会社法
【留意点・知識】
●条文名称:「会社法」を一度記載し、後は省略。その他の法律名は適宜。
●仮処分まで触れる。
●「キーワード+条文」セットで記憶
●訴訟:原告(担当する者)・被告・管轄・提訴期間・効力等
●民法:121条の2第1項は良く出て来る。
●株式買取請求権は116にもある。182条の4にもある。
●会社が被告取締役に補助参加する場合、決定・代表機関は代表取締役等(前提として、監査役等の同意(849条3項)があるので。)。●注意:会社自身の訴え提起と区別
●定義:「親会社」(2条4号)
●定義:「公開会社」(2条5号)
●定義:「大会社」(2条6号イ)
●定義:「譲渡制限株式」(2条17号、107条1項1号、同条2項1号)
●代理商(16条~20条)
●剰余金配当請求権(105条1項1号(・453条))、残余財産分配請求権(105条1項2号)、株主総会議決権(105条1項3号)
●基準日(124条)
●通知先(126条1項)
●名義書換(133条1項)
●キャッシュアウト制度(179条1項本文)
●株式併合の説明義務(180条4項)●司法平成29年●認識:現場思考
●株式併合の反対株主の株式買取請求権(182条の4第1項)●司法平成29年(名義書き換えを行なっていて行使できなかった場合は?)●認識:現場思考
●同価格決定の申立て(182条の5第1項、2項)●同上
●株式の分割(183・184条)
●支配株主の異動(206条の2)
●取締役会による新株発行(授権資本制度)(201条1項、199条2項)●確認
●有利発行の場合の特別決議(201条1項、199条2項・3項、309条2項5号)
●新株発行の通知・公告(201条3項・4項)
●株主となる時期(209条1項)
●併合端数の処理(235条、234条2項ないし5項)●司法平成29年●認識:現場思考(無理系)
●取締役会による株主総会の招集(298条1項・4項)
●株主総会の招集通知(299条1項)●公開会社では「二週間…前」。●株主名簿上の株主の住所宛にすれば足りる(126条1項)。
●株主提案権(303条乃至305条)
●株主総会の特別決議(309条2項)
●議長の権限(315条)
●公開会社は取締役会設置会社である(327条1項1号)。その場合、株主総会の招集は取締役会決議による(298条4項)。
●「役員」(329条1項)
●取締役等の選任(329条)
●取締役等の解任(339条)
●取締役(348条以下)●役会ない場合
●包括的代表権(349条4項)
●取締役の報告義務(357条)
●検査役選任請求権(358条)
●株主による取締役の行為の差止め(360条3項・1項。監査役設置会社の場合)
●取締役の監督義務(362条2項2号)
●事後報告(365条2項)
●取締役による取締役会招集(366条)
●株主による取締役会招集請求(367条1項)
●取締役会の招集手続(368条1項)●趣旨:取締役会での議論に参加する機会の保障●認識:準備の時間、ではない。その場で議論という例の話から。●補足:問題文次第で、目的記載不要。あらゆる問題を討議。と書く。株主総会(298条1項2号、299条1項)と比較するとベター。●司法平成28年
●取締役会の決議要件(369条1項)
●決議賛成推定(369条5項)
●取締役会議事録等(371条2項、4項)
●株主の議事録閲覧等請求権(371条2項)
●監査役の監査は適法性監査のみ(381条1項前段)
●監査役の報告要求憲、調査権(381条2項)●976条5号参照
●監査役の取締役(会)に対する報告義務(382条)
●監査役の取締役会出席義務・意見陳述義務(383条1項)
●監査役による取締役会招集請求権・招集権(383条2項・3項)
●監査役による株主総会に対する報告義務(384条)
●監査役による取締役の行為の差止め(385条)
●計算書類(442条3項)
●清算人の解任(479条)●認識:あまり
●株式交換・株式移転無効の訴え
●株式会社の解散の訴え(833条1項1号):「会社が業務の執行のおいて著しく困難な状況」とは、株主・取締役が等分に対立し、業務の停滞打破や取締役の改選決議が困難な場合、「やむを得ない事由があるとき」とは、必要な意思決定や業務継続が不可能となり、会社の存続自体が無意味になるほどに達し、別の公正かつ相当な方法で状況打破できない場合をいうと解される。(東京地判平成28年2月1日)
●多重代表訴訟(847条の3)
●取締役等の解任の訴え(854条)
●会社解散の訴え
●商号変更登記未了の間に新商号でした法律行為:908条1項前段の問題ではない(判例)。対抗できないのは、(商号変更の事実のみであり)会社の存在や同一性ではない。本質は、それらが新商号で表現されているか否かの法律行為の解釈問題。
●預合い(965条)
●合併等(748条以下)のポイント(条文を探せれば終わり):
①目次から凡そのあたりをつける。②(実体に対する)手続条項(775条以下)の問題が多いはず。③合併をシッカリやり、後は応用。④新設については、合併は勿論、その他についても出難いか(単なる内部的な組織変更的側面があるため)。
会社法(総則)
第二章 会社の商号
(商号)
第六条 会社は、その名称を商号とする。
2 会社は、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従い、それぞれその商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない。
3 会社は、その商号中に、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。
(会社と誤認させる名称等の使用の禁止)
第七条 会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。
第八条 何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。
2 前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある会社は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
(自己の商号の使用を他人に許諾した会社の責任)
第九条 自己の商号を使用して事業又は営業を行うことを他人に許諾した会社は、当該会社が当該事業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。
商号(8条)
●問題:「商号」同一・類似
●目的:停止・予防請求(8条2項)
●問題:「不正の目的」(8条1項)
●趣旨:他の会社の営業と誤認させて、営業上の利益を上げることを禁止する。
●結論:一般人をして他の会社の営業であると誤信させる目的をいう。
●参考:商法12条
●確認:他の要件「使用」・「利益」(廃業後等も)・「おそれ」も適宜軽くあてはめる。
●参考:「商人」(商法12条)・「会社」については、直前まで該当していたが廃業した場合等、適宜類推適用の余地あり。
名板貸(9条)
●趣旨:他人が事業(・営業)主であるとの外観作出者に責任を負担させ、第三者の信頼を保護する。
●問題:「許諾」には黙示のものも含まれるか。
●結論:含まれる。
●理由:趣旨から。
●問題:「誤認」とは?
●理由:趣旨。また、重過失は悪意と同視される。
●結論:善意・無重過失による信頼(判例)
●補足:単なる放置ではなく、作為義務違反のレベルまで。例えば、元従業員が、等。
●問題:「当該事業」は、「許諾した会社」と同種の事業(・営業)である必要があるか?
●結論:特段の事情なき限り、必要(判例)。
●理由:趣旨から。
●補足:特段の事情として、現金屋事件(最判S46.6.13)では、店舗・商号・看板・印章・小切手帳等が同じで、以前の使用人が営業主体となっていた。その他、タレント・ショップ(業種は何でもあり)等もありえる。
●補足:手形振出のみの許諾には適用なし。文言から。
●問題:不法行為債務にも適用あるか?
●結論:取引的不法行為の場合は適用あるが、事実的不法行為の場合には適用なし(判例)。
●理由:趣旨
●展開:民法709・715へ
●問題:「商号」の範囲
●結論:一般人が事業(・営業)主体を誤認するなら、同一でなくとも可。
●理由:趣旨から。
●参考:商号ではないが、芸能人の芸名等にも類推可能。
●参考:商法14条
●参考:「商人」(商法14条)・「会社」については、直前まで該当していたが廃業した場合・そもそも商人ではない者(芸能人)等、適宜類推適用の余地あり。
●判例:インコ事件:3要件(趣旨から)。類推可。
●確認:「取引」も一言は当てはめる。
第三章 会社の使用人等
第一節 会社の使用人
(支配人)
第十条 会社(外国会社を含む。以下この編において同じ。)は、支配人を選任し、その本店又は支店において、その事業を行わせることができる。
(支配人の代理権)
第十一条 支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
2 支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。
3 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
(支配人の競業の禁止)
第十二条 支配人は、会社の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。
一 自ら営業を行うこと。
二 自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。
三 他の会社又は商人(会社を除く。第二十四条において同じ。)の使用人となること。
四 他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
2 支配人が前項の規定に違反して同項第二号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定する。
(表見支配人)
第十三条 会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該本店又は支店の事業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。
支配人
●条文:11条1項、11条3項
●定義:支配人とは、営業の主任者として選任された者(形式説)
●理由:11条3項の適用場面がなくならないよう。
●参考:実質説(包括的代理権基準・通説):その事業に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする包括的権限を与えられた商業使用人(他の商業使用人同様、代理権の広狭を基準とすべきゆえ。)
●条文:13条(表見支配人)
●趣旨:支配人としての外観に対する相手方の信頼保護
●問題:「悪意」
●結論:重過失を含む。
●理由:悪意と同視される。
●問題:事業所としての実質(例:人・組織・金)
●結論:必要(判例)
●理由:趣旨から。「みなす」ことにより信頼を保護する前提として。
●補足:13条は908条1項の例外規定ゆえ優先的と解される。
●参考:商法24条
第四章 事業の譲渡をした場合の競業の禁止等
(譲渡会社の競業の禁止)
第二十一条 事業を譲渡した会社(以下この章において「譲渡会社」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(特別区を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区又は総合区。以下この項において同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。 2 譲渡会社が同一の事業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その事業を譲渡した日から三十年の期間内に限り、その効力を有する。 3 前二項の規定にかかわらず、譲渡会社は、不正の競争の目的をもって同一の事業を行ってはならない。
(譲渡会社の商号を使用した譲受会社の責任等)
第二十二条 事業を譲り受けた会社(以下この章において「譲受会社」という。)が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う。
2 前項の規定は、事業を譲り受けた後、遅滞なく、譲受会社がその本店の所在地において譲渡会社の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用しない。事業を譲り受けた後、遅滞なく、譲受会社及び譲渡会社から第三者に対しその旨の通知をした場合において、その通知を受けた第三者についても、同様とする。
3 譲受会社が第一項の規定により譲渡会社の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡会社の責任は、事業を譲渡した日後二年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。
4 第一項に規定する場合において、譲渡会社の事業によって生じた債権について、譲受会社にした弁済は、弁済者が善意でかつ重大な過失がないときは、その効力を有する。
(譲受会社による債務の引受け)
第二十三条 譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用しない場合においても、譲渡会社の事業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡会社の債権者は、その譲受会社に対して弁済の請求をすることができる。 2 譲受会社が前項の規定により譲渡会社の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡会社の責任は、同項の広告があった日後二年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。
(詐害事業譲渡に係る譲受会社に対する債務の履行の請求)
第二十三条の二 譲渡会社が譲受会社に承継されない債務の債権者(以下この条において「残存債権者」という。)を害することを知って事業を譲渡した場合には、残存債権者は、その譲受会社に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。ただし、その譲受会社が事業の譲渡の効力が生じた時において残存債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。 2 譲受会社が前項の規定により同項の債務を履行する責任を負う場合には、当該責任は、譲渡会社が残存債権者を害することを知って事業を譲渡したことを知った時から二年以内に請求又は請求の予告をしない残存債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。事業の譲渡の効力が生じた日から十年を経過したときも、同様とする。 3 譲渡会社について破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定があったときは、残存債権者は、譲受会社に対して第一項の規定による請求をする権利を行使することができない。
(商人との間での事業の譲渡又は譲受け)
第二十四条 会社が商人に対してその事業を譲渡した場合には、当該会社を商法第十六条第一項に規定する譲渡人とみなして、同法第十七条から第十八条の二までの規定を適用する。この場合において、同条第三項中「又は再生手続開始の決定」とあるのは、「、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定」とする。 2 会社が商人の営業を譲り受けた場合には、当該商人を譲渡会社とみなして、前三条の規定を適用する。この場合において、前条第三項中「、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定」とあるのは、「又は再生手続開始の決定」とする。
事業譲渡
●条文:21条、22条・23条・23条の2第1項本文・但書、24条
●趣旨:商号続用による事業主体の同一性や債務引受に関する第三者の信頼保護
●問題:類似商号
●結論:適用肯定
●理由:趣旨から。
●問題:現物出資
●結論:適用肯定
●結論:趣旨から。法的手法が異なるのみ。
●問題:「名称」の続用
●結論:特段の事情がない限り、類推適用
●理由:名称は事業主体の表示としても用いられることが多い。趣旨が妥当する。
●補足:あてはめで、事業主体として表示されていた点を事実認定
●判例:最判H20.6.10
●問題:会社分割
●結論:適用肯定
●理由:趣旨から。
●確認:以上、類推?●参考:予備平成27年。司法令和4年。
●問題:「広告」(23条1項)
●具体例:挨拶状等
●補足:「 事業によって生じた債務」のあてはめもする。
●参考:商法(16条、17条・18条・18条の2、-)
設立
●条文
●現物出資(28条1号):趣旨:出資財産の過大評価による会社財産棄損・他の引受人との不均衡の予防。発起人のみ可(34条1項、63条1項参照)。不足額支払義務(52条1項)の履行確保の便宜から。
失権手続(36条)により出資財産の「最低額」を下回る場合、又は発起人が一株も取得しなくなる場合、設立無効事由となる。
●財産引受(同2号)
●事後設立(467条1項5号):金額・2年以内のあてはめありうる。
●一人会社(26条1項、471条、127条(潜在的社団性))
法人格否認の法理
●定義:特定の事案に限って、会社と社員を同一視
●趣旨:正義・公平(民法1条3項)
●要件:形骸化・濫用
発起人の権限範囲
●前提:登記により成立し、法人となる(49条、3条)。
●前提:定款に記載があれば、会社に効果帰属する(財産引受につき28条2号)。●検討:実質論として、下記問題は存在するのでは?
●問題:定款に記載がない場合
●前提:設立中の会社は、、設立登記を経て会社となる予定の存在(25条以下参照)であり、設立後の会社と実質的に同一と解される。
●問題:よって、発起人の行為の効果は、特段の手続なく設立後の会社にも帰属しうることから、その権限範囲が問題となる。
●理由:この点、成立後の会社の財産的基礎を保護する必要があるため、設立中の会社の実質的権利能力は設立に法律上・経済上必要な行為に限られると解される。
●結論:従って、その執行機関たる発起人の権限の範囲も同様と解される。
●展開:よって、開業準備行為については、原則として、認められない。
●認識:事業活動との境界が曖昧な開業準備行為を原則として認めると、「事業活動なので無効」とされることで取引の安全を害する(実質論)、という判断がある。
●検討:発起設立と募集設立とでは異なるのでは?前者は広く。後者は狭く。など。
●参考:「目的の範囲」(34条)の制限は、法人たる会社にも適用される。もっとも、取引安全のため、目的達成に客観的に必要な行為も「範囲」に含まれる。●認識:事業活動自体の話(設立要件的行為でもなければ、開業準備行為でもない)
(定款の記載又は記録事項)
第二十七条 株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店の所在地
四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
五 発起人の氏名又は名称及び住所
第二十八条 株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第二十六条第一項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。
一 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第三十二条第一項第一号において同じ。)
二 株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
三 株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
四 株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)
財産引受(28条2号)
●前提:発起人の権限範囲(開業準備行為は原則として認められない。)
●認定:財産引受該当性(事後設立についても同様)
●理由:①設立直後の事業活動開始上の必要性から、厳格な要件の下、例外的に認められた。②設立中の会社の権利能力の範囲外であり「効力を生じない」(28条柱書)。
●帰結:定款に記載のない財産引受は絶対的に無効。相手方からの履行請求は認められない。
●参考:相手方からの無効主張も可能(判例。争いあるも。)
●参考:定款に記載があれば有効(28条柱書反対解釈)。
●帰結:会社からの追認(民法116条類推)も認められず(判例)。●理由:そもそも権利能力外●参考:反対説に対しては、可能とすると、誰も手続踏まなくなる、との批判あり。
●展開:もっとも、(財産引受の潜脱防止の趣旨からの)事後設立(309条2項11号・467条1項5号本文)としての株主総会決議を経て、有効に契約を締結することは可能(●最判昭S.28.12.3)。又は重要な業務執行(362条4項1号)として取締役会決議を経て、も。
●認識:後に価格UPしたら最初の方が良かった、となる、との非難あり。反論としては、下がるかも知れなかったし、これから下がるかも。でOK。
●検討:相手側からも、53条2項等が可能。
●参照:33条、96条
開業準備行為(財産引受以外(明文なし))
●結論:財産引受以外なので、無効。●検討:定款に記載があれば類推可能(28条2号類推)という説も。●結論:否定(記載趣旨が不明確)
●問題:相手方から発起人・会社(別理論)に対する請求
●展開:「他人」(民法117条)は存在しない。●指摘MUST
●問題:類推適用(最判S.33.10.24)。趣旨が妥当するので。●指摘MUST
●理由:相手方は「知っていた」(民法117条2項1号類推)
●結論:責任なし。
●展開:もっとも、(1)会社に対しては、不当利得返還請求(民法703条、704条)、または(2)事務管理による有益費償還請求(697条、702条1項)の余地あり。また、(2)発起人に対して、会社法53条2項、または民法709条(但し722条2項)の余地あり。
●検討:事案によっては、民法117条2号但書で救済される場合も。
●検討:会社からも何らかの主張可能か。事後設立は無理だが。類推?
