商法(R5)
【問題文】
[商 法]
次の文章を読んで、後記の 及び に答えなさい。〔設問1〕 〔設問2〕
1.甲株式会社(以下「甲社」という。)は、会社法上の公開会社であるが、金融商品取引所にその
発行する株式を上場していない。甲社は、種類株式発行会社ではなく、発行可能株式総数は2万株
であり、発行済株式の総数は1万株(議決権の総数は1万個)である。甲社の取締役はA、B及び
Cの3名であり、代表取締役はAである。甲社の定款には、株主総会における議決権行使の代理人
の資格を甲社の株主に限る旨の定め及び取締役の員数を3名とする旨の定めがある。
2.乙株式会社(以下「乙社」という。)は、事業の成功により一代で巨額の財を築いたDがその資
産を管理するために設立した会社である。乙社の株式の全部を有するDは、乙社の唯一の取締役
として、乙社の管理運営を全て自ら行っている。乙社は唯一の従業員としてDの子であるEを雇
用しているが、Eの職務内容は乙社の決算期における書類の整理のみであり、それ以外に勤務の
実態はない。
3.乙社は、令和4年6月頃から引き続き甲社の株式1000株を有している。甲社の業績と経営方
針に不満を抱いているDは、乙社を代表して、甲社の代表取締役であるAに対し、甲社の経営に
関する意見を繰り返し述べてきたが、Aは、乙社が甲社の経営に介入してくることを快く思って
おらず、乙社の意見を全て無視してきた。
4.Dは、自らの意見を甲社の経営に反映させるために、令和5年4月10日、乙社を代表して、甲
社の代表取締役であるAに対し、同年6月に開催予定の甲社の定時株主総会(以下「本件総会」
という。)において、本件総会の終結により取締役の任期が満了するBを取締役に再任するので
はなく、乙社が推薦するFを新たに取締役に選任する旨の議案の要領を本件総会の招集通知に記
載することを請求した。
ところが、Aは、乙社が甲社の経営に対する介入を強めることは甲社の利益にならないと考え、
乙社の提案を無視することとし、これを他の取締役らに伝えることもしなかった。
5.甲社の代表取締役であるAは、令和5年6月12日、株主に対し、同月29日に開催予定の本件
総会の招集通知(以下「本件招集通知」という。)を発した。本件招集通知には、「取締役1名
選任の件」として、Bを取締役に選任する旨の議案が記載されていたが、乙社が提案したFを取
締役に選任する旨の議案の要領は記載されていなかった。
Dは、乙社として、本件総会の議場で、Fを取締役に選任する旨の動議を提出し、議案の説明を
すべきだと考えたが、スケジュールの都合上、自らが乙社を代表して本件総会に出席することはで
きなかったため、乙社の代理人としてEを本件総会に出席させ、動議を提出させることにした。な
お、Eは、甲社の株主ではない。
6.令和5年6月29日、本件総会が開催された。Eは、本件総会の受付において、乙社の委任状を
提示して、「私は乙社の従業員である。乙社を代理して本件総会に出席したい。」と述べたが、
受付近辺に控えていたAから「甲社の定款の定めにより、株主以外の者による代理出席は認めら
れない。」として出席を拒絶され、本件総会に出席することができなかった。なお、Aは、上記
2の事実を知っていた。
本件総会には、甲社の総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の
過半数の賛成により、Bを取締役に選任する旨の議案が可決された(以下「本件決議」とい
う。)。
〔設問1〕
乙社は、本件決議の取消しを求める訴えを適法に提起した。この訴えに関して、本件決議の効力を争うために乙社の立場において考えられる主張及びその主張の当否について、論じなさい。
7.乙社は、本件総会の後も、甲社の他の株主から株式を買い受けることにより保有株式数を増や
し、令和5年7月31日の時点で、甲社の株式を2400株有するに至っていた。また、Dは、日
頃から、乙社を代表して、甲社の代表取締役であるAに対し、「令和6年6月に開催予定の甲社の
定時株主総会では、乙社は、A及びCの取締役への再任に反対し、対立候補を擁立するつもりだ。
また、他の株主にも乙社の提案への賛成を呼び掛けるつもりだ。」と述べていた。
8.令和5年8月1日に開催された取締役会において、Aは「乙社が持株比率を増やし続けるのを放
置するわけにはいかない。現在、我が社に特段の資金需要があるわけではないが、長年の取引先で
ある丙株式会社との資本関係を強化し、経営の安定化を図るべきではないか。実は、既に丙株式会
社との間で内々に話をつけてある。」と提案したところ、B及びCもAの提案に賛同したため、取
締役全員の賛成により、丙株式会社(以下「丙社」という。)に対する第三者割当てによって新た
に5000株の株式を発行すること(以下「本件発行」という。)、払込金額は1株当たり10万
円とすること、払込期日は同月21日とすること等が決定された。
なお、本件発行の後に丙社が有することとなる甲社の株式の数は、6000株である。また、本
件発行の当時における甲社の事業及び財産の状況に鑑みると、本件発行における公正な払込金額は
1株当たり20万円であった。
9.甲社は、乙社が本件発行の計画を事前に察知するのを防ぐために、本件発行について、株主に対
する通知及び公告を行わなかった。丙社は、令和5年8月21日、本件発行に係る払込みを完了
し、これにより本件発行の効力が発生した。
〔設問2〕
上記8及び9の事実を知ったDは、乙社を代表して、本件発行の無効の訴えを適法に提起した。
この訴えに関して、本件発行の効力を争うために乙社の立場において考えられる主張及びその主張
の当否について、論じなさい。なお、上記6の本件決議の効力に関する主張については、論じなく
てよい。
【メモ】
●自己評価:D
・訴訟830付近の中で各枠組み不慣れ。
・各論証が甘い。
・数値を落とした(消込の励行)。
【答案例】
第1 設問1
831条1項1号:手続法令違反
1.305条1項:4月10日ゆえ8週間前。令和4年6月頃ゆえ6か月〇。
2.310条1項前段
(1)論点:一般
(2)あ:公開会社だが、必要性・合理性。制限〇(本問主張☓)
もっとも、法人では代表者限定は実務上困難と主張
(1)論点:従業員
(2)あ:確かに、しかし、息子・尚更。
第2 設問2
830条2項「無効」明文なし
1.有利発行
(1)論点
(2)あ:有効
2.不公正発行
(1)論点
(2)あ:無効(通知(201条3項)・公告(同4項)なし)
以上