救済制度

●執行文付与に対する救済手続
1.執行文の付与等に関する異議の申立て(32条):債権者・債務者双方から
2.執行文付与の訴え(33条):債権者から
特殊執行文(条件成就執行文・承継執行文等)の付与を求めたが、特別要件(条件成就・承継等)を証明する文書(27条)を提出できない場合
3.執行文付与に対する異議の訴え(34条):債務者から
27条の執行文が付与された場合において、証明事実の未到来・執行力の拡張事由(承継事由)の不存在を理由に。

●違法・不当執行に対する救済手続
1.執行機関の行為が法違反
(1)執行抗告(10条)
執行裁判所の裁判に対する上訴(特別の規定がある場合のみ)

(例:14条5項、45条3項、145条6項、74条1項、55条6項)
(2)執行異議(11条)
執行裁判所の裁判(執行抗告不可)、及び執行官の執行処分・遅滞に対する不服申立て(原則一審限り。例外は12条のみ。)。

但し、担保権実行手続においては、債権者(簡易な執行開始が可能)との公平上、実体法上の異議(担保権の消滅・不存在)主張可能。
2.実体法上違法
(1)請求異議の訴え(35条)
債務名義(有効に成立)の表記内容について、後に変化した場合(表記された請求権の消滅等)
(2)第三者異議の訴え(38条)
強制執行の目的物について、所有権等を有する第三者から。

第二章 強制執行

第一節 総則

(債務名義) 第二十二条 強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。  確定判決  仮執行の宣言を付した判決  抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては、確定したものに限る。) 三の二 仮執行の宣言を付した損害賠償命令 三の三 仮執行の宣言を付した届出債権支払命令  仮執行の宣言を付した支払督促 四の二 訴訟費用、和解の費用若しくは非訟事件(他の法令の規定により非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)の規定を準用することとされる事件を含む。)、家事事件若しくは国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(平成二十五年法律第四十八号)第二十九条に規定する子の返還に関する事件の手続の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分又は第四十二条第四項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定める裁判所書記官の処分(後者の処分にあつては、確定したものに限る。)  金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)  確定した執行判決のある外国裁判所の判決(家事事件における裁判を含む。第二十四条において同じ。) 六の二 確定した執行決定のある仲裁判断  確定判決と同一の効力を有するもの(第三号に掲げる裁判を除く。)

(強制執行をすることができる者の範囲)
第二十三条 執行証書以外の債務名義による強制執行は、次に掲げる者に対し、又はその者のためにすることができる。
 債務名義に表示された当事者
 債務名義に表示された当事者が他人のために当事者となつた場合のその他人
 前二号に掲げる者の債務名義成立後の承継人(前条第一号、第二号又は第六号に掲げる債務名義にあつては口頭弁論終結後の承継人、同条第三号の二に掲げる債務名義又は同条第七号に掲げる債務名義のうち損害賠償命令に係るものにあつては審理終結後の承継人)
 執行証書による強制執行は、執行証書に表示された当事者又は執行証書作成後のその承継人に対し、若しくはこれらの者のためにすることができる。
 第一項に規定する債務名義による強制執行は、同項各号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者に対しても、することができる。

(外国裁判所の判決の執行判決) 第二十四条 外国裁判所の判決についての執行判決を求める訴えは、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所(家事事件における裁判に係るものにあつては、家庭裁判所。以下この項において同じ。)が管轄し、この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。  前項に規定する地方裁判所は、同項の訴えの全部又は一部が家庭裁判所の管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、同項の規定にかかわらず、申立てにより又は職権で、当該訴えに係る訴訟の全部又は一部について自ら審理及び裁判をすることができる。  第一項に規定する家庭裁判所は、同項の訴えの全部又は一部が地方裁判所の管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、同項の規定にかかわらず、申立てにより又は職権で、当該訴えに係る訴訟の全部又は一部について自ら審理及び裁判をすることができる。  執行判決は、裁判の当否を調査しないでしなければならない。  第一項の訴えは、外国裁判所の判決が、確定したことが証明されないとき、又は民事訴訟法第百十八条各号(家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)第七十九条の二において準用する場合を含む。)に掲げる要件を具備しないときは、却下しなければならない。  執行判決においては、外国裁判所の判決による強制執行を許す旨を宣言しなければならない。

(強制執行の実施)
第二十五条 強制執行は、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施する。ただし、少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促により、これに表示された当事者に対し、又はその者のためにする強制執行は、その正本に基づいて実施する。