見せ金
●問題:・・・しているが、かかる「払い込み」(34条1項本文)も有効か。
●形式:確かに、預合い(965条)と異なり、形式上は、現実の資金移動がある。
●理由:しかし、会社に資金が残らない点、実質的には払い込みなしといえる。他方、発起人の内心の問題であり、基準が不明確である。
●要件:そこで、①会社成立後、借入金返済までの期間の長短、②会社資金としての運用の有無、③借入金返済による会社資本への影響等を考慮し、当初より仕組まれた仮装払込みといえるのであれば、「払い込み」にあたらず無効と解される(判例)。●補足:③は発起設立につきより妥当。
●展開:もっとも、仮装払込みに係る責任(102条の2、103条2項、(52条の2第1項・3項))
●結論:そこで、義務履行あれば、払込みは有効。。払込みの無効により「…最低額」(27条4号)に達しない場合、設立無効事由(828条1項1号)
●参考:その他に損害があれば、発起人等の対会社(53条1項)、対第三者(53条2項)責任追及がありうる。
●参考:預合いによる払込みの効力(論点):無効でOK。理由:実質なし。刑事罰(965条)。なお、発起設立の場合も(会社法64条2項参照)、有効と解する必要はなく、相対的無効乃至信義則(1条2項)等によれば良いだけ。
●前提:預合いは、払込取扱機関から借入れをし、その返済まで預金を引き出さない約束。実質的には払込みがない。よって、無効。
●参考:募集設立の場合、銀行(64条2項類推)。但し、事情を知らないのが通常であり、常には趣旨(禁反言)妥当しない。よって、悪意・重過失の場合のみ。
●参考:発起設立の場合は、上記③は大きい。それだけ、なので。
●参考:現物出資の仮装の場合の責任もある(52条の2第1項2号)。
●注意:払い込みの無効、失権(36条3項、63条3項参照)、及び設立の無効の3つは区別する。
●参考:会社財産を危うくする罪(963条1項)、業務上横領罪(刑法253条)、公正証書原本不実記載罪(同157条1項)等
設立費用に関する債務の帰属
●問題:定款に記載・記録された額を超過する未払設立費用の負担者●認識:「設立費用」なので、開業準備行為(財産引受等)ですらない。会社負担が自然。
●理由:定款の記載等の内部事情によることは、第三者の立場が法的不安定になる。
●結論:会社が負担。あとは判例(●確認)、即ち、内部的には、定款に記載・記録された額以内は会社負担。超過部分は発起人負担。
●通説:設立事務所の賃料、設立事務員の給与は、設立費用(28条4号)に含まれる(通説)。
●判例:大判昭和2年7月4日
●私見:会社・発起人の連帯債務。内部関係は判例に沿って清算。理由:第三者保護、公平
●設立に関する責任(発起設立)
第八節 発起人等の責任等
(出資された財産等の価額が不足する場合の責任)
第五十二条 株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が当該現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額(定款の変更があった場合にあっては、変更後の価額)に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該株式会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負う。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、発起人(第二十八条第一号の財産を給付した者又は同条第二号の財産の譲渡人を除く。第二号において同じ。)及び設立時取締役は、現物出資財産等について同項の義務を負わない。
一 第二十八条第一号又は第二号に掲げる事項について第三十三条第二項の検査役の調査を経た場合
二 当該発起人又は設立時取締役がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合
3 第一項に規定する場合には、第三十三条第十項第三号に規定する証明をした者(以下この項において「証明者」という。)は、第一項の義務を負う者と連帯して、同項の不足額を支払う義務を負う。ただし、当該証明者が当該証明をするについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
(出資の履行を仮装した場合の責任等)
第五十二条の二 発起人は、次の各号に掲げる場合には、株式会社に対し、当該各号に定める行為をする義務を負う。
一 第三十四条第一項の規定による払込みを仮装した場合 払込みを仮装した出資に係る金銭の全額の支払
二 第三十四条第一項の規定による給付を仮装した場合 給付を仮装した出資に係る金銭以外の財産の全部の給付(株式会社が当該給付に代えて当該財産の価額に相当する金銭の支払を請求した場合にあっては、当該金銭の全額の支払)
2 前項各号に掲げる場合には、発起人がその出資の履行を仮装することに関与した発起人又は設立時取締役として法務省令で定める者は、株式会社に対し、当該各号に規定する支払をする義務を負う。ただし、その者(当該出資の履行を仮装したものを除く。)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
3 発起人が第一項各号に規定する支払をする義務を負う場合において、前項に規定する者が同項の義務を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。
4 発起人は、第一項各号に掲げる場合には、当該各号に定める支払若しくは給付又は第二項の規定による支払がされた後でなければ、出資の履行を仮装した設立時発行株式について、設立時株主(第六十五条第一項に規定する設立時株主をいう。次項において同じ。)及び株主の権利を行使することができない。
5 前項の設立時発行株式又はその株主となる権利を譲り受けた者は、当該設立時発行株式についての設立時株主及び株主の権利を行使することができる。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。
(発起人等の損害賠償責任)
第五十三条 発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったときは、当該株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
2 発起人、設立時取締役又は設立時監査役がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
(発起人等の連帯責任)
第五十四条 発起人、設立時取締役又は設立時監査役が株式会社又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の発起人、設立時取締役又は設立時監査役も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。
(責任の免除)
第五十五条 第五十二条第一項の規定により発起人又は設立時取締役の負う義務、第五十二条の二第一項の規定により発起人の負う義務、同条第二項の規定により発起人又は設立時取締役の負う義務及び第五十三条第一項の規定により発起人、設立時取締役又は設立時監査役の負う責任は、総株主の同意がなければ、免除することができない。
(株式会社不成立の場合の責任)
第五十六条 株式会社が成立しなかったときは、発起人は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為についてその責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する。
●出資財産等の価格不足の場合の責任(52条)
●仮装払込みの場合の責任(52条の2第1項・2項(括弧書きにより、仮装した者は無過失責任)、連帯責任(3項))
●損害賠償責任(53条1項(対会社)・2項(対第三者))、連帯責任(54条)、免除(55条)、不成立(56条)
●参考:見せ金の場合、設立後の取締役による払い戻しについては、423・429も。民法117条類推も適宜(発起人につき)
●補足:発起設立(設立手続等の特則(102条)、仮装引受人の責任(102条の2)、発起人の責任(103条))も参照。
●参考:総会招集権(297条)、株主提案権(303条から305条)
●注意:発起人、設立時取締役を区別。
株式
(共有者による権利の行使)
第百六条 株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。
(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
株式の共有(106条)
●趣旨:会社の事務処理上の便宜(106条)
●問題:株式の共同相続
●結論:相続額に応じた準共有(民法898条)
●理由:共益権を含み、分割債権(民法427条)ではない。
●問題:権利行使者(106条本文)の決定方法
●結論:特段の事情のない限り、持分価格に従い過半数で決する。
●理由:①趣旨から全員一致は不可、②管理行為(民法252条本文)
●補足:内部合意は会社に対抗不可
●問題:会社の同意(106条ただし書き)は万能か?
●結論:民法の共有規定による制限あり。
●理由:106条本文は「特別の定め」(民法264条ただし書き)であり、106条ただし書きは、同意により106条本文を排除するのみ。
●補足:訴訟提起も原則として106条本文の適用あり。(反対説:民法252条ただし書きの保存行為)
(株主の平等)
第百九条 株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第百五条第一項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。
3 前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の株主が有する株式を同項の権利に関する事項について内容の異なる種類の株式とみなして、この編及び第五編の規定を適用する。
株主平等の原則(109条1項)
●趣旨:均一的割合的な単位であることを裏から表現。合理性・予測可能性を高め、株式投資を促す点にある。
●効果:違反の場合、無効
●理由:少数株主の保護
●要件:例外は、合理性・(●趣旨に照らし)相当性
●参照:株主総会議決権(308条1項)、剰余金の配当(454条3項)、残余財産の分配(504条3項)
●参考:剰余金の配当における例外(454条2項1号・2号)。かかる株式の発行は定款で定める(108条1項1号、同2項1号、466条、309条2項11号)。
●参考:非公開会社の場合(109条2項・3項)。466条・309条4項。105条1項1号。
●補足:株主優待(問題点:持株数比例ではない):①株主平等原則の問題か、②(①で肯定説に立ち)反しないか?⇒結論:①問題の所在から肯定するものの、②目的に合理性があり、相当範囲内であれば許される。●認識:十分
(株主等の権利の行使に関する利益の供与)
第百二十条 株式会社は、何人に対しても、株主の権利、当該株式会社に係る適格旧株主(第八百四十七条の二第九項に規定する適格旧株主をいう。)の権利又は当該株式会社の最終完全親会社等(第八百四十七条の三第一項に規定する最終完全親会社等をいう。)の株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与(当該株式会社又はその子会社の計算においてするものに限る。以下この条において同じ。)をしてはならない。
2 株式会社が特定の株主に対して無償で財産上の利益の供与をしたときは、当該株式会社は、株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与をしたものと推定する。株式会社が特定の株主に対して有償で財産上の利益の供与をした場合において、当該株式会社又はその子会社の受けた利益が当該財産上の利益に比して著しく少ないときも、同様とする。
3 株式会社が第一項の規定に違反して財産上の利益の供与をしたときは、当該利益の供与を受けた者は、これを当該株式会社又はその子会社に返還しなければならない。この場合において、当該利益の供与を受けた者は、当該株式会社又はその子会社に対して当該利益と引換えに給付をしたものがあるときは、その返還を受けることができる。
4 株式会社が第一項の規定に違反して財産上の利益の供与をしたときは、当該利益の供与をすることに関与した取締役(指名委員会等設置会社にあっては、執行役を含む。以下この項において同じ。)として法務省令で定める者は、当該株式会社に対して、連帯して、供与した利益の価額に相当する額を支払う義務を負う。ただし、その者(当該利益の供与をした取締役を除く。)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
5 前項の義務は、総株主の同意がなければ、免除することができない。
利益供与(120条・970条)
●問題:「権利の行使」
●趣旨:株主総会の決議の公正確保・会社財産浪費の防止
●結論:権利行使、及び密接関連行為
●具体例:株式買戻し(最判H.18.4.10):形式的にはあたらない。例外的に趣旨から。
●具体例:委任状勧誘(東京地裁判H.19.12.6):形式的にはあたる。例外的に下記を総合考慮。
利益供与につき、(1)目的の正当性、(2)各株主あたりの金額の相当性、(3)総額が会社の財産的基礎に与える影響等
●参考:上記東京地裁は、目的の正当性を認めず、120条違反とした。別途確認。
●要件:①計算、②株主等、③上述、④財産上の利益、もあてはめ。
●展開:「第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え」(847条1項)として、代表訴訟の対象となる。
株主名簿(121条・125条2項・3項)
●趣旨:株主の同定に係る画一的処理による会社の事務処理上の便宜
●問題:委任状勧誘目的
●結論:3項2号該当せず(東京地決H.22.7.20)
●問題:公開買付勧誘目的(
●結論:3項1号該当せず(東京地決H.24.12.21)
●参考:3項3号は、平成26年改正で削除。
●理由:①具体的不利益が不明、②買収者は競業者が多く、買収を困難とする。③株主のプライバシー保護の趣旨と競業関係とは無関係。
●参考:会計帳簿閲覧請求(433条2項3号):具体的不利益が明確。会社の利益保護が趣旨。
第三節 株式の譲渡等
第一款 株式の譲渡
(株式の譲渡)
第百二十七条 株主は、その有する株式を譲渡することができる。
(株券発行会社の株式の譲渡)
第百二十八条 株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。
2 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。
(自己株式の処分に関する特則)
第百二十九条 株券発行会社は、自己株式を処分した日以後遅滞なく、当該自己株式を取得した者に対し、株券を交付しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、公開会社でない株券発行会社は、同項の者から請求がある時までは、同項の株券を交付しないことができる。
(株式の譲渡の対抗要件)
第百三十条 株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。
2 株券発行会社における前項の規定の適用については、同項中「株式会社その他の第三者」とあるのは、「株式会社」とする。
(権利の推定等)
第百三十一条 株券の占有者は、当該株券に係る株式についての権利を適法に有するものと推定する。
2 株券の交付を受けた者は、当該株券に係る株式についての権利を取得する。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。
(株主の請求による株主名簿記載事項の記載又は記録)
第百三十三条 株式を当該株式を発行した株式会社以外の者から取得した者(当該株式会社を除く。以下この節において「株式取得者」という。)は、当該株式会社に対し、当該株式に係る株主名簿記載事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。
2 前項の規定による請求は、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載され、若しくは記録された者又はその相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない。
【施行規則】
第二節 株式の譲渡等
(株主名簿記載事項の記載等の請求)
第二十二条 法第百三十三条第二項に規定する法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。 一 株式取得者が、株主として株主名簿に記載若しくは記録がされた者又はその一般承継人に対して当該株式取得者の取得した株式に係る法第百三十三条第一項の規定による請求をすべきことを命ずる確定判決を得た場合において、当該確定判決の内容を証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。 二 株式取得者が前号の確定判決と同一の効力を有するものの内容を証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。 三 株式取得者が指定買取人である場合において、譲渡等承認請求者に対して売買代金の全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。 四 株式取得者が一般承継により当該株式会社の株式を取得した者である場合において、当該一般承継を証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。 五 株式取得者が当該株式会社の株式を競売により取得した者である場合において、当該競売により取得したことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。 六 株式取得者が株式売渡請求により当該株式会社の発行する売渡株式の全部を取得した者である場合において、当該株式取得者が請求をしたとき。 七 株式取得者が株式交換(組織変更株式交換を含む。)により当該株式会社の発行済株式の全部を取得した会社である場合において、当該株式取得者が請求をしたとき。 八 株式取得者が株式移転(組織変更株式移転を含む。)により当該株式会社の発行済株式の全部を取得した株式会社である場合において、当該株式取得者が請求をしたとき。 九 株式取得者が法第百九十七条第一項の株式を取得した者である場合において、同条第二項の規定による売却に係る代金の全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。 十 株式取得者が株券喪失登録者である場合において、当該株式取得者が株券喪失登録日の翌日から起算して一年を経過した日以降に、請求をしたとき(株券喪失登録が当該日前に抹消された場合を除く。)。 十一 株式取得者が法第二百三十四条第二項(法第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による売却に係る株式を取得した者である場合において、当該売却に係る代金の全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。
2 前項の規定にかかわらず、株式会社が株券発行会社である場合には、法第百三十三条第二項に規定する法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。 一 株式取得者が株券を提示して請求をした場合 二 株式取得者が株式売渡請求により当該株式会社の発行する売渡株式の全部を取得した者である場合において、当該株式取得者が請求をしたとき。 三 株式取得者が株式交換(組織変更株式交換を含む。)により当該株式会社の発行済株式の全部を取得した会社である場合において、当該株式取得者が請求をしたとき。 四 株式取得者が株式移転(組織変更株式移転を含む。)により当該株式会社の発行済株式の全部を取得した株式会社である場合において、当該株式取得者が請求をしたとき。 五 株式取得者が法第百九十七条第一項の株式を取得した者である場合において、同項の規定による競売又は同条第二項の規定による売却に係る代金の全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。 六 株式取得者が法第二百三十四条第一項若しくは第二百三十五条第一項の規定による競売又は法第二百三十四条第二項(法第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による売却に係る株式を取得した者である場合において、当該競売又は当該売却に係る代金の全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。
株券
●問題:株券の成立時期(交付を要するか?)
