行政法(R3)

【問題文】

 Aは,B県知事から,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)第14条の4第1項に基づき,特別管理産業廃棄物に該当するポリ塩化ビフェニル廃棄物(以下「PCB廃棄物」という。)について収集運搬業(積替え・保管を除く。)の許可を受けている特別管理産業廃棄物収集運搬業者(以下「収集運搬業者」という。)である。PCB廃棄物の収集運搬業においては,積替え・保管が認められると,事業者から収集したPCB廃棄物が収納された容器を運搬車から一度下ろし,一時的に積替え・保管施設内で保管し,それを集積した後,まとめて別の大型運搬車で処理施設まで運搬することができるので効率的な輸送が可能となる。しかし,Aは,積替え・保管ができないため,事業者から排出されたPCB廃棄物の収集量が少なく運搬車の積載量に空きがあっても,遠隔地にある処理施設までそのまま運搬しなければならず,輸送効率がかなり悪かった。そこで,Aは,自らが積替え・保管施設を建設してPCB廃棄物の積替え・保管を含めた収集運搬業を行うことで輸送効率を上げようと考えた。同時に,Aは,Aが建設する積替え・保管施設においては,他の収集運搬業者によるPCB廃棄物の搬入・搬出(以下「他者搬入・搬出」という。)も行えるようにすることで事業をより効率化しようと考えた。Aは,B県担当者に対し,前記積替え・保管施設の建設に関し,他者搬入・搬出も目的としていることを明確に伝えた上でB県の関係する要綱等に従って複数回にわたり事前協議を行い,B県内のAの所有地に高額な費用を投じ,各種規制に適合する相当規模の積替え・保管施設を設置した。B県知事は,以上の事前協議事項についてB県担当課による審査を経て,Aに対し,適当と認める旨の協議終了通知を送付した。その後,Aは,令和3年3月1日,PCB廃棄物の積替え・保管を含めた収集運搬業を行うことができるように,法第14条の5第1項による事業範囲の変更許可の申請(以下「本件申請」という。)をした。なお,本件申請に係る書類には,他者搬入・搬出に関する記載は必要とされていなかった。
 B県知事は,令和3年6月21日,本件申請に係る変更許可(以下「本件許可」という。)をしたが,「積替え・保管施設への搬入は,自ら行うこと。また,当該施設からの搬出も,自ら行うこと。」という条件(以下「本件条件」という。)を付した。このような内容の条件を付した背景には,他者搬入・搬出をしていた別の収集運搬業者の積替え・保管施設において,保管量の増加と保管期間の長期化によりPCB廃棄物等の飛散,流出,異物混入などの不適正事例が発覚し,社会問題化していたことがあった。そこで,B県知事は,特別管理産業廃棄物の性状等を踏まえ,他者搬入・搬出によって収集・運搬に関する責任の所在が不明確となること,廃棄物の飛散,流出,異物混入などのおそれがあること等を考慮して,本件申請直前に従来の運用を変更することとし,本件許可に当たり,B県で初めて本件条件を付することになった。
 本件条件は法第14条の5第2項及び第14条の4第11項に基づくものであった。しかし,Aは,近隣の県では本件条件のような内容の条件は付されていないのに,B県においてのみ本件条件が付された結果,当初予定していた事業の効率化が著しく阻害されると考えている。また,Aは,本件条件が付されることについて,事前連絡を受けておらず,事前協議が無に帰してしまい裏切られたとの思いから,強い不満を持っている。
 以上を前提として,以下の設問に答えなさい。
 なお,法及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(以下「法施行規則」という。)の抜粋を【資料】として掲げるので,適宜参照しなさい。

〔設問1〕
本件条件に不満を持つAは,どのような訴訟を提起すべきか。まず,本件条件の法的性質を明らかにし,次に,行政事件訴訟法第3条第2項に定める取消訴訟について,考えられる取消しの対象を2つ挙げ,それぞれの取消判決の効力を踏まえて検討しなさい。なお,解答に当たっては,本件許可が処分に当たることを前提にしなさい。また,取消訴訟以外の訴訟及び仮の救済について検討する必要はない。

〔設問2〕
Aは,取消訴訟において,本件条件の違法性についてどのような主張をすべきか。想定されるB県の反論を踏まえて検討しなさい。なお,本件申請の内容は,法施行規則第10条の13等の各種基準に適合していることを前提にしなさい。また,行政手続法上の問題について検討する必要はない。