(執行文の付与)
第二十六条 執行文は、申立てにより、執行証書以外の債務名義については事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官が、執行証書についてはその原本を保存する公証人が付与する。
 執行文の付与は、債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる場合に、その旨を債務名義の正本の末尾に付記する方法により行う。

第二十七条 請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合においては、執行文は、債権者がその事実の到来したことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。
 債務名義に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文は、その者に対し、又はその者のために強制執行をすることができることが裁判所書記官若しくは公証人に明白であるとき、又は債権者がそのことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。

 執行文は、債務名義について次に掲げる事由のいずれかがあり、かつ、当該債務名義に基づく不動産の引渡し又は明渡しの強制執行をする前に当該不動産を占有する者を特定することを困難とする特別の事情がある場合において、債権者がこれらを証する文書を提出したときに限り、債務者を特定しないで、付与することができる。  債務名義が不動産の引渡し又は明渡しの請求権を表示したものであり、これを本案とする占有移転禁止の仮処分命令(民事保全法(平成元年法律第九十一号)第二十五条の二第一項に規定する占有移転禁止の仮処分命令をいう。)が執行され、かつ、同法第六十二条第一項の規定により当該不動産を占有する者に対して当該債務名義に基づく引渡し又は明渡しの強制執行をすることができるものであること。  債務名義が強制競売の手続(担保権の実行としての競売の手続を含む。以下この号において同じ。)における第八十三条第一項本文(第百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による命令(以下「引渡命令」という。)であり、当該強制競売の手続において当該引渡命令の引渡義務者に対し次のイからハまでのいずれかの保全処分及び公示保全処分(第五十五条第一項に規定する公示保全処分をいう。以下この項において同じ。)が執行され、かつ、第八十三条の二第一項(第百八十七条第五項又は第百八十八条において準用する場合を含む。)の規定により当該不動産を占有する者に対して当該引渡命令に基づく引渡しの強制執行をすることができるものであること。  第五十五条第一項第三号(第百八十八条において準用する場合を含む。)に掲げる保全処分及び公示保全処分  第七十七条第一項第三号(第百八十八条において準用する場合を含む。)に掲げる保全処分及び公示保全処分  第百八十七条第一項に規定する保全処分又は公示保全処分(第五十五条第一項第三号に掲げるものに限る。)  前項の執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行は、当該執行文の付与の日から四週間を経過する前であつて、当該強制執行において不動産の占有を解く際にその占有者を特定することができる場合に限り、することができる。  第三項の規定により付与された執行文については、前項の規定により当該執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行がされたときは、当該強制執行によつて当該不動産の占有を解かれた者が、債務者となる。

(執行文の再度付与等) 第二十八条 執行文は、債権の完全な弁済を得るため執行文の付された債務名義の正本が数通必要であるとき、又はこれが滅失したときに限り、更に付与することができる。  前項の規定は、少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促の正本を更に交付する場合について準用する。

(債務名義等の送達)
第二十九条 強制執行は、債務名義又は確定により債務名義となるべき裁判の正本又は謄本が、あらかじめ、又は同時に、債務者に送達されたときに限り、開始することができる。
第二十七条の規定により執行文が付与された場合においては、執行文及び同条の規定により債権者が提出した文書の謄本も、あらかじめ、又は同時に、送達されなければならない。

(期限の到来又は担保の提供に係る場合の強制執行)
第三十条 請求が確定期限の到来に係る場合においては、強制執行は、その期限の到来後に限り、開始することができる。

 担保を立てることを強制執行の実施の条件とする債務名義による強制執行は、債権者が担保を立てたことを証する文書を提出したときに限り、開始することができる。

(反対給付又は他の給付の不履行に係る場合の強制執行)
第三十一条 債務者の給付が反対給付と引換えにすべきものである場合においては、強制執行は、債権者が反対給付又はその提供のあつたことを証明したときに限り、開始することができる。

 債務者の給付が、他の給付について強制執行の目的を達することができない場合に、他の給付に代えてすべきものであるときは、強制執行は、債権者が他の給付について強制執行の目的を達することができなかつたことを証明したときに限り、開始することができる。