●結論:要する。
●理由:①会社の意思表示なし。②株券の発行をするのは大多数を占める非上場会社のみであり、流通保護の必要性は乏しい。
●判例:同旨
●補足:善意取得(131条2項)可能か?差押可能か?に影響
●参考:善意取得は(手形(判例)と同様)無制限説で良いだろう。理由:取引の安全確保を徹底●確認:判例はない?
●問題:株券発行前の譲渡(「効力を生じない」(128条2項)の意義)
●趣旨:この点、同項の趣旨は、会社による株券発行の円滑性・正確性確保にある。
●結論:そこで、当事者間では譲渡は有効。
●展開:もっとも、通常必要な合理的期間を超え発行遅滞(215条1項違反)していた場合、会社は信義則(民法1条2項)上無効主張不可。
●展開:譲受人は実質的権利を証明して名義書換請求可。
●判例:同旨
投下資本の回収
●理由:株主は間接有限責任(104条)
●帰結:会社債権者の引き当ては会社財産のみ。会社財産確保の必要性あり。
●展開:払戻しは原則として禁止されており、株主の投下資本回収は譲渡によるのみ。●私見:公開会社では株主の個性は希薄であり許容可能。
●結論:譲渡自由(127条)
●歯止:全部制限可能(107条1項1号、309条3項1号)●参考:一部:108条1項4号(466条、309条2項11号、111条2項、324条3項1号)
●許容:譲渡承認(139条1項本文):原則株主総会、例外(取締役会設置会社)取締役会。「定款に別段の定め」(同項但書):取締役会設置会社でも株主総会承認事項とすることも可。●参照:466条、309条3項1号(なお、株式買取請求権(116条1項1号)あり。)
株式譲渡自由の原則(127条)
●前提:139条1項の承認等がない場合、会社の拒絶可能の原則(134条柱書本文)
●制度:権利株(35条、50条2項、63条2項、208条4項)の譲渡制限
●趣旨:多数かつ変動しうる株主についての事務処理に関する会社の便宜
●効果:会社に対抗不可
●制度:株券発行前の譲渡制限(128条2項):前述
●制度:自己株式の譲渡制限(155条~177条)
●制度:子会社による親会社株式取得(135条)
●趣旨:①資本充実を害する、②株主平等、③経営の保身予防、④インサイダー取引予防。●表現検討
●参照:308条1項括弧書き
●問題:契約による譲渡制限
●趣旨:株主有限責任(104条)のための払戻禁止をされるが故の譲渡自由(127条)
●結論:原則として、無効
●理由:①(従業員持株会の運営等において)必要性があり、②第三者効まではなく、取引の安全を害さず、許容できる。
●要件:公序良俗(民法90条)違反でない限り、
●結論:有効
●判例:契約自由が根本にある模様
●参考:持株会の場合、形式的には理事長名義であっても、実質的な株主は誰か?が問題となる。●司法平成29年●認識:
名義書き換え(130)
●前提:株主名簿制度(121条以下)。対抗できず(130条2項・1項) ●126条1項参照
●問題:会社からの権利行使許容
●理由:趣旨。「対抗することができない」(130条(●原則:1項、株券発行会社の場合:2項))
●結論:可能(判例)
●歯止:109条1項
●問題:名義書換えの不当拒絶(133条1項に対し)
●理由:権利推定(131条1項)による免責がある以上、実質的無権利を立証しない限りは、信義則(民法1条2項)違反となる。
●結論:株主として対抗可能(結論判例同旨)。
●参考:株券喪失登録あり(230条1項)は正当理由。盗難届のみは不当(真偽不明。善意取得(131条2項)ありえ)。総会屋でも不当。
●知識:株券発行会社においては、株券を呈示すれば単独で名義書換請求が可能(133条2項、施行規則22条2項1号)。
失念株
●前提:基準日(124条1項)cf.権利推定(131条2項)
●趣旨:多数かつ変動し得る株主につき画一的処理により会社の事務処理上の便宜を図る。
●帰結:対抗できない(130条1項)。
●展開:会社が自己の危険において認めることは可能。
●問題:譲渡人から譲受人に対する(何らかの)権利主張
●理由:①当事者間の契約、②譲受人が二重のプレミアム(増資含みの高値で譲渡し更に新株の割当)も受けるのは不当
●結論:権利主張可能
●歯止:しかし、新株自体は、譲渡人が払込みにより得たものであり保持は妥当。また新株の騰落により、譲受人の投機的請求や譲渡人の保護に欠ける事態につながる。
●結論:新株取得により得た利益につき、不当利得返還請求(民法703条・704条)
●注意:民法703条・704条の要件あてはめへ。
●参考:日証協は新株自体の不当利得返還請求権説(に近い)らしい。
●参考:基準日後の譲受株主(名義書換未了)への剰余金支払い(会社裁量)
基準日制度の趣旨、及びそれを前提とした取引慣行(剰余金の配当分を控除した売買価格とする等)とのバランス
(「剰余金の配当は売主へゆえその分控除」のケースか。結論不可(124条4項ただし書き参照)。議決権は可(124条4項本文)だが、剰余金支払いにつき規定なし。)
●参考:株主名簿の権利推定的効力(131条1項、133条2項、施行規則22条2項1号)。
根拠規定に照らし、株券発行会社・株式振替制度を利用する会社でない限り、認められない。
当事者間の譲渡が、取消し(民法9条本文等)により遡及的無効(同121条本文)となれば?(小論点)
原則、会社側は保護されず。しかし、共同請求等による書換があった場合、(権利推定効(131条1項)に基づかないとはいえ)会社保護の必要性。
そこで、民法478条・520条の10類推(or手形法40条3項類推)等を検討する。
相続による株式取得
●問題:「譲渡」(130条)か?
●結論:不要(立法担当者見解)
●理由:名義株主としての地位を含め、被相続人の地位を包括的に承継。特定承継の場合と異なり、権利行使の重複のおそれがない。等
●参考:反対説も有力?の模様
譲渡制限株式(2条17号)
●手続:譲渡承認(136条~145条)
●結論:譲渡承認決議(139条1項)
●制度:制限(107条1項1号(・108条1項4号))
●趣旨:会社にとり好ましくない者が株主となることを防止し、会社経営の安定を図る(判例)。
●効果:違反の場合、①当事者間では有効(137条1項、138条2号ハ)、②会社との間では無効(趣旨から)。
●展開:もっとも、株主の空白が生じないよう、
●結論:会社は譲受人を株主として扱う義務を負うと解される。
●補足:一人会社では、会社との関係でも有効(判例)。株主保護が問題とならない(し、簡単に定款変更し、総会を承認機関に変更可能(139条1項ただし書)。134条1号類推。)。
●補足:会社が事情を知って譲受人に支払った場合、善意支払(民法478条)は認められない。
●問題:会社から認めること
●結論:不可(判例)
●理由:①承認手続に関する詳細な規定(136条以下)を設けていることから、個別の事案では代表者の裁量なし。②「要する」(2条17号)(130条1項参照)。(●無効(民法119条本文)なので追認不可、とも)
●参考:認めるとしても、歯止め(109条違反ではないこと)を。
●参考:名義書換未了の株主(130条)の場合には可(判例)とすることとの整合性
(①事務処理上の便宜を図るに過ぎない、②「対抗」(130条1項)の問題に過ぎない。)
●参考:134条4号、174条以下
●問題:譲渡担保の場合の承認の要否(「株式の譲渡」(136条以下)にあたるか)
●理由:譲渡承認を要する趣旨が妥当する。
●結論:あたる(判例)。
●参考:非該当説においても、担保権実行時には要承認(137条1項)
第二目 特定の株主からの取得
(特定の株主からの取得)
第百六十条 株式会社は、第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定に併せて、同項の株主総会の決議によって、第百五十八条第一項の規定による通知を特定の株主に対して行う旨を定めることができる。
2 株式会社は、前項の規定による決定をしようとするときは、法務省令で定める時までに、株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)に対し、次項の規定による請求をすることができる旨を通知しなければならない。
3 前項の株主は、第一項の特定の株主に自己をも加えたものを同項の株主総会の議案とすることを、法務省令で定める時までに、請求することができる。
4 第一項の特定の株主は、第百五十六条第一項の株主総会において議決権を行使することができない。ただし、第一項の特定の株主以外の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。
5 第一項の特定の株主を定めた場合における第百五十八条第一項の規定の適用については、同項中「株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)」とあるのは、「第百六十条第一項の特定の株主」とする。
(市場価格のある株式の取得の特則)
第百六十一条 前条第二項及び第三項の規定は、取得する株式が市場価格のある株式である場合において、当該株式一株を取得するのと引換えに交付する金銭等の額が当該株式一株の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えないときは、適用しない。
(相続人等からの取得の特則)
第百六十二条 第百六十条第二項及び第三項の規定は、株式会社が株主の相続人その他の一般承継人からその相続その他の一般承継により取得した当該株式会社の株式を取得する場合には、適用しない。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 株式会社が公開会社である場合
二 当該相続人その他の一般承継人が株主総会又は種類株主総会において当該株式について議決権を行使した場合
(子会社からの株式の取得)
第百六十三条 株式会社がその子会社の有する当該株式会社の株式を取得する場合における第百五十六条第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)」とする。この場合においては、第百五十七条から第百六十条までの規定は、適用しない。
(特定の株主からの取得に関する定款の定め)
第百六十四条 株式会社は、株式(種類株式発行会社にあっては、ある種類の株式。次項において同じ。)の取得について第百六十条第一項の規定による決定をするときは同条第二項及び第三項の規定を適用しない旨を定款で定めることができる。
2 株式の発行後に定款を変更して当該株式について前項の規定による定款の定めを設け、又は当該定めについての定款の変更(同項の定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとするときは、当該株式を有する株主全員の同意を得なければならない。
自己株式の取得・処分
●特定の株主からの取得(160条1項、4項)
特別決議(155条3号(最重要。唯一手続規制もある。)、156条1項、309条2項2号、160条1項)
通知(160条2項、3項)
市場取引に関する例外(161条)
相続人(162条)
●補足:160条4項違反は、株主総会決議取消しの訴えの問題、とする考え方がある。他方、自己株式取得規制の手続違反とする説もある。●自説:後者か。
●補足:155条13号の財源規制(116条1項、182条の4第1項)は461条1項以外も。166条1項ただし書き、170条5項
●参照:135条3項
●問題:手続規制違反の場合の効力(明文なし)
●結論:私法上無効
●理由:株主平等(109条)を害する。利益供与の禁止(120条)と同様に解すべき。
●歯止:相手方善意(・無重過失)の場合、無効主張不可。
●帰結:会社以外名義での買付けは基本的には有効(相手方善意(・無重過失))。
●参考:会社財産を危うくする罪(963条5項1号)
●問題:相手方からの主張は?
●結論:(特段の事情がない限り)不可
●理由:①相手方保護の趣旨での無効ではない、②相手方の投機的行為を防止
●問題:財源規制違反(461条1項違反)の場合の効力(明文なし)
●結論:無効
●理由:461条1項違反の決議は無効であり(830条2項参照)、それに基づく会社の株式の買取り等も無効と解するのが自然。
●補足:この説からは、462条1項は、民法121条の2第1項・533条の特別規定(株主からの金銭返還を先履行義務化するため)。
●参考:取締役等の責任のみ発生し、有効とする説もある。その説からは、上記補足の点、(特別規定ゆえではなく)当然の帰結となる。
●参照:463条1項
●問題:役員の賠償責任の対象たる損害の意義
●結論:売却差額説(判例):短期売却の場合、取得価額と売却価額との差額(売却損)。継続保有の場合、取得価額と損害算定時の時価との差額(評価損)。
●理由:規制趣旨から、取得価額を基に算定すれば、株主・債権者の保護として必要十分。
●検討:株価変動には様々な場合がありが、いすれも趣旨から考えれば良い。
「議決権を行使することができない株主」(182条の4第2項2号)
●問題:基準日後株主
●結論:該当する。
●理由:①株主総会での議題・議案を知りえない株主の保護、②文言
●参考:反対説も有力?
●問題:名義書換未了株主
●結論:該当する。
●理由:上記同様
●参考:東京地裁決定H.21.10.19は反対説。失念株主を名義書き換えを行った基準日株主よりも厚く保護する合理性なし、と。
●問題:他人名義で株式を引き受けた場合の株主は?●参考:司法令和3年
第八節 募集株式の発行等
第一款 募集事項の決定等
(募集事項の決定)
第百九十九条 株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
一 募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数。以下この節において同じ。)
二 募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。以下この節において同じ。)又はその算定方法
三 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
四 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間
五 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項
2 前項各号に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
3 第一項第二号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
4 種類株式発行会社において、第一項第一号の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
5 募集事項は、第一項の募集ごとに、均等に定めなければならない。
(募集事項の決定の委任)
第二百条 前条第二項及び第四項の規定にかかわらず、株主総会においては、その決議によって、募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に委任することができる。この場合においては、その委任に基づいて募集事項の決定をすることができる募集株式の数の上限及び払込金額の下限を定めなければならない。
2 前項の払込金額の下限が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、同項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
3 第一項の決議は、前条第一項第四号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の末日)が当該決議の日から一年以内の日である同項の募集についてのみその効力を有する。
4 種類株式発行会社において、第一項の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定の委任は、当該種類の株式について前条第四項の定款の定めがある場合を除き、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
(公開会社における募集事項の決定の特則)
第二百一条 第百九十九条第三項に規定する場合を除き、公開会社における同条第二項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。
2 前項の規定により読み替えて適用する第百九十九条第二項の取締役会の決議によって募集事項を定める場合において、市場価格のある株式を引き受ける者の募集をするときは、同条第一項第二号に掲げる事項に代えて、公正な価額による払込みを実現するために適当な払込金額の決定の方法を定めることができる。
3 公開会社は、第一項の規定により読み替えて適用する第百九十九条第二項の取締役会の決議によって募集事項を定めたときは、同条第一項第四号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)の二週間前までに、株主に対し、当該募集事項(前項の規定により払込金額の決定の方法を定めた場合にあっては、その方法を含む。以下この節において同じ。)を通知しなければならない。
4 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
5 第三項の規定は、株式会社が募集事項について同項に規定する期日の二週間前までに金融商品取引法第四条第一項から第三項までの届出をしている場合その他の株主の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、適用しない。
「特に有利な金額」
●前提:持株比率維持の利益は原則として保護されず(202条1項柱書前段)。4倍ルール(37条1項、3項、98条、113条1項、3項1号)
●問題:「特に有利な金額」についての株主総会特別決議(199条3項、201条1項前段、199条2項、309条2項5号)
●理由:199条3項の趣旨は、資金調達の要請を充たしつつ、既存株主の経済的不利益につき手続的保護を図る点にある。
●結論:新株発行による資金調達が達成される限度で、既存株主にとり最も有利な価額(公正価額)よりも低い金額
●結論:具体的には、原則として、発行価額決定直前の株価に近接している必要がある。●認識:上場株式の公募の場合
●補足:考慮要素(最高裁昭和50年4月8日):払込金額決定前の株価(●認識:同上j。その9割が一つの基準)、株価の騰落習性、売買出来高の実績、会社の資産状況、収益状況、配当状況、発行済み株式数、株式市場の動向、新規発行株式数・その消化可能性等。
●参考:騰落は株式市場の常なので、排除しない。但し、①高騰が異常で、一時的であれば、その価格は排除可能。⇒一定期間の平均株価にて。また、②企業提携情報のリークによるシナジー期待からの高騰についても同様。
●補足:有力説:株価下落しても会社には損害なし(あれば423・847)
●参考:現物出資の場合、207条の手続が必要(原則:検査役の調査(1項)、例外:弁護士等による証明(9項4号)等)
●展開:吸収分割と比較し、反対株主の株式買取請求は認められず。
理由:①資金調達として、②歯止めあり(例:差止め(210条2号)、総会決議(309条2項5号)、授権資本制度(37条))●206条の2第1項・第2項・第4項本文も
●検討:各理由に反論できるのでは?