【資料】
〇 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)(抜粋)
(目的)
第1条 この法律は,廃棄物の排出を抑制し,及び廃棄物の適正な分別,保管,収集,運搬,再生,処分等の処理をし,並びに生活環境を清潔にすることにより,生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。
(定義)
第2条 1~4 (略)
5 この法律において「特別管理産業廃棄物」とは,産業廃棄物のうち,爆発性,毒性,感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するもの(中略)をいう。
6 (略)
(国及び地方公共団体の責務)
第4条 (略)
2 都道府県は,(中略)当該都道府県の区域内における産業廃棄物の状況をはあくし,産業廃棄物の適正な処理が行なわれるように必要な措置を講ずることに努めなければならない。
3~4 (略)
(特別管理産業廃棄物処理業)
第14条の4 特別管理産業廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は,当該業を行おうと
する区域(運搬のみを業として行う場合にあつては,特別管理産業廃棄物の積卸しを行う区域に
限る。)を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。(以下略)
2~4 (略)
5 都道府県知事は,第1項の許可の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ,同項の許可をしてはならない。
一 その事業の用に供する施設及び申請者の能力がその事業を的確に,かつ,継続して行うに足りるものとして環境省令で定める基準に適合するものであること。
二 (略)
6~10 (略)
11 第1項(中略)の許可には,生活環境の保全上必要な条件を付することができる。
12~14 (略)
15 特別管理産業廃棄物収集運搬業者(中略)以外の者は,特別管理産業廃棄物の収集又は運搬を(中略)受託してはならない。
16~18 (略)
(変更の許可等)
第14条の5 特別管理産業廃棄物収集運搬業者(中略)は,その特別管理産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分の事業の範囲を変更しようとするときは,都道府県知事の許可を受けなければならない。(以下略)
2 前条第5項及び第11項の規定は,収集又は運搬の事業の範囲の変更に係る前項の許可について(中略)準用する。
3~5 (略)

〇 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和46年厚生省令第35号)(抜粋)
(特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可の基準)
第10条の13 法第14条の4第5項第1号(法第14条の5第2項において準用する場合を含む。)の規定による環境省令で定める基準は,次のとおりとする。
一 施設に係る基準
イ 特別管理産業廃棄物が,飛散し,及び流出し,並びに悪臭が漏れるおそれのない運搬車,運搬船,運搬容器その他の運搬施設を有すること。
ロ~ホ (略)
ヘ 積替施設を有する場合には,特別管理産業廃棄物が飛散し,流出し,及び地下に浸透し,並びに悪臭が発散しないよう必要な措置を講じ,かつ,特別管理産業廃棄物に他の物が混入するおそれのないように仕切り等が設けられている施設であること。
二 申請者の能力に係る基準
イ 特別管理産業廃棄物の収集又は運搬を的確に行うに足りる知識及び技能を有すること。
ロ (略)
ハ 特別管理産業廃棄物の収集又は運搬を的確に,かつ,継続して行うに足りる経理的基礎を有すること。

【メモ】

●自己評価:F⇒実際:C(前半で基礎を記載し差が付いた模様。)
●下記は省略する。おそらく通用しないので。むしろその旨を指摘し理解・バランスを示す材料か。
:(3)平等原則違反(●不要かも)・Aだけが・・・。反論:B県内では他の人も。・主張:環境行政は県をまたぐため、他の県も含めて。
●比例原則について、より緩やかな行政指導をすべきだった、との主張もありえた、とする考え方もあるようだが。賛成できない。事実行為であり、要求することまでは。他で事実行為に過ぎない、等の議論をしながら。以上必要性。また、その点については、信義則の争点でカバーできるし、より適合的であるので。以上許容性。
●本問において、申請型義務付け訴訟の可能性(その場合附款に関する論点消滅)を示唆する考え方もあるようだが。賛成できない。取消訴訟で足りるので。単なる学術的話ではないかと。

【答案例】

第1 設問1
1.附款の法的性質
負担である。附款である。附款は、行政処分の従たる定めである。●認識:前提としてシッカリ認定する。
附款を付することで、行政処分をするかしないかの二者択一的処分ではなく、きめ細かい行政活動が可能となるため、しばしば活用されるものである。
2.(1)Aとしては、本件条件を含む本件許可処分の全体について、取消訴訟を提起することが考えられる。
しかし、それが認められたとしても、本件許可自体が消滅するため(形成力33条1項)、拘束力(行訴法33条1項)に基づく再度の処分(行訴法33条2項)がなされるが、時間がかかり、他の制約があるかもしれず。
(2)そこで、Aとしては、本件条件のみを対象として、取消訴訟を提起することが出来るか。記載不要であり、不可分一体ではないのでOK。●検討:ここで明文あるのでOK、と書くべきだった。
3.以上より、Aとしては、本件附款の取消し訴訟を提起すべきである。●6か月以内も書く?
第2 設問2 ●補足:まず、附款を付することは明文で認められている。と。その上で、内容について裁量が。と。
1.①環境行政においては、様々な社会的条件を多面的に考慮し、専門的・技術的判断をする必要がある。「保全上必要な条件」抽象的文言。
また、②「できる」との文言が使用されている(本14条の4第11項)。
よって、B県知事には、本件条件に付いて、効果裁量が認められる。
もっとも、●行政裁量・・・
2.
(1)比例原則違反(●他事考慮では?)
・法の目的に照らし、規則10条の13の要件を充足するAにつき、他の問題は・・・。支障が大きい。
・反論:責任の所在が不明確に
・主張:法14条の5第1項に基準なし(同2項、施行規則10条の13各号)
(2)信義則(民法1条2項)
・高額な費用を投入
・反論:運用変更に過ぎず制約なし
・主張:政策の継続を前提として高額の費用を投入した場合、信頼保護されるべき。●例の判例でOK
3.よって、社会通念上著しく合理性を欠き、裁量権の逸脱・濫用として違法となる。●・・・
以上

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