(執行文の付与等に関する異議の申立て) 第三十二条 執行文の付与の申立てに関する処分に対しては、裁判所書記官の処分にあつてはその裁判所書記官の所属する裁判所に、公証人の処分にあつてはその公証人の役場の所在地を管轄する地方裁判所に異議を申し立てることができる。  執行文の付与に対し、異議の申立てがあつたときは、裁判所は、異議についての裁判をするまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで強制執行の停止を命じ、又は担保を立てさせてその続行を命ずることができる。急迫の事情があるときは、裁判長も、これらの処分を命ずることができる。  第一項の規定による申立てについての裁判及び前項の規定による裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。  前項に規定する裁判に対しては、不服を申し立てることができない。  前各項の規定は、第二十八条第二項の規定による少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促の正本の交付について準用する。

(執行文付与の訴え) 第三十三条 第二十七条第一項又は第二項に規定する文書の提出をすることができないときは、債権者は、執行文(同条第三項の規定により付与されるものを除く。)の付与を求めるために、執行文付与の訴えを提起することができる。  前項の訴えは、次の各号に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める裁判所が管轄する。  第二十二条第一号から第三号まで、第六号又は第六号の二に掲げる債務名義並びに同条第七号に掲げる債務名義のうち次号、第一号の三及び第六号に掲げるもの以外のもの第一審裁判所 一の二 第二十二条第三号の二に掲げる債務名義並びに同条第七号に掲げる債務名義のうち損害賠償命令並びに損害賠償命令事件に関する手続における和解及び請求の認諾に係るもの損害賠償命令事件が係属していた地方裁判所 一の三 第二十二条第三号の三に掲げる債務名義並びに同条第七号に掲げる債務名義のうち届出債権支払命令並びに簡易確定手続における届出債権の認否及び和解に係るもの簡易確定手続が係属していた地方裁判所  第二十二条第四号に掲げる債務名義のうち次号に掲げるもの以外のもの仮執行の宣言を付した支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所(仮執行の宣言を付した支払督促に係る請求が簡易裁判所の管轄に属しないものであるときは、その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所)  第二十二条第四号に掲げる債務名義のうち民事訴訟法第百三十二条の十第一項本文の規定による支払督促の申立て又は同法第四百二条第一項に規定する方式により記載された書面をもつてされた支払督促の申立てによるもの当該支払督促の申立てについて同法第三百九十八条(同法第四百二条第二項において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があつたものとみなされる裁判所  第二十二条第四号の二に掲げる債務名義同号の処分をした裁判所書記官の所属する裁判所  第二十二条第五号に掲げる債務名義債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所(この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する裁判所)  第二十二条第七号に掲げる債務名義のうち和解若しくは調停(上級裁判所において成立した和解及び調停を除く。)又は労働審判に係るもの(第一号の二及び第一号の三に掲げるものを除く。)和解若しくは調停が成立した簡易裁判所、地方裁判所若しくは家庭裁判所(簡易裁判所において成立した和解又は調停に係る請求が簡易裁判所の管轄に属しないものであるときは、その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所)又は労働審判が行われた際に労働審判事件が係属していた地方裁判所

(執行文付与に対する異議の訴え) 第三十四条 第二十七条の規定により執行文が付与された場合において、債権者の証明すべき事実の到来したこと又は債務名義に表示された当事者以外の者に対し、若しくはその者のために強制執行をすることができることについて異議のある債務者は、その執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行の不許を求めるために、執行文付与に対する異議の訴えを提起することができる。  異議の事由が数個あるときは、債務者は、同時に、これを主張しなければならない。  前条第二項の規定は、第一項の訴えについて準用する。

(請求異議の訴え) 第三十五条 債務名義(第二十二条第二号又は第三号の二から第四号までに掲げる債務名義で確定前のものを除く。以下この項において同じ。)に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができる。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も、同様とする。  確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限る。  第三十三条第二項及び前条第二項の規定は、第一項の訴えについて準用する。

(執行文付与に対する異議の訴え等に係る執行停止の裁判) 第三十六条 執行文付与に対する異議の訴え又は請求異議の訴えの提起があつた場合において、異議のため主張した事情が法律上理由があるとみえ、かつ、事実上の点について疎明があつたときは、受訴裁判所は、申立てにより、終局判決において次条第一項の裁判をするまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで強制執行の停止を命じ、又はこれとともに、担保を立てさせて強制執行の続行を命じ、若しくは担保を立てさせて既にした執行処分の取消しを命ずることができる。急迫の事情があるときは、裁判長も、これらの処分を命ずることができる。  前項の申立てについての裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。  第一項に規定する事由がある場合において、急迫の事情があるときは、執行裁判所は、申立てにより、同項の規定による裁判の正本を提出すべき期間を定めて、同項に規定する処分を命ずることができる。この裁判は、執行文付与に対する異議の訴え又は請求異議の訴えの提起前においても、することができる。  前項の規定により定められた期間を経過したとき、又はその期間内に第一項の規定による裁判が執行裁判所若しくは執行官に提出されたときは、前項の裁判は、その効力を失う。  第一項又は第三項の申立てについての裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