●参考:総数引受契約(205条1項):通知(203条1項各号、5項)、割当て(204条1項)の省略可能。
(公開会社における募集株式の割当て等の特則)
第二百六条の二 公開会社は、募集株式の引受人について、第一号に掲げる数の第二号に掲げる数に対する割合が二分の一を超える場合には、第百九十九条第一項第四号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)の二週間前までに、株主に対し、当該引受人(以下この項及び第四項において「特定引受人」という。)の氏名又は名称及び住所、当該特定引受人についての第一号に掲げる数その他の法務省令で定める事項を通知しなければならない。ただし、当該特定引受人が当該公開会社の親会社等である場合又は第二百二条の規定により株主に株式の割当てを受ける権利を与えた場合は、この限りでない。 一 当該引受人(その子会社等を含む。)がその引き受けた募集株式の株主となった場合に有することとなる議決権の数 二 当該募集株式の引受人の全員がその引き受けた募集株式の株主となった場合における総株主の議決権の数
2 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
3 第一項の規定にかかわらず、株式会社が同項の事項について同項に規定する期日の二週間前までに金融商品取引法第四条第一項から第三項までの届出をしている場合その他の株主の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、第一項の規定による通知は、することを要しない。
4 総株主(この項の株主総会において議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主が第一項の規定による通知又は第二項の公告の日(前項の場合にあっては、法務省令で定める日)から二週間以内に特定引受人(その子会社等を含む。以下この項において同じ。)による募集株式の引受けに反対する旨を公開会社に対し通知したときは、当該公開会社は、第一項に規定する期日の前日までに、株主総会の決議によって、当該特定引受人に対する募集株式の割当て又は当該特定引受人との間の第二百五条第一項の契約の承認を受けなければならない。ただし、当該公開会社の財産の状況が著しく悪化している場合において、当該公開会社の事業の継続のため緊急の必要があるときは、この限りでない。
5 第三百九条第一項の規定にかかわらず、前項の株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。
第五款 募集株式の発行等をやめることの請求
第二百十条 次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、第百九十九条第一項の募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をやめることを請求することができる。
一 当該株式の発行又は自己株式の処分が法令又は定款に違反する場合
二 当該株式の発行又は自己株式の処分が著しく不公正な方法により行われる場合
新株発行差止めの訴え(210条)cf.207条
「著しく不公正な方法」
●前提:授権資本制度(201条1項)の趣旨は、機動的な資金調達の便宜。
●問題:「著しく不公正な方法」(210条2号)の意義
●理由:新株発行等による資金調達の必要性と会社支配の公正との調和の観点から、
●結論:①主要な目的が不当な場合、又は②正当であっても、必要性・相当性を欠く場合
●補足:①について、支配権維持目的か否か(参考:360条は会社、210条は個人の損害)等。
●補足:②について、支配権維持であっても、株主全体の利益保護という見地から、特段の正当化事由(必要性・相当性)があるか否か等。
●補足:会計帳簿を閲覧できないようにする場合も不当目的に当たりうる。支配権維持(受任者たる取締役(330条、民法644条)が委任者たる会社の支配帰属を決するのは(機関権限の分配を定めた)会社法の趣旨に反する)だけではない。
●参考:206条の2。違反は法令違反(210条1号)。適法であれば、2号において有利な事情となる。
●参考:247条
●参考:民事保全法23条2項参照●確認
●注意:「株主が不利益を受けるおそれ」(210条1項)のあてはめ失念しない。
募集に関する責任等(211条~213条の3)
●条文:引受人の責任(212条1項1号)
●注意:この責任は、株主代表訴訟の対象となる(847条に「二百十二条一項」との文言あり。)。
●検討:この責任を追及できる場合、役員の責任追及(847条1項・3項、423条)はできない。また、「第三者」(429条)でもないと解される。
●補足:新株発行無効の訴え(828条1項2号・2項2号)●株価下落の不利益の他、持株比率低下の不利益をカバーする方法としての独自性あり。
第二節 新株予約権の発行
第一款 募集事項の決定等
(募集事項の決定)
第二百三十八条 株式会社は、その発行する新株予約権を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集新株予約権(当該募集に応じて当該新株予約権の引受けの申込みをした者に対して割り当てる新株予約権をいう。以下この章において同じ。)について次に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)を定めなければならない。
一 募集新株予約権の内容及び数
二 募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
三 前号に規定する場合以外の場合には、募集新株予約権の払込金額(募集新株予約権一個と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)又はその算定方法
四 募集新株予約権を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)
五 募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日
六 募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合には、第六百七十六条各号に掲げる事項
七 前号に規定する場合において、同号の新株予約権付社債に付された募集新株予約権についての第百十八条第一項、第百七十九条第二項、第七百七十七条第一項、第七百八十七条第一項又は第八百八条第一項の規定による請求の方法につき別段の定めをするときは、その定め
2 募集事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
3 次に掲げる場合には、取締役は、前項の株主総会において、第一号の条件又は第二号の金額で募集新株予約権を引き受ける者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
一 第一項第二号に規定する場合において、金銭の払込みを要しないこととすることが当該者に特に有利な条件であるとき。
二 第一項第三号に規定する場合において、同号の払込金額が当該者に特に有利な金額であるとき。
4 種類株式発行会社において、募集新株予約権の目的である株式の種類の全部又は一部が譲渡制限株式であるときは、当該募集新株予約権に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を目的とする募集新株予約権を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。 5 募集事項は、第一項の募集ごとに、均等に定めなければならない。
(募集事項の決定の委任)
第二百三十九条 前条第二項及び第四項の規定にかかわらず、株主総会においては、その決議によって、募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に委任することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 その委任に基づいて募集事項の決定をすることができる募集新株予約権の内容及び数の上限
二 前号の募集新株予約権につき金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
三 前号に規定する場合以外の場合には、募集新株予約権の払込金額の下限
2 次に掲げる場合には、取締役は、前項の株主総会において、第一号の条件又は第二号の金額で募集新株予約権を引き受ける者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
一 前項第二号に規定する場合において、金銭の払込みを要しないこととすることが当該者に特に有利な条件であるとき。
二 前項第三号に規定する場合において、同号の払込金額の下限が当該者に特に有利な金額であるとき。
3 第一項の決議は、割当日が当該決議の日から一年以内の日である前条第一項の募集についてのみその効力を有する。
4 種類株式発行会社において、募集新株予約権の目的である株式の種類の全部又は一部が譲渡制限株式であるときは、当該募集新株予約権に関する募集事項の決定の委任は、前条第四項の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
(公開会社における募集事項の決定の特則)
第二百四十条 第二百三十八条第三項各号に掲げる場合を除き、公開会社における同条第二項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。
2 公開会社は、前項の規定により読み替えて適用する第二百三十八条第二項の取締役会の決議によって募集事項を定めた場合には、割当日の二週間前までに、株主に対し、当該募集事項を通知しなければならない。
3 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。 4 第二項の規定は、株式会社が募集事項について割当日の二週間前までに金融商品取引法第四条第一項から第三項までの届出をしている場合その他の株主の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、適用しない。
新株予約権
●条文:「特に有利な条件」(238条3項1号)、「特に有利な金額」(同2号)
●展開:(非公開会社)特別決議(240条1項、238条2項・3項、309条2項6号)⇔(公開会社)取締役会(240条1項、238条2項)
●問題:募集新株予約権につき株主総会決議がされた後、取締役会決議により行使条件変更された。その後に行使された新株発行の効力
●判例:最判H24.4.24
●規範:①株主総会による明示の委任がない限り、行使条件の細目的変更を除き、行使条件を変更する取締役会決議は無効。
②行使条件が、発行趣旨に照らし重要な内容である場合、それに反する行使による新株発行により、既存株主の持株比率が意思に反し影響を受ける。それは、特別決議を経ない募集株式発行と同様。よって、かかる新株発行は無効。
●補足:取締役会への委任自体は可能(239条)●確認:株式と同じ。
第四款 募集新株予約権の発行をやめることの請求
第二百四十七条 次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、第二百三十八条第一項の募集に係る新株予約権の発行をやめることを請求することができる。
一 当該新株予約権の発行が法令又は定款に違反する場合
二 当該新株予約権の発行が著しく不公正な方法により行われる場合
新株予約権無償割当(敵対的買収の場合)
●前提:新株発行・新株予約権の発行・新株予約権の無償割当の3つを区別して検討する。特に後2者。
●判例:最決H19.8.7
●前提:「著しく不公正な方法」(247条2号)
●問題①:新株無償割当て(277条)の場合の差止請求については明文なし。
●結論:可能(247条類推適用)。
●理由:新株予約権無償割当てについて相当する規定がないのは、保有株式数に応じる割当てについては、株主の地位(持株比率・保有株式の経済的価値)に実質的な変動がないため。不公正な条件により影響する場合は趣旨が妥当し、必要性あり。
●参考:差止請求、及びその請求権を被保全権利とする仮の地位を定める仮処分(民保法23条2項)の場面
●検討:「不利益を受けるおそれがあるとき」について簡単にあてはめ。●検討:ここで?
●問題②:法令・定款違反(247条1号)(株主平等原則(109条1項)との関係)
●原則:新株予約権無償割当は、契約上の地位に過ぎず、株式の内容等に直接関係するものではないため、直ちに違反とはならない。
●理由:しかし、株主としての資格に基づき割当を受けており、かつ法も新株予約権の内容が同一であることを前提としている(278条2項等参照)。
●結論:その趣旨は新株予約権無償割当の場合にも及ぶと解される。
●基準:そこで、(1)企業価値の棄損により株主共同の利益が害される場合において、(2)それが衡平の理念に反し相当性を欠くと認められるものでない限り、
●結論:差別的取り扱いも株主平等原則の趣旨違反として法令違反とはならない。
●展開:株主共同の利益が害されるか否かについては、重大な瑕疵がない限り、株主総会における判断を尊重。
●参考:事前の防衛策でないとしても、緊急性・必要性・相当性があるから良い。
●問題③:「著しく不公正な方法」(247条2号)
●論点:一般論
●あ:原則:経営支配維持が手法な目的の場合は該当。ただ、かかる目的があっても、取締役は善管注意義務(355条・330条・民法644条)を負うことから、例外として、株主全体の利益保護の観点から正当化される特段の事情がある場合は非該当。●具体例:①グリーンメーラー、②焦土経営、③資産流用予定、④一時的な高配当・高値売り抜け(日本放送事件。東京高裁決定H17.3.23)。
●理由:新株予約権の特殊性(資金調達に限らず、様々な目的で発行)。
●結論:必要性・相当性を個別具体的に判断
機関
【留意点・知識】
●条文:少数株主による株主総会の招集の手続(297条等)
●条文:議題提案権(303条)
●条文:議案要領通知請求権(305条)
●条文:招集手続(299条)●参考:省略の事前同意(300条)
●条文:議長の権限(315条):必要性・相当性による。
●取締役会決議無効・不存在確認訴訟:他の訴訟類型でカバー可能。よって重要性は低い。明文もない。結論としては、一般的な確認訴訟による。
●条文:取締役の解任(339条):役員等に対する株主の監督機能の確保(1項)、及び役員等の人気に対する期待保護(2項)。よって、「正当な理由」(同項)は、職務執行を委ねることができないと判断すべき客観的理由をいう。
●条文:取締役会:招集権者(366条1項)、決議要件(369条1項、2項)、
●論点:権限移譲。企業の実質的所有者たる株主が、経営の効率性よりも自ら意思決定することを優先する場合、株式会社の本質に反しない限り、定款により取締役会の決議事項を株主総会のそれとすることは295条2項に反しない。
(株主総会の決議)
第三百九条 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
一 第百四十条第二項及び第五項の株主総会
二 第百五十六条第一項の株主総会(第百六十条第一項の特定の株主を定める場合に限る。)
三 第百七十一条第一項及び第百七十五条第一項の株主総会
四 第百八十条第二項の株主総会
五 第百九十九条第二項、第二百条第一項、第二百二条第三項第四号、第二百四条第二項及び第二百五条第二項の株主総会
六 第二百三十八条第二項、第二百三十九条第一項、第二百四十一条第三項第四号、第二百四十三条第二項及び第二百四十四条第三項の株主総会
七 第三百三十九条第一項の株主総会(第三百四十二条第三項から第五項までの規定により選任された取締役(監査等委員である取締役を除く。)を解任する場合又は監査等委員である取締役若しくは監査役を解任する場合に限る。)
八 第四百二十五条第一項の株主総会
九 第四百四十七条第一項の株主総会(次のいずれにも該当する場合を除く。)
イ 定時株主総会において第四百四十七条第一項各号に掲げる事項を定めること。
ロ 第四百四十七条第一項第一号の額がイの定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。
十 第四百五十四条第四項の株主総会(配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して同項第一号に規定する金銭分配請求権を与えないこととする場合に限る。)
十一 第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
十二 第五編の規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
3 前二項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会(種類株式発行会社の株主総会を除く。)の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
一 その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う株主総会
二 第七百八十三条第一項の株主総会(合併により消滅する株式会社又は株式交換をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等(同条第三項に規定する譲渡制限株式等をいう。次号において同じ。)である場合における当該株主総会に限る。)
三 第八百四条第一項の株主総会(合併又は株式移転をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合における当該株主総会に限る。)
4 前三項の規定にかかわらず、第百九条第二項の規定による定款の定めについての定款の変更(当該定款の定めを廃止するものを除く。)を行う株主総会の決議は、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、総株主の議決権の四分の三(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
5 取締役会設置会社においては、株主総会は、第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、第三百十六条第一項若しくは第二項に規定する者の選任又は第三百九十八条第二項の会計監査人の出席を求めることについては、この限りでない。
定款による代理人資格制限
●問題:310条1項前段は制限をしておらず、反しないか。
●理由:同項の趣旨は、議決権行使の機会を実質的に保障(310条1項前段)する点にある一方、第三者参画による混乱を防止する会社の利益(定款の趣旨)も重要。
●結論:そこで、①合理的な理由、②相当な制限であれば、制限可能と解される(判例)。●認識:事実上剥奪するレベルは違法
●展開:更に、①合理的な理由が及ばない者(役職員、弁護士等)について(、株主の権利行使の機会を事実上奪う場合に)は、文言上は資格制限された者(株主ではない等)であっても代理人となることができると解される。●認識:認めても良いし、認めなければならない。
●補足:非公開会社の場合、他の株主に頼み易い。ので、機会あり。とも考えられる。
●判例(最判S51.12.24)・裁判例(神戸地尼崎支判H12.3.28)あり。
(取締役等の説明義務)
第三百十四条 取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでない。
【施行規則】
(取締役等の説明義務)
第七十一条 法第三百十四条に規定する法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 株主が説明を求めた事項について説明をするために調査をすることが必要である場合(次に掲げる場合を除く。)
イ 当該株主が株主総会の日より相当の期間前に当該事項を株式会社に対して通知した場合
ロ 当該事項について説明をするために必要な調査が著しく容易である場合
二 株主が説明を求めた事項について説明をすることにより株式会社その他の者(当該株主を除く。)の権利を侵害することとなる場合
三 株主が当該株主総会において実質的に同一の事項について繰り返して説明を求める場合
四 前三号に掲げる場合のほか、株主が説明を求めた事項について説明をしないことにつき正当な理由がある場合
説明義務(314条)
●理由:決議事項の内容、質問事項との関連の程度、その説明内容等に加えて、質問した株主が保有する資料等も総合的に考慮
●結論:平均的な株主が、説明請求権行使の前提としての合理的な理解及び判断をなしうる状態に達しているかを総合的に判断
●問題:一括説明
●結論:可能
●理由:質問の重複等の場合に合理的
●参考:施行規則71条
所有と経営の分離
●原則:295条1項(331条2項本文)
●理由:しかし、株主には経営の意思・能力がない。
●結論:株主総会は基本的事項の意思決定のみ(295条2項)
●展開:取締役会設置会社の場合、取締役会の権限(362条2項)。株主総会のみの権限(295条3項)。
●条文:取締役の選解任権(329条1項、339条1項)
●参考:一株一議決権(308条1項本文)●参考:308条2項
経営判断原則
●注意:故意・過失も認定する。●確認
●問題:善管注意義務(330条、民法644条)違反として、「任務を怠った」(423条1項)と言えるのか?
●理由:不可避的にリスクを伴う企業経営において、専門家たる取締役の判断が過度に委縮することは、株式会社の制度趣旨に反する。他方で、株主の危険の下、過度な危険を犯すことを許すことも妥当ではない。
●要件:そこで、同業界における経営者の一般的な知見を基準として、①事実認識に不注意があるか、又は②当該事実に基づく判断の過程・内容に著しい不合理がある場合に限り、
●結論:「任務を怠った」として、善管注意義務違反となると解される。
●参考:「法令」(350条)には、取締役ではなく、会社を名宛人とするものをも含む。例:業法。取締役の意思決定機能に照らし。
●参考:法令違反は、それ自体が「任務を怠った」と言えるため、経営判断原則の適用はない。
●参考:法令違反による損益相殺はない。違反した法令の趣旨を損なうため。
(株式会社の代表)
第三百四十九条 取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
2 前項本文の取締役が二人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社を代表する。
3 株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。
4 代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
5 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
代表取締役
●問題:「善意」(349条5項)
●趣旨:内部的制限につき通常は善意である第三者の信頼保護
●結論:過失ある者も保護。重過失は保護しない。
●展開:上記はクリアしたとしても、362条4項各号の話は別論。
●展開:上記はクリアしないとしても、決議を経ていない点につき善意無過失なら、民法110条類推の可能性あり。
●補足:権限濫用は民法93条1項但書類推でOK
●検討:民法107条
(表見代表取締役)
第三百五十四条 株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。
表見代表取締役(354条)
●原則:…には代表権(349条4項参照)がなく、会社の追認(民法116条本文)がなければ、効果帰属しないのが原則である。
●趣旨:誤認を生じさせる表示をした会社の責任の下、外観を信頼した第三者を保護し、取引の安全を図る。
●要件:①「取締役」、②「付した」、③「善意」
●問題:「取締役」(使用人等への類推適用)
●結論:肯定
●理由:趣旨
●補足:取引先の役職員については否定(●浦和地判H11.8.6)(●認識:民法109条はあるだろう)
●問題:「付した」
●結論:黙認も含む。
●問題「善意」
●理由:商取引の迅速性から、無過失まで要求することは妥当ではない。また、文言上も限定はない。(●方針:SHORT「重過失は悪意と同視される。」)
●結論:善意・無重過失
●問題:「第三者」
●理由:…
●結論:直接の相手方(判例)
●参考:学説は反対
●問題:代表取締役の登記(911条3項14号)により悪意擬制(908条1項前段)されるか。(同項の「正当事由」は限定的なので)両条項の関係が問題。
●結論:908条1項後段の特則●確認:前段?
●理由:商取引の反復性・迅速性から、逐一登記簿閲覧を要求する趣旨ではなく、閲覧していなくとも特別に保護する趣旨。
●補足:辞任の登記をしていた場合等、他のケースでは原則通り(表見法理等でも保護されない)。
●問題:表見代理規定(民法112条等)の適用の有無。●検討
●結論:肯定
●理由:商業登記の公示力を没却
●参考:350条
(忠実義務)
第三百五十五条 取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。
(競業及び利益相反取引の制限)
第三百五十六条 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
2 民法第百八条の規定は、前項の承認を受けた同項第二号又は第三号の取引については、適用しない。
競業避止義務
●条文:356条1項1号(・365条1項)
●趣旨:取締役が、企業秘密等を知る地位を利用し、会社の利益の擬制の下、自己又は第三者の利益を図ることを防止
●補足:取締役への単なる就任は非該当
●問題:「ために」
●結論:計算説(通説)
●理由:損害額の推定規定(423条2項)に照らし、会社の計算によらない行為の規制が趣旨
●問題:「会社の事業の部類に属する取引」
●理由:趣旨
●結論:広く会社の事業と市場において競合する可能性がある取引
●展開:会社が準備段階・一時休止中でも「会社の事業」に含まれる。
●問題:違反の効果
●結論:有効(取引自体は)
●理由:無効にしても損害回復なし。取引の相手方の信頼保護。
●補足:違反でなくとも、別途善管注意義務(330条、644条)・忠実義務(355条)違反の可能性はある。また、信義則(民法1条2項)上の責任や不法行為責任(民法709条)の可能性もある。但し、公序良俗(民法90条)違反の制限は受けない。
競業避止義務違反の行為の効力●検討
●問題:明文なし
●趣旨:取締役、会社の利益の擬制の下、自己又は第三者の利益を図ることを防止
●原則:無効(356条2項反対解釈)
●歯止:しかし、第三者の取引の安全
●結論:そこで、会社は第三者の悪意を立証しなければ、無効主張不可(判例同旨)
●問題:相手方からの無効主張
●結論:不可
●理由:趣旨
●条文:423条3項(・4項)、428条
利益相反取引
●認識:とりかく相手方の代表者に着目すればOK
●条文:356条1項2号・3号、365条1項
●趣旨:取締役が、会社の犠牲の下、自己又は第三者の利益を図ることを防止
●結論:趣旨に照らし、実質的に判断
●問題:「ために」(1項2号)
●結論:名義説
●理由:実質的な利益相反取引は間接取引(3号)として規制。
●前提:まず、直接ではない(2号ではない)と認定する。
●問題:「利益が相反する取引」(3号)
●理由:実質判断となるため、限定しなければ、あまりに取引の安全を害する(●通説)。●想定的無効説(最大判S46.10.13)によっても不十分となる。
●結論:外形的・客観的に判断(通説)
●結論:計算説●確認:別問題?
●理由:趣旨
●補足:「取締役の債務を保証」は明文で例示されている。
●補足:利益・不利益を具体的に認定する。
●問題:効力
●理由:会社の利益と第三者の取引の安全との調和の見地から
●結論:会社と、取締役等の直接の相手方(356条2項反対解釈)、及び悪意の第三者、との間では無効(判例・通説)。
●私見:重過失も含めて良いだろう。
●参考:趣旨から会社不利益となりうるものは広く「取引」。手形行為(①原因関係とは別個の債務、②重い義務である(立証責任・抗弁切断等))。よって特段の事情がない限り「取引」該当。
●参考:423条2項
(株主による取締役の行為の差止め)
第三百六十条 六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主は、取締役が株式会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該株式会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる。
2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは、「株主」とする。
3 監査役設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社における第一項の規定の適用については、同項中「著しい損害」とあるのは、「回復することができない損害」とする。
取締役の違法行為差止請求権
●条文:360条(385条、399条の6、407条)
●趣旨:原則として役員が差し止める。しかし、役員相互の馴れ合いの可能性。そこで、株主自身が。
●処理:1項~3項まで全て見て、あてはめ。
●補足:3項に注意(重要)
●参考:385条
(取締役の報酬等)
第三百六十一条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三 報酬等のうち当該株式会社の募集株式(第百九十九条第一項に規定する募集株式をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については、当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項
四 報酬等のうち当該株式会社の募集新株予約権(第二百三十八条第一項に規定する募集新株予約権をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については、当該募集新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項
五 報酬等のうち次のイ又はロに掲げるものと引換えにする払込みに充てるための金銭については、当該イ又はロに定める事項
イ 当該株式会社の募集株式 取締役が引き受ける当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項
ロ 当該株式会社の募集新株予約権 取締役が引き受ける当該募集新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項
六 報酬等のうち金銭でないもの(当該株式会社の募集株式及び募集新株予約権を除く。)については、その具体的な内容
2 監査等委員会設置会社においては、前項各号に掲げる事項は、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別して定めなければならない。
3 監査等委員である各取締役の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、第一項の報酬等の範囲内において、監査等委員である取締役の協議によって定める。
4 第一項各号に掲げる事項を定め、又はこれを改定する議案を株主総会に提出した取締役は、当該株主総会において、当該事項を相当とする理由を説明しなければならない。
5 監査等委員である取締役は、株主総会において、監査等委員である取締役の報酬等について意見を述べることができる。
6 監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の報酬等について監査等委員会の意見を述べることができる。
7 次に掲げる株式会社の取締役会は、取締役(監査等委員である取締役を除く。以下この項において同じ。)の報酬等の内容として定款又は株主総会の決議による第一項各号に掲げる事項についての定めがある場合には、当該定めに基づく取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として法務省令で定める事項を決定しなければならない。ただし、取締役の個人別の報酬等の内容が定款又は株主総会の決議により定められているときは、この限りでない。
一 監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって、金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないもの
二 監査等委員会設置会社
取締役の報酬(退職慰労金)
●問題:「報酬等」(361条1項)該当性(退職慰労金)
●趣旨:いわゆるお手盛りによる会社財産棄損を防止するため、株主の判断に委ねる。
●理由:①退職者以外の者についても、将来の退職を想定し高額としがち。②「職務執行の対価」の後払い的性格を有する。
●結論:あたる。
●前提:一般論としては、総額・上限を決めて一任する決議は有効。更に代表取締役への一任も可能(判例)。●認識:趣旨に反せず。
●問題:「一 報酬等のうち額が確定しているものについては、『その額』」該当性(取締役会への上限なき一任(退職慰労金))
●対立:退職慰労金は一人又は少数につき決議することが多く、プライバシー保護の要請がある。
●基準:①一定の基準が慣行乃至内規で確定、②株主にも推知可能、且つ③明示又は黙示にその基準に従う趣旨での総会決議があれば、お手盛りの危険はない。
●結論:「その額」を決議したものとして有効
●補足:事後的に決議しても、趣旨を没却する特段の事情がない限り、有効。
●参考:監査役の独立性を報酬面から確保する趣旨(387条1項)
●判例:最高裁昭和39年判例(取締役・監査役区別せず。)●理解:学説は反対
●補足:新株予約権については、361条1項4号、2号、施行規則98条の3等
●検討:定款・株主総会決議により金額が定められていない場合の報酬請求権の有無・範囲●論点?
●補足:大会社であれば、361条7項の話も。
取締役の報酬(その他)
●問題:使用人兼務取締役の使用人分給与
●理由:給与体系が確立していれば、趣旨は達成される。(また、404条3項反対解釈)
●結論:使用人分は必要ない。
●問題:一方的な減額
●結論:契約内容(330条・民法648条)となるため、原則として無効
●結論:予め具体的な業務毎の金額が定めてある場合、それを認識しつつ就任したなら、業務が変われば減額可能。黙示の同意あり。有効。●判例
または、「正当な理由」(339条2項)があれば、解任までできる。よって、より軽い減額も可能。職務怠慢等の場合。
●注意:以上、あくまで株主総会決議による。取締役会決議では不可。
●問題:新株予約権(募集新株予約権を除く)の発行の時期・方法の決定の一任(361条1項6号)
●理由:趣旨
●基準:例えば、①行使価格の総額、及び②目的たる株式数は株主総会決議で決定していれば、
●結論:有効
●参考:募集新株予約権(309条2項6号、239条1項)
●確認:改正?