(終局判決における執行停止の裁判等) 第三十七条 受訴裁判所は、執行文付与に対する異議の訴え又は請求異議の訴えについての終局判決において、前条第一項に規定する処分を命じ、又は既にした同項の規定による裁判を取り消し、変更し、若しくは認可することができる。この裁判については、仮執行の宣言をしなければならない。  前項の規定による裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

(第三者異議の訴え) 第三十八条 強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者は、債権者に対し、その強制執行の不許を求めるために、第三者異議の訴えを提起することができる。  前項に規定する第三者は、同項の訴えに併合して、債務者に対する強制執行の目的物についての訴えを提起することができる。  第一項の訴えは、執行裁判所が管轄する。  前二条の規定は、第一項の訴えに係る執行停止の裁判について準用する。

(強制執行の停止) 第三十九条 強制執行は、次に掲げる文書の提出があつたときは、停止しなければならない。  債務名義(執行証書を除く。)若しくは仮執行の宣言を取り消す旨又は強制執行を許さない旨を記載した執行力のある裁判の正本  債務名義に係る和解、認諾、調停又は労働審判の効力がないことを宣言する確定判決の正本  第二十二条第二号から第四号の二までに掲げる債務名義が訴えの取下げその他の事由により効力を失つたことを証する調書の正本その他の裁判所書記官の作成した文書  強制執行をしない旨又はその申立てを取り下げる旨を記載した裁判上の和解若しくは調停の調書の正本又は労働審判法(平成十六年法律第四十五号)第二十一条第四項の規定により裁判上の和解と同一の効力を有する労働審判の審判書若しくは同法第二十条第七項の調書の正本  強制執行を免れるための担保を立てたことを証する文書  強制執行の停止及び執行処分の取消しを命ずる旨を記載した裁判の正本  強制執行の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の正本  債権者が、債務名義の成立後に、弁済を受け、又は弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書  前項第八号に掲げる文書のうち弁済を受けた旨を記載した文書の提出による強制執行の停止は、四週間に限るものとする。  第一項第八号に掲げる文書のうち弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書の提出による強制執行の停止は、二回に限り、かつ、通じて六月を超えることができない。

(執行処分の取消し) 第四十条 前条第一項第一号から第六号までに掲げる文書が提出されたときは、執行裁判所又は執行官は、既にした執行処分をも取り消さなければならない。  第十二条の規定は、前項の規定により執行処分を取り消す場合については適用しない。

(債務者が死亡した場合の強制執行の続行) 第四十一条 強制執行は、その開始後に債務者が死亡した場合においても、続行することができる。  前項の場合において、債務者の相続人の存在又はその所在が明らかでないときは、執行裁判所は、申立てにより、相続財産又は相続人のために、特別代理人を選任することができる。  民事訴訟法第三十五条第二項及び第三項の規定は、前項の特別代理人について準用する。

(執行費用の負担) 第四十二条 強制執行の費用で必要なもの(以下「執行費用」という。)は、債務者の負担とする。  金銭の支払を目的とする債権についての強制執行にあつては、執行費用は、その執行手続において、債務名義を要しないで、同時に、取り立てることができる。  強制執行の基本となる債務名義(執行証書を除く。)を取り消す旨の裁判又は債務名義に係る和解、認諾、調停若しくは労働審判の効力がないことを宣言する判決が確定したときは、債権者は、支払を受けた執行費用に相当する金銭を債務者に返還しなければならない。  第一項の規定により債務者が負担すべき執行費用で第二項の規定により取り立てられたもの以外のもの及び前項の規定により債権者が返還すべき金銭の額は、申立てにより、執行裁判所の裁判所書記官が定める。  前項の申立てについての裁判所書記官の処分に対しては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内に、執行裁判所に異議を申し立てることができる。  執行裁判所は、第四項の規定による裁判所書記官の処分に対する異議の申立てを理由があると認める場合において、同項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定めるべきときは、自らその額を定めなければならない。  第五項の規定による異議の申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。  第四項の規定による裁判所書記官の処分は、確定しなければその効力を生じない。  民事訴訟法第七十四条第一項の規定は、第四項の規定による裁判所書記官の処分について準用する。この場合においては、第五項、第七項及び前項並びに同条第三項の規定を準用する。

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