取締役の監視義務
●理由:取締役会招集権限あり(366条1項本文、2項、3項)
●結論:非上程事項についても、監視義務(362条2項2号)あり。ワンマンなら因果関係なしとも。
(取締役会の権限等)
第三百六十二条 取締役会は、すべての取締役で組織する。
2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
一 取締役会設置会社の業務執行の決定
二 取締役の職務の執行の監督
三 代表取締役の選定及び解職
3 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。
4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
七 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
5 大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない。
「重要な財産」(362条4項1号)
●趣旨:会社財産に影響する重要事項につき、取締役会による慎重な判断を経ることにより、会社の利益を図る。
●理由:会社への影響の大きさは、会社毎に個別判断する必要あり。
●結論:当該財産の価額、会社の総資産に占める割合、保有目的、処分態様、会社における従来の取扱い等の事情を総合考慮して決する。
●判例:最判H6.1.20
「多額の借財」(362条4項2号)
●趣旨:会社財産に影響する重要事項につき、取締役会による慎重な判断を経ることにより、会社の利益を図る。
●理由:会社への影響の大きさは、会社毎に個別判断する必要あり。下記事情を総合考慮して決する。
●結論:当該借財の額・金利・返済期限、会社の業種・規模(財政状態・経営成績・資金繰り)、市場動向、及び先例等
「業務の適正を確保するために必要な…体制の整備」(362条4項2号)
●知識:大会社(2条6号)の取締役会は、内部統制システム構築義務(362条5項、4項6号)を負う。
●問題:(1)構築・(2)運用の各々について検討
(1)経営判断原則(争いあるも)
(2)信頼の原則:構築につき問題ない以上、信頼することが合理的。あとは、システムが機能していないと疑うに足りる特別の事情があるかを検討
●知識:大会社でない場合、善管注意義務(330条・民法644条)そのものの論証。
取締役会決議の瑕疵(招集手続等)
●問題:明文なし。
●理由:362条2項1号や同項2号のために重要。
●原則:無効
●例外:出席しても決議に影響がない特段の事情がある場合、会社の業務執行の円滑のため、
●補足:例:公開企業(2条5号)の場合、取締役会決議(201条1項前段、199条2項)。
●結論:有効
●考慮要素:当該取締役の実質的影響力、意見・立場と決議内容との関係等を総合考慮し判断
●注意:取締役会決議自体の問題。無効だとしても、新株発行が無効かは別問題。
●条文:招集手続(368条1項)、招集権者(366条1項)、持ち回り決議(370条参照)、招集通知に記載なき場合(問題なし。309条5項、298条1項2号と同様の規定なし。)
取締役会決議の欠如(代表取締役の行為の効力)
●問題:明文なし。
●理由:包括的代表権(349条4項)の存在から、第三者の信頼保護。
●原則:有効
●例外:無効
●要件:相手方が悪意・有過失(判例)。
●理由:趣旨
●論理:民法93条1項但書類推(判例は当該法的構成につき明言はせず)
●補足:無効は会社のみが主張可能(判例)。●認識:立証責任も。
●補足:直接の相手方ではない場合、相対的無効説まで展開が必要な場合も。
特別利害関係人(369条2項)
●趣旨:取締役と会社の利益が対立する場合、会社の利益の犠牲の下、自己の利益を図るおそれがある。
●結論:「特別の利害関係を有する」とは、かかるおそれが類型的に認められる場合をいうと解される。
●帰結:議決権行使不可
●展開:代表取締役の解職の場合(一切の私心を去ることは期待できないため該当)、本人は、審議への参加や議長として行為することも不可。●理解:いずれも解釈上
●補足:他方、明文上、定足数にも参入されず(369条1項)。
●問題:効果
●理由:決議の適正と安定の調和の見地から
●結論:831条2項類推
(監査役設置会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表等)
第三百八十六条 第三百四十九条第四項、第三百五十三条及び第三百六十四条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合には、当該各号の訴えについては、監査役が監査役設置会社を代表する。
一 監査役設置会社が取締役(取締役であった者を含む。以下この条において同じ。)に対し、又は取締役が監査役設置会社に対して訴えを提起する場合
二 株式交換等完全親会社(第八百四十九条第二項第一号に規定する株式交換等完全親会社をいう。次項第三号において同じ。)である監査役設置会社がその株式交換等完全子会社(第八百四十七条の二第一項に規定する株式交換等完全子会社をいう。次項第三号において同じ。)の取締役、執行役(執行役であった者を含む。以下この条において同じ。)又は清算人(清算人であった者を含む。以下この条において同じ。)の責任(第八百四十七条の二第一項各号に掲げる行為の効力が生じた時までにその原因となった事実が生じたものに限る。)を追及する訴えを提起する場合 三 最終完全親会社等(第八百四十七条の三第一項に規定する最終完全親会社等をいう。次項第四号において同じ。)である監査役設置会社がその完全子会社等(同条第二項第二号に規定する完全子会社等をいい、同条第三項の規定により当該完全子会社等とみなされるものを含む。次項第四号において同じ。)である株式会社の取締役、執行役又は清算人に対して特定責任追及の訴え(同条第一項に規定する特定責任追及の訴えをいう。)を提起する場合
2 第三百四十九条第四項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、監査役が監査役設置会社を代表する。
一 監査役設置会社が第八百四十七条第一項、第八百四十七条の二第一項若しくは第三項(同条第四項及び第五項において準用する場合を含む。)又は第八百四十七条の三第一項の規定による請求(取締役の責任を追及する訴えの提起の請求に限る。)を受ける場合
二 監査役設置会社が第八百四十九条第四項の訴訟告知(取締役の責任を追及する訴えに係るものに限る。)並びに第八百五十条第二項の規定による通知及び催告(取締役の責任を追及する訴えに係る訴訟における和解に関するものに限る。)を受ける場合
三 株式交換等完全親会社である監査役設置会社が第八百四十七条第一項の規定による請求(前項第二号に規定する訴えの提起の請求に限る。)をする場合又は第八百四十九条第六項の規定による通知(その株式交換等完全子会社の取締役、執行役又は清算人の責任を追及する訴えに係るものに限る。)を受ける場合
四 最終完全親会社等である監査役設置会社が第八百四十七条第一項の規定による請求(前項第三号に規定する特定責任追及の訴えの提起の請求に限る。)をする場合又は第八百四十九条第七項の規定による通知(その完全子会社等である株式会社の取締役、執行役又は清算人の責任を追及する訴えに係るものに限る。)を受ける場合
監査役(業務監査の範囲)
●問題:適法性のみか、妥当性までか。所有と経営の分離(295条2項)から必要性あり。
●結論:妥当性には及ばず。
●理由:経営の専門家ではない。また、責任重くなり、なり手がいなくなる。
●補足:「著しく不当な事項」(384条)は、330条・民法644条違反レベル。よって不都合ない。
●参考:調査権限(381条2項)、382条、385条、独任制(390条2項但書)
●参考:「取締役」・「使用人」(335条2項)の問題
(横滑り監査役:問題(年度途中での交替は自己監査へ)。兼任のみ禁止している(355条2項)点を反対解釈。任務懈怠でカバー)。弁護士としての訴訟受任(独立性がある))。
役員の損害賠償責任(全体像)
●423条:会社。●注意:同条2項(356条1項1号)、3項(同項2号・3号)、4項(同項2号・3号)にも注意。
●以下、免責
●424条:総株主
●425条:株主総会
●426条:定款
●427条:契約(定款・取締役会(●確認))
●以上、免責
●428条:1項(356条1項2号)、2項(適用除外)
●429条:第三者
●430条:連帯
●補足:過失相殺・遅延損害金・消滅時効等が問題となる場合あり(民法によれば良い)。
第十一節 役員等の損害賠償責任
(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)
第四百二十三条 取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
2 取締役又は執行役が第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して第三百五十六条第一項第一号の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。
3 第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。
一 第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役
二 株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役
三 当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(指名委員会等設置会社においては、当該取引が指名委員会等設置会社と取締役との間の取引又は指名委員会等設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)
4 前項の規定は、第三百五十六条第一項第二号又は第三号に掲げる場合において、同項の取締役(監査等委員であるものを除く。)が当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、適用しない。
(株式会社に対する損害賠償責任の免除)
第四百二十四条 前条第一項の責任は、総株主の同意がなければ、免除することができない。
(責任の一部免除)
第四百二十五条 前条の規定にかかわらず、第四百二十三条第一項の責任は、当該役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、賠償の責任を負う額から次に掲げる額の合計額(第四百二十七条第一項において「最低責任限度額」という。)を控除して得た額を限度として、株主総会(株式会社に最終完全親会社等(第八百四十七条の三第一項に規定する最終完全親会社等をいう。以下この節において同じ。)がある場合において、当該責任が特定責任(第八百四十七条の三第四項に規定する特定責任をいう。以下この節において同じ。)であるときにあっては、当該株式会社及び当該最終完全親会社等の株主総会。以下この条において同じ。)の決議によって免除することができる。
一 当該役員等がその在職中に株式会社から職務執行の対価として受け、又は受けるべき財産上の利益の一年間当たりの額に相当する額として法務省令で定める方法により算定される額に、次のイからハまでに掲げる役員等の区分に応じ、当該イからハまでに定める数を乗じて得た額
イ 代表取締役又は代表執行役 六
ロ 代表取締役以外の取締役(業務執行取締役等であるものに限る。)又は代表執行役以外の執行役 四
ハ 取締役(イ及びロに掲げるものを除く。)、会計参与、監査役又は会計監査人 二 二 当該役員等が当該株式会社の新株予約権を引き受けた場合(第二百三十八条第三項各号に掲げる場合に限る。)における当該新株予約権に関する財産上の利益に相当する額として法務省令で定める方法により算定される額
2 前項の場合には、取締役(株式会社に最終完全親会社等がある場合において、同項の規定により免除しようとする責任が特定責任であるときにあっては、当該株式会社及び当該最終完全親会社等の取締役)は、同項の株主総会において次に掲げる事項を開示しなければならない。
一 責任の原因となった事実及び賠償の責任を負う額
二 前項の規定により免除することができる額の限度及びその算定の根拠
三 責任を免除すべき理由及び免除額
3 監査役設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社においては、取締役(これらの会社に最終完全親会社等がある場合において、第一項の規定により免除しようとする責任が特定責任であるときにあっては、当該会社及び当該最終完全親会社等の取締役)は、第四百二十三条第一項の責任の免除(取締役(監査等委員又は監査委員であるものを除く。)及び執行役の責任の免除に限る。)に関する議案を株主総会に提出するには、次の各号に掲げる株式会社の区分に応じ、当該各号に定める者の同意を得なければならない。
一 監査役設置会社 監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、各監査役)
二 監査等委員会設置会社 各監査等委員
三 指名委員会等設置会社 各監査委員
4 第一項の決議があった場合において、株式会社が当該決議後に同項の役員等に対し退職慰労金その他の法務省令で定める財産上の利益を与えるときは、株主総会の承認を受けなければならない。当該役員等が同項第二号の新株予約権を当該決議後に行使し、又は譲渡するときも同様とする。
5 第一項の決議があった場合において、当該役員等が前項の新株予約権を表示する新株予約権証券を所持するときは、当該役員等は、遅滞なく、当該新株予約権証券を株式会社に対し預託しなければならない。この場合において、当該役員等は、同項の譲渡について同項の承認を受けた後でなければ、当該新株予約権証券の返還を求めることができない。
(取締役等による免除に関する定款の定め)
第四百二十六条 第四百二十四条の規定にかかわらず、監査役設置会社(取締役が二人以上ある場合に限る。)、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社は、第四百二十三条第一項の責任について、当該役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、責任の原因となった事実の内容、当該役員等の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときは、前条第一項の規定により免除することができる額を限度として取締役(当該責任を負う取締役を除く。)の過半数の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって免除することができる旨を定款で定めることができる。
2 前条第三項の規定は、定款を変更して前項の規定による定款の定め(取締役(監査等委員又は監査委員であるものを除く。)及び執行役の責任を免除することができる旨の定めに限る。)を設ける議案を株主総会に提出する場合、同項の規定による定款の定めに基づく責任の免除(取締役(監査等委員又は監査委員であるものを除く。)及び執行役の責任の免除に限る。)についての取締役の同意を得る場合及び当該責任の免除に関する議案を取締役会に提出する場合について準用する。この場合において、同条第三項中「取締役(これらの会社に最終完全親会社等がある場合において、第一項の規定により免除しようとする責任が特定責任であるときにあっては、当該会社及び当該最終完全親会社等の取締役)」とあるのは、「取締役」と読み替えるものとする。
3 第一項の規定による定款の定めに基づいて役員等の責任を免除する旨の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)を行ったときは、取締役は、遅滞なく、前条第二項各号に掲げる事項及び責任を免除することに異議がある場合には一定の期間内に当該異議を述べるべき旨を公告し、又は株主に通知しなければならない。ただし、当該期間は、一箇月を下ることができない。
4 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「公告し、又は株主に通知し」とあるのは、「株主に通知し」とする。
5 株式会社に最終完全親会社等がある場合において、第三項の規定による公告又は通知(特定責任の免除に係るものに限る。)がされたときは、当該最終完全親会社等の取締役は、遅滞なく、前条第二項各号に掲げる事項及び責任を免除することに異議がある場合には一定の期間内に当該異議を述べるべき旨を公告し、又は株主に通知しなければならない。ただし、当該期間は、一箇月を下ることができない。
6 公開会社でない最終完全親会社等における前項の規定の適用については、同項中「公告し、又は株主に通知し」とあるのは、「株主に通知し」とする。
7 総株主(第三項の責任を負う役員等であるものを除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主が同項の期間内に同項の異議を述べたとき(株式会社に最終完全親会社等がある場合において、第一項の規定による定款の定めに基づき免除しようとする責任が特定責任であるときにあっては、当該株式会社の総株主(第三項の責任を負う役員等であるものを除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は当該最終完全親会社等の総株主(第三項の責任を負う役員等であるものを除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主が第三項又は第五項の期間内に当該各項の異議を述べたとき)は、株式会社は、第一項の規定による定款の定めに基づく免除をしてはならない。 8 前条第四項及び第五項の規定は、第一項の規定による定款の定めに基づき責任を免除した場合について準用する。
(責任限定契約)
第四百二十七条 第四百二十四条の規定にかかわらず、株式会社は、取締役(業務執行取締役等であるものを除く。)、会計参与、監査役又は会計監査人(以下この条及び第九百十一条第三項第二十五号において「非業務執行取締役等」という。)の第四百二十三条第一項の責任について、当該非業務執行取締役等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を非業務執行取締役等と締結することができる旨を定款で定めることができる。
2 前項の契約を締結した非業務執行取締役等が当該株式会社の業務執行取締役等に就任したときは、当該契約は、将来に向かってその効力を失う。
3 第四百二十五条第三項の規定は、定款を変更して第一項の規定による定款の定め(同項に規定する取締役(監査等委員又は監査委員であるものを除く。)と契約を締結することができる旨の定めに限る。)を設ける議案を株主総会に提出する場合について準用する。この場合において、同条第三項中「取締役(これらの会社に最終完全親会社等がある場合において、第一項の規定により免除しようとする責任が特定責任であるときにあっては、当該会社及び当該最終完全親会社等の取締役)」とあるのは、「取締役」と読み替えるものとする。
4 第一項の契約を締結した株式会社が、当該契約の相手方である非業務執行取締役等が任務を怠ったことにより損害を受けたことを知ったときは、その後最初に招集される株主総会(当該株式会社に最終完全親会社等がある場合において、当該損害が特定責任に係るものであるときにあっては、当該株式会社及び当該最終完全親会社等の株主総会)において次に掲げる事項を開示しなければならない。
一 第四百二十五条第二項第一号及び第二号に掲げる事項
二 当該契約の内容及び当該契約を締結した理由
三 第四百二十三条第一項の損害のうち、当該非業務執行取締役等が賠償する責任を負わないとされた額
5 第四百二十五条第四項及び第五項の規定は、非業務執行取締役等が第一項の契約によって同項に規定する限度を超える部分について損害を賠償する責任を負わないとされた場合について準用する。
(取締役が自己のためにした取引に関する特則)
第四百二十八条 第三百五十六条第一項第二号(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引(自己のためにした取引に限る。)をした取締役又は執行役の第四百二十三条第一項の責任は、任務を怠ったことが当該取締役又は執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることができない。
2 前三条の規定は、前項の責任については、適用しない。
(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
第四百二十九条 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2 次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
一 取締役及び執行役 次に掲げる行為
イ 株式、新株予約権、社債若しくは新株予約権付社債を引き受ける者の募集をする際に通知しなければならない重要な事項についての虚偽の通知又は当該募集のための当該株式会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料についての虚偽の記載若しくは記録
ロ 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
ハ 虚偽の登記
ニ 虚偽の公告(第四百四十条第三項に規定する措置を含む。)
二 会計参与 計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに会計参与報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
三 監査役、監査等委員及び監査委員 監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
四 会計監査人 会計監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
(役員等の連帯責任)
第四百三十条 役員等が株式会社又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の役員等も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。
423条(趣旨)
●趣旨:民法415条の他、会社の利益保護のため、各種推定により取締役への責任追及を容易にした。
●補足:任務懈怠があっても、過失がなければ責任なし。会社法は両者を区別(428条1項参照)。
●参照:429条●検討
●補足:「『任務を怠った』といえるか?…にあたれば、そう言える。そこで、…が問題となる。」という形で、あらゆる法律違反において使用される。効果から要件を検討する姿勢。
429条1項(法的性質)
●方針:Short:趣旨を記載して。「よって、「悪意又は重大な過失」は任務懈怠で足り、「損害」は広く間接損害を、また「第三者」には株主をも含むと解される。」でOK。
●趣旨:株式会社の経済社会に占める地位の重要性、及びその活動が取締役の職務に依存することに照らし、第三者を保護すること(判例)。
●結論:そこで、第三者保護のため、役員等に対し厳格な法定責任を課した。
●展開:その①任務懈怠についてさえ、②悪意・重過失があれば、第三者に対し責任を負う。
●展開:直接・間接の区別困難。ゆえ趣旨に照らし、広く間接損害も含む。
●要件:③損害の発生及びその数額、並びに④(任務懈怠)との因果関係
●注意:債権者の回収不能は「間接」損害の典型例
●注意:任務懈怠と悪意・重過失は分ける。忘れがち。
●問題:株主
●結論:●趣旨から、直接損害との関係では「第三者」に該当する。
●結論:しかし、間接損害については847条で損害回復可能ゆえ、該当しないと解される。
●判例:最高裁判例はなし。東京高判H17.1.18等。
429条2項(法的性質)
●趣旨:第三者の直接損害保護
●結論:429条1項とは異なり、証明責任転換された過失責任
●理由:情報開示の必要性とそれが虚偽の場合の危険性
●参考:取締役の第三者責任については、経営判断原則の適用につき、肯定説・否定説がある。
計算
会計帳簿等(433条)
(会計帳簿の閲覧等の請求)
第四百三十三条 総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は発行済株式(自己株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
2 前項の請求があったときは、株式会社は、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができない。
一 当該請求を行う株主(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
二 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
三 請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。
四 請求者が会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき。
五 請求者が、過去二年以内において、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
3 株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、会計帳簿又はこれに関する資料について第一項各号に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
4 前項の親会社社員について第二項各号のいずれかに規定する事由があるときは、裁判所は、前項の許可をすることができない。
●問題:「請求者が…実質的に競争関係にある事業を営み」(433条2項3号)
●理由:①競業者による情報利用を事後的・実効的に規制することは困難(必要性)、②1号の存在から、3号では、主観的意図を問わないと解され、実際にも「目的」との文言はない(許容性)。
●要件:客観的に競争関係にあれば、
●結論:主観的意図を問わず、適用可能。
●展開:会計帳簿の提出命令(434条)等と共に、合併等の問題点チェックに活用される。
資本原則
●条文:資本充実(34条1項・63条1項、52条)●参考:36条3項、63条3項
●条文:資本維持(461条、445条3項・4項)
●条文:資本不変(447条1項・309条2項9号、449条)
●参考:資本確定は放棄(●だろう)
(剰余金の額)
第四百四十六条 株式会社の剰余金の額は、第一号から第四号までに掲げる額の合計額から第五号から第七号までに掲げる額の合計額を減じて得た額とする。
一 最終事業年度の末日におけるイ及びロに掲げる額の合計額からハからホまでに掲げる額の合計額を減じて得た額
イ 資産の額
ロ 自己株式の帳簿価額の合計額
ハ 負債の額
ニ 資本金及び準備金の額の合計額
ホ ハ及びニに掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
二 最終事業年度の末日後に自己株式の処分をした場合における当該自己株式の対価の額から当該自己株式の帳簿価額を控除して得た額
三 最終事業年度の末日後に資本金の額の減少をした場合における当該減少額(次条第一項第二号の額を除く。)
四 最終事業年度の末日後に準備金の額の減少をした場合における当該減少額(第四百四十八条第一項第二号の額を除く。)
五 最終事業年度の末日後に第百七十八条第一項の規定により自己株式の消却をした場合における当該自己株式の帳簿価額
六 最終事業年度の末日後に剰余金の配当をした場合における次に掲げる額の合計額
イ 第四百五十四条第一項第一号の配当財産の帳簿価額の総額(同条第四項第一号に規定する金銭分配請求権を行使した株主に割り当てた当該配当財産の帳簿価額を除く。)
ロ 第四百五十四条第四項第一号に規定する金銭分配請求権を行使した株主に交付した金銭の額の合計額
ハ 第四百五十六条に規定する基準未満株式の株主に支払った金銭の額の合計額
七 前二号に掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
第六節 剰余金の配当等に関する責任
(配当等の制限)
第四百六十一条 次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下この節において同じ。)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。
一 第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求に応じて行う当該株式会社の株式の買取り
二 第百五十六条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得(第百六十三条に規定する場合又は第百六十五条第一項に規定する場合における当該株式会社による株式の取得に限る。)
三 第百五十七条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得
四 第百七十三条第一項の規定による当該株式会社の株式の取得
五 第百七十六条第一項の規定による請求に基づく当該株式会社の株式の買取り
六 第百九十七条第三項の規定による当該株式会社の株式の買取り
七 第二百三十四条第四項(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による当該株式会社の株式の買取り
八 剰余金の配当
2 前項に規定する「分配可能額」とは、第一号及び第二号に掲げる額の合計額から第三号から第六号までに掲げる額の合計額を減じて得た額をいう(以下この節において同じ。)。
一 剰余金の額
二 臨時計算書類につき第四百四十一条第四項の承認(同項ただし書に規定する場合にあっては、同条第三項の承認)を受けた場合における次に掲げる額
イ 第四百四十一条第一項第二号の期間の利益の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
ロ 第四百四十一条第一項第二号の期間内に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
三 自己株式の帳簿価額
四 最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
五 第二号に規定する場合における第四百四十一条第一項第二号の期間の損失の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
六 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
(剰余金の配当等に関する責任)
第四百六十二条 前条第一項の規定に違反して株式会社が同項各号に掲げる行為をした場合には、当該行為により金銭等の交付を受けた者並びに当該行為に関する職務を行った業務執行者(業務執行取締役(指名委員会等設置会社にあっては、執行役。以下この項において同じ。)その他当該業務執行取締役の行う業務の執行に職務上関与した者として法務省令で定めるものをいう。以下この節において同じ。)及び当該行為が次の各号に掲げるものである場合における当該各号に定める者は、当該株式会社に対し、連帯して、当該金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う。
一 前条第一項第二号に掲げる行為 次に掲げる者
イ 第百五十六条第一項の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の金銭等の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役(当該株主総会に議案を提案した取締役として法務省令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)
ロ 第百五十六条第一項の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の金銭等の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役(当該取締役会に議案を提案した取締役(指名委員会等設置会社にあっては、取締役又は執行役)として法務省令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)
二 前条第一項第三号に掲げる行為 次に掲げる者
イ 第百五十七条第一項の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第三号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役
ロ 第百五十七条第一項の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第三号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役
三 前条第一項第四号に掲げる行為 第百七十一条第一項の株主総会(当該株主総会の決議によって定められた同項第一号に規定する取得対価の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合における当該株主総会に限る。)に係る総会議案提案取締役
四 前条第一項第六号に掲げる行為 次に掲げる者
イ 第百九十七条第三項後段の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役
ロ 第百九十七条第三項後段の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役
五 前条第一項第七号に掲げる行為 次に掲げる者
イ 第二百三十四条第四項後段(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた第二百三十四条第四項第二号(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役
ロ 第二百三十四条第四項後段(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた第二百三十四条第四項第二号(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役
六 前条第一項第八号に掲げる行為 次に掲げる者
イ 第四百五十四条第一項の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた配当財産の帳簿価額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役
ロ 第四百五十四条第一項の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた配当財産の帳簿価額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役
2 前項の規定にかかわらず、業務執行者及び同項各号に定める者は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、同項の義務を負わない。
3 第一項の規定により業務執行者及び同項各号に定める者の負う義務は、免除することができない。ただし、前条第一項各号に掲げる行為の時における分配可能額を限度として当該義務を免除することについて総株主の同意がある場合は、この限りでない。
(株主に対する求償権の制限等)
第四百六十三条 前条第一項に規定する場合において、株式会社が第四百六十一条第一項各号に掲げる行為により株主に対して交付した金銭等の帳簿価額の総額が当該行為がその効力を生じた日における分配可能額を超えることにつき善意の株主は、当該株主が交付を受けた金銭等について、前条第一項の金銭を支払った業務執行者及び同項各号に定める者からの求償の請求に応ずる義務を負わない。
2 前条第一項に規定する場合には、株式会社の債権者は、同項の規定により義務を負う株主に対し、その交付を受けた金銭等の帳簿価額(当該額が当該債権者の株式会社に対して有する債権額を超える場合にあっては、当該債権額)に相当する金銭を支払わせることができる。
(買取請求に応じて株式を取得した場合の責任)
第四百六十四条 株式会社が第百十六条第一項又は第百八十二条の四第一項の規定による請求に応じて株式を取得する場合において、当該請求をした株主に対して支払った金銭の額が当該支払の日における分配可能額を超えるときは、当該株式の取得に関する職務を行った業務執行者は、株式会社に対し、連帯して、その超過額を支払う義務を負う。ただし、その者がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
2 前項の義務は、総株主の同意がなければ、免除することができない。
(欠損が生じた場合の責任)
第四百六十五条 (略)
(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
第四百二十九条 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2 次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
一 取締役及び執行役 次に掲げる行為
イ 株式、新株予約権、社債若しくは新株予約権付社債を引き受ける者の募集をする際に通知しなければならない重要な事項についての虚偽の通知又は当該募集のための当該株式会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料についての虚偽の記載若しくは記録
ロ 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
ハ 虚偽の登記
ニ 虚偽の公告(第四百四十条第三項に規定する措置を含む。)
二 会計参与 計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに会計参与報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
三 監査役、監査等委員及び監査委員 監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
四 会計監査人 会計監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
剰余金の違法配当(461条1項8号違反)
●前提:104条等の例の論証→剰余金の配当(453条)制限
●前提:手続規制違反は原状回復義務(民法121条の2第1項)を負担。
●結論:無効(訴え不要)(多数説)●帰結:株主は原状回復義務(民法121条の2第1項)を負担。●検討:462条1項との関係。特則?
●理由:会社債権者保護。法令違反の機関決議が無効であることとと同様。「交付を受けた金銭等の帳簿価額」(462条1項柱書)。
●参考:「効力を生じた日」(463条1項)は、461条違反の配当が有効であることを前提としていると考えられること、及び無効とすると相手方に同時履行の抗弁権(民法533条類推)が認められる不都合から、有効説(立法担当者)も有力。反論:461条1項は同時履行の抗弁に関する特則と解される。
●補足:気にしない。分配可能額規制違反の自己株式取得で差異が生じる程度。●検討
●参照:461条2項
違法配当に関する責任(461条~465条)
1. 「金銭等の交付を受けた者」(株主等)(462条1項柱書)●認識:自己株式取得の場合、履行すれば民法422類推により株式取戻し。
(1)無過失責任(462条2項反対解釈)。善意株主も。他方、全額免除可能(463条3項反対解釈)。cf.その分役員が負担
(2)「善意の株主」(463条1項)は、業務執行者等からの求償に応じる義務はない。●趣旨:違法行為者自身による求償は不合理。
●注意:「株式会社」(462条1項柱書)自体への支払い義務はある。
(3)(悪意の場合は勿論)「善意の株主」であっても、会社債権者からは直接支払請求される(463条2項(民法703条、704条))。
●対第三者(債権者)責任ゆえ会社による免除不可(当然)。●補足:債権者代位権の特則(無資力要件必要?●不要で良い。)
2.「業務執行者」(462条1項柱書)
3.「各号に定める者」(462条1項柱書):「議案提案取締役」(株主総会(462条1項6号イ)、取締役会(462条1項6号ロ))
●上記2・3の者の責任の趣旨:各株主への請求は事実上困難であるため。●補足:大株主の場合には妥当せずだが。
●上記2・3の者(株主ではない)については、無過失の抗弁(462条2項)あり。
●上記2・3の者(株主ではない)については、原則免除不可(462条3項本文)。但し、総株主の同意による、分配可能額限度での免除可(462条3項但書)●一部免除なし(●理由確認)。
●対第三者(債権者)責任(取締役(462条1項、429条1項))は別問題(全く関与していない取締役等については特に)。
4.監査役・会計監査人(423条1項(436条1項・2項から)、429条1項)●通常の任務懈怠責任。●参考:過失相殺の可能性あり。
【参照】429条2項(2号・3号・4号)も
①趣旨:第三者の直接損害の賠償が目的。②証明責任が転換(各号の行為は類型的な任務懈怠行為ゆえ)。●認識:無過失責任ではない。
●注意:計算書類を見た場合に限る。因果関係は必要なので。
●注意:金額
1.対会社:「帳簿価額」(462条1項柱書、463条1項等)
2.対債権者:「 帳簿価額(当該額が当該債権者の株式会社に対して有する債権額を超える場合にあっては、当該債権額) 」’(463条2項)
●参考:四季報上の計算書類情報を見て手形取得した場合、429条2項類推否定(名古屋高判S58.7.1)。●取引実情無視と批判強い。
●参照:465条も。刑事:963条5項2号も。
組織再編
(事業譲渡等の承認等)
第四百六十七条 株式会社は、次に掲げる行為をする場合には、当該行為がその効力を生ずる日(以下この章において「効力発生日」という。)の前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならない。
一 事業の全部の譲渡
二 事業の重要な一部の譲渡(当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えないものを除く。)
二の二 その子会社の株式又は持分の全部又は一部の譲渡(次のいずれにも該当する場合における譲渡に限る。)
イ 当該譲渡により譲り渡す株式又は持分の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えるとき。
ロ 当該株式会社が、効力発生日において当該子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有しないとき。
三 他の会社(外国会社その他の法人を含む。次条において同じ。)の事業の全部の譲受け
四 事業の全部の賃貸、事業の全部の経営の委任、他人と事業上の損益の全部を共通にする契約その他これらに準ずる契約の締結、変更又は解約
五 当該株式会社(第二十五条第一項各号に掲げる方法により設立したものに限る。以下この号において同じ。)の成立後二年以内におけるその成立前から存在する財産であってその事業のために継続して使用するものの取得。ただし、イに掲げる額のロに掲げる額に対する割合が五分の一(これを下回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えない場合を除く。
イ 当該財産の対価として交付する財産の帳簿価額の合計額
ロ 当該株式会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額
2 前項第三号に掲げる行為をする場合において、当該行為をする株式会社が譲り受ける資産に当該株式会社の株式が含まれるときは、取締役は、同項の株主総会において、当該株式に関する事項を説明しなければならない。
事業譲渡
●問題:「事業…譲渡」(467条1項1号・2号)として株主総会の特別決議が必要なものは?
●理由:譲受人や債権者等(●条等)の保護のため明確とすべく、「事業…譲渡」(21条1項)と同義と解される。
●結論:そこで、①一定の事業目的のために組織化された有機的一体として機能する財産の移転、②譲受会社が事業を承継、③譲渡会社が法律上当然に競業避止義務(21条1項)を負うと解される。
●参考:②について、また特に③について、要否につき争いあり。●認識:両方不要が近時有力。②③は21条以下の問題に過ぎない。らしい。
●判例:最大判S40.9.22
●参考:一部譲受には決議不要な理由(事業規模縮小ではない。会社に与える影響が小さい。)●参照:467条1項3号
●問題:決議を経ない場合の効力
●結論:無効
●理由:基礎的変更なので株主保護。取引の相手方に調査要求も酷ではない。
●展開:相手方からも無効主張は可能。
●歯止:投機的な行為は信義則(民法1条2項)違反の可能性あり。
●判例:最判S61.9.11
●条文:特別決議(467条1項5号、309条2項11号)
●条文:株式買取請求権(469条)
合併
●注意:以下、新設合併に関する条項は削除した。なお、分割等は別論。
●注意:事前・事後のメルクマールは効力発生(決議ではない)●確認。●吸収説ゆえ効力発生前後でも分ける。●検討
●補足:効力発生前(831条1項3号、784条の2(決議取消の認容判決確定なら当然〇(※1)⇔取消事由があるなら未確定でも〇でOK(※2)
●補足:効力発生後(831☓。吸収説。合併無効の訴えで。)合併無効の訴え(828条1項7号。メイン):比率無効事由☓(買取請求ある)、取消事由は無効事由?(決議欠くなら〇、(※1)、(※2)こう考えないと提訴期間守れず。但し、取消事由主張は3か月以内のみ。この点を忘れない。)
●条文:特別決議(309条2項12号、783条1項(手続(795条1項)))
●条文:株式買取請求権(785条1項柱書、 2項1号イ)(手続(797条)))
●条文:債権者保護(消滅会社(789条)、存続会社(799条))
●条文:効力(750条1項)
●条文:事前(決議前)開示(消滅会社(782条1項1号等・3項等)、存続会社(794条))●371条2項・3項、●433条1項、442条4項、785条2項イ、●784の2第1号(2要件)(H:難しいだろう。差し止め事由が?なお、それを本案とする合併差止仮処分(民保法23条2項)ありえるが同じく。)
●条文:事後開示(801条)●認識:存続会社のみ
●条文:差止請求(消滅会社(784条の2)、存続会社(796条の2))
●参考:略式・簡易(796条)●確認
●参考:会計帳簿閲覧請求権(433条1項)・会計帳簿の提出命令(434条)等も、事前の手段として、合併等の問題点チェックに活用される。
●補足:783手続
吸収合併等差止め
●条文:784条の2・796条の2
●趣旨:一度合併した会社を再度分割することは非常に困難●参考:違法行為差止は要件が厳しい。
●問題:差止事由
●要件:①法令・定款違反(1号)(●注意:善管注意義務違反は非該当)、②「株主が不利益を受けるおそれ」(柱書)(当事者適格)
●補足:2号は、略式・簡易(784条・796条)の話なので、ここでは省略。
●結論:対価が著しく不相当、というだけでは不可。
●理由:784条の2項2号反対解釈
株式交換・株式移転
●条文:2条31号・32号
●原則:債権者保護不要
●例外:条文(789条1項3号、799条1項3号、810条1項3号)
吸収分割・新設分割
●条文:2条29号・30号
●条文:757条~(●契約締結:目的物(2号)、対価(3号・4号)、効力発生日(7号)等)、762条~。●吸収分割(cf.758条4号イ)●794条以下見つつ。●手続:757、795、799(以上H)
●条文:特別決議(783条1項、795条1項、804条1項、309条2項12号)●参照:説明義務(795条2項2号等)●参照:簡易分割(796条2項本文参照)●略式も見る。
●条文:株式買取請求権(785条、797条1項、806条1項)●通知(797条3項)・公告(同4項)(趣旨:買取請求の機会付与)
●条文:債権者保護(789条2項、799条2項・1項2号、5項、810条)
(分割会社の不法行為債権者(789条3項括弧書、810条3項括弧書、759条2項・3項))
(分割会社の債権者の限定(789条1項2号、810条1項2号))
●条文:事前開示(782条、794条1項、803条)(●趣旨:株主総会・債権者保護手続きの必要情報開示)、事後開示(791条1項1号、801条3項2号、811条、815条)●趣旨(事後開示):無効の訴え(828条1項9号)提起の判断資料提供
●条文:計画・契約(757条、762条)
●条文:登記(923条、924条)
●条文:詐害(759条4項本文、761条4項本文、764条4項、766条4項)●詐害行為取消権の論点は残る(らしい)。
●条文:刑事責任(759条2項・3項、764条2項・3項)
●参考:784条、805条
詐害的会社分割
●条文:2条29号・30号
●条文:757条~、762条~
●条文:特別決議(783条1項、795条1項、804条1項、309条2項12号)
●条文:株式買取請求権(785条、797条1項、806条1項)
●条文:債権者保護(789条2項、799条、810条)
●条文:事前開示(782条、794条、803条)、事後開示(791条、801条、811条、815条)
●条文:計画・契約(757条、762条)
●条文:登記(923条、924条)
●条文:詐害(759条4項本文(から7項)、761条4項本文(から7項)、764条4項(から7項)、766条4項(から7項))●詐害行為取消権の論点は残る(らしい)。
●条文:刑事責任(759条2項・3項、764条2項・3項)
●参考:784条、805条
●参考:債務の「履行の見込み」(782条1項、794条1項、803条1項、規則183条6号、192条7号、205条7号)がないことは会社分割の無効事由とはならない(立法担当者)。理由:①資本金0円もOK、②債権者保護手続きの問題。●認識:これで良い。無効説もあるが。
詐害行為取消権(吸収分割・新設分割無効の訴えとの関係)
●問題:①組織的行為であり、「財産権」を目的としない行為(民法424条2項)では?、②新設分割無効の訴え以外の事由を認める?
●理由:①併有しているだけ。債権者保護の必要はある(810条1項2号参照)。②認めても、新設会社の設立には影響しない。
●結論:対象となる。
●問題:効果
●理由:設立会社は抜け殻となり存続困難となり法的安定性を害する。その意味で、新設分割無効の訴え(828条1項10号)との不整合が生じうる。
●結論:価格賠償に留める。また可分なら一部に限定(東京高裁判決平成22年10月27日)。
雑則
●マニュアル:原告・被告・管轄を認定する(全て書くかは別)。
●条文:386条(監査役設置会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表等)
●条文:監査役の選任に関する監査役の同意等(343条1項、3項)
●条文:決議取消しにより監査役としての権利義務を有することとなる者(345条1項):原告適格
●条文:監査役の選任に関する意見陳述の機会(345条4項、1項)が奪われた場合
第二章 訴訟
第一節 会社の組織に関する訴え
(会社の組織に関する行為の無効の訴え)
第八百二十八条 次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。
一 会社の設立 会社の成立の日から二年以内
二 株式会社の成立後における株式の発行 株式の発行の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、株式の発行の効力が生じた日から一年以内)
三 自己株式の処分 自己株式の処分の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、自己株式の処分の効力が生じた日から一年以内)
四 新株予約権(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合にあっては、当該新株予約権付社債についての社債を含む。以下この章において同じ。)の発行 新株予約権の発行の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、新株予約権の発行の効力が生じた日から一年以内)
五 株式会社における資本金の額の減少 資本金の額の減少の効力が生じた日から六箇月以内
六 会社の組織変更 組織変更の効力が生じた日から六箇月以内
七 会社の吸収合併 吸収合併の効力が生じた日から六箇月以内
八 会社の新設合併 新設合併の効力が生じた日から六箇月以内
九 会社の吸収分割 吸収分割の効力が生じた日から六箇月以内
十 会社の新設分割 新設分割の効力が生じた日から六箇月以内
十一 株式会社の株式交換 株式交換の効力が生じた日から六箇月以内
十二 株式会社の株式移転 株式移転の効力が生じた日から六箇月以内
十三 株式会社の株式交付 株式交付の効力が生じた日から六箇月以内
2 次の各号に掲げる行為の無効の訴えは、当該各号に定める者に限り、提起することができる。
一 前項第一号に掲げる行為 設立する株式会社の株主等(株主、取締役又は清算人(監査役設置会社にあっては株主、取締役、監査役又は清算人、指名委員会等設置会社にあっては株主、取締役、執行役又は清算人)をいう。以下この節において同じ。)又は設立する持分会社の社員等(社員又は清算人をいう。以下この項において同じ。)
二 前項第二号に掲げる行為 当該株式会社の株主等
三 前項第三号に掲げる行為 当該株式会社の株主等
四 前項第四号に掲げる行為 当該株式会社の株主等又は新株予約権者
五 前項第五号に掲げる行為 当該株式会社の株主等、破産管財人又は資本金の額の減少について承認をしなかった債権者
六 前項第六号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において組織変更をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は組織変更後の会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは組織変更について承認をしなかった債権者
七 前項第七号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において吸収合併をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は吸収合併後存続する会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは吸収合併について承認をしなかった債権者
八 前項第八号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において新設合併をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は新設合併により設立する会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは新設合併について承認をしなかった債権者
九 前項第九号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において吸収分割契約をした会社の株主等若しくは社員等であった者又は吸収分割契約をした会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは吸収分割について承認をしなかった債権者
十 前項第十号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において新設分割をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は新設分割をする会社若しくは新設分割により設立する会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは新設分割について承認をしなかった債権者
十一 前項第十一号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において株式交換契約をした会社の株主等若しくは社員等であった者又は株式交換契約をした会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは株式交換について承認をしなかった債権者
十二 前項第十二号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において株式移転をする株式会社の株主等であった者又は株式移転により設立する株式会社の株主等、破産管財人若しくは株式移転について承認をしなかった債権者
十三 前項第十三号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において株式交付親会社の株主等であった者、株式交付に際して株式交付親会社に株式交付子会社の株式若しくは新株予約権等を譲り渡した者又は株式交付親会社の株主等、破産管財人若しくは株式交付について承認をしなかった債権者
設立無効の訴え(828条1項1号)
●場面:仮装払込み等
●問題:無効事由(明文なし)
●理由:法が提訴期間(828条1項1号)や原告適格(同2項1号)を限定し、法的安定性を重視した趣旨から。
●結論:設立における重大な瑕疵ある場合に限定。
●具体例:会社の本質に反する。法の要求を満たさず。等。
例えば、(1)失権手続(36条)(●当然失権とすると設立手続続行が困難になる事態を回避する趣旨)の結果、発起人が一株も引き受けない(25条2項)。(2)「最低額」(27条4号)未満の出資、(3)発起人善意の同意なし(32条)。等
●具体例:仮装払込みに係る責任(52条の2第1項、2項)が履行されれば、瑕疵は治癒。同条3項・4項が根拠。以上、平成26年改正。
●参考:株式会社では、設立取消し制度はない(822条2号)。不成立・不存在や詐害行為取消しはありえる(一般条項なので)。
新株発行無効の訴え(828条1項2号、2項2号)
●参考:自己株式処分も同様(同3号・同3号)
●検討:他の訴えとの関係
無効事由
●問題:明文なし
●理由:株式引受人、及び事業規模拡大後の多数の債権者等の保護のため。
●結論:法の趣旨を没却する重大な法令・定款違反の場合に限り、無効と解される。
●具体例:公開会社の取締役会決議(201条1項、199条2項)を欠く場合、会社内部の意思決定に過ぎず、引受人等の保護を重視。有効。
●具体例:有利発行(199条3項、201条1項前段、199条2項、309条2項5号)の場合、会社内部の意思決定に過ぎず、公開会社の流通株式取得者の保護。既存株主の保護は423・429等。有効。
●具体例:差止め仮処分なく、既に「著しく不公正な方法」で発行された場合、上記いずれかと同様でOK(公開か否か等により調整)
●具体例:差止め(210条)の仮処分があった場合。通知・公告(201条3項・4項)違反は無効。事前の株主保護・その機会の付与という制度趣旨に反する。cf.民事保全法23条1項。もっとも、通知・公告については、差止め事由がないことを会社が立証した場合、無効とするのはむしろ不当となる。有効。
●具体例(最判H24.4.24):非公開会社の場合、有利発行でなくとも、株主総会の特別決議(199条2項、309条2項5号)が必要。それを欠くと無効。譲渡制限があり、利害関係人が増えない(●条文確認)。募集株式発行無効の訴えの提訴期間が1年間と長い(828条1項2号かっこ書き)(●これは、公示(通知・公告)がなく、株主総会で初めて知ることから)。既存株主の持株比率維持の利益を重視。
●具体例:通知・公告(206条の2第1項、同2項)(●業務執行につき知り得ない株主に対し差止めの機会を保障する趣旨を没却するため)、株主総会決議(同条4項)(普通決議ではあるが)が欠けても無効。支配株主の異動は会社の基礎の変更であり、通常の経済的利益保護を超える。通知・公告(201条3項・4項)のみでは、特定引受人が有することとなる議決権数が不明。また、反対通知が10分の1に達したことも不明。
●具体例:経済的不利益のみであれば、代表訴訟(212条1項1号、847条1項・3項)によればよく、否定。また、公開会社では、持株比率の低下についても、市場での買い増しによるカバーが可能であるため、否定。
●判例:公示(通知・公告)の欠如以外に差止原因がなかった場合、例外的に無効主張不可とする(最判H9.1.28)。
●参考:定款で株主総会決議事項とされても、第三者への対抗不可(349条5項)
吸収合併(828条1項7号)
●条文:無効の訴え(839条)
合併無効原因
●問題:明文なし(828条柱書に規定がないという一般的な問題)
●結論:原則として、有効。
●理由:①利害関係者が多数に上るため、法的安定性を重視。(遡及効の否定(839条)や訴えに限ること、更には原告適格限定(828条1項柱書、同条2項)法定にも現れ)、②買取請求等でカバーすることも可能。
●例外:ただし、重大な法令・定款違法に限り、無効。
●理由:独立した契約当事者同士の交渉による合理的な価格合意が可能。不合理な場合、役員への責任追及可能(429条等)。
●結論:合併比率の不公正自体は無効原因とならない(東京高判H2.1.31(上告審:最判H5.10.5))。
●具体例(無効):契約・契約の必要的記載事項欠缺、意思表示の瑕疵等による無効、総会の不存在・無効・取消、債権者異議手続欠缺、開示の欠缺・不実記載等。
●前提:取消判決前でも取消事由があれば無効事由となる(多数説)。
●問題:株主総会決議取消しの訴えとの関係
●結論:効力発生後は無効確認の訴えのみ
●理由:組織再編行為自体の問題といえる。適宜訴えの変更(民訴法143条)。
●条件:取消原因があることを無効原因として主張する場合、3ヶ月間の期間制限に服する(831条1項柱書)。
●補足:実際に取消された場合、無効原因となる。
(新株発行等の不存在の確認の訴え)
第八百二十九条 次に掲げる行為については、当該行為が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。
一 株式会社の成立後における株式の発行
二 自己株式の処分
三 新株予約権の発行
新株発行不存在確認の訴え(829条1号)cf.自己株式処分の場合も同様(同2項)
(株主総会等の決議の不存在又は無効の確認の訴え)
第八百三十条 株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会(以下この節及び第九百三十七条第一項第一号トにおいて「株主総会等」という。)の決議については、決議が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。
2 株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる。
株式総会決議不存在・無効確認の訴え(830条・838条)●趣旨:不存在、又は重大な瑕疵の確認
(株主総会等の決議の取消しの訴え)
第八百三十一条 次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより株主(当該決議が創立総会の決議である場合にあっては、設立時株主)又は取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)、監査役若しくは清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
二 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。
三 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
2 前項の訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる。
株主総会決議取消しの訴え(831条・838条)
●訴訟要件:①原告適格(831条1項柱書)、②被告適格(834条17号)、③出訴期間(831条1項柱書)、④管轄(835条1項)、⑤訴えの利益(本案判決の必要性・実効性)●参考:遡及効(839条)
●趣旨:重大ではない瑕疵につき、公正を図りつつ、早期に決議の効力を確定させる。●参考:内容の法令違反は無効。
●私見:決議の内容が著しく不公正は、規定されていない。●検討:きりがないから?
●問題:当事者適格(例:他の株主に対する招集通知漏れ)「株主等」の意義
●理由:趣旨。「株主等」以外の制限文言なし。
●結論:(公正確保の観点から)該当する。
●応用:議決権制限株式(108条1項3号)・単元未満株式(189条1項)は、内容の定款違反(831条1項2号)・著しく不当な決議(同3号)のみ。他は必要性がない。●認識:これで良い(I)
●効果:遡及的無効(839条の反対解釈)●違法配当からも。●…は民法703条。但し相殺。●参考:838条
●展開:第三者は908条や354条類推で保護。423・429類推も。
●定義:「特別の利害関係」とは、株主としての資格を離れた個人的な利害関係。会社法上決議への参加自体は原則として認められており、限定的な解釈は不要。●メモ:自己株式の取得の相手方となる場合が例外。取締役とは違うということ。解任決議対象の取締役は該当しない(最高裁判例)。資本的多数決の原則や854がある等から。
●定義:「著しく不当な決議」とは、少数株主にとり不当に不利な決議。多数決の濫用を抑制する条文趣旨から。●私見:こちらの要件が肝心。
●注意:「著しく不当な決議」には最良棄却はない。文言上。
●参考:自己株式の譲渡人(140条3項、160条4項、175条2項)
●問題:取消事由の追加
●理由:趣旨
●結論:同じく3ヶ月以内
●参考:招集通知(299条1項)
●問題:否決の決議(最高裁H28.3.4)●304条但書
●結論:訴えの利益なし
●理由:①瑕疵あれば当事者間では3年間の制限なし、②趣旨は成立した決議に法的安定性を付与するもの。
●問題:訴えの利益
●結論:全員退任の場合、特別の事情のないかぎり、訴えの利益を欠くこととなる(●最判S45.4.2)。
●展開:(選任決議に争いがある役員で構成される取締役会により招集された)株主総会において新たに選任されたとしても、(いわゆる全員出席総会においてされたなどの)特段の事情がない限り、訴えの利益が存する(●最判H11.3.25)。
●条文:招集権者等(298条)、招集通知の省略(300条)、計算書類(437条)、株主総会参考書類(301条1項、規則65条)、期間の遵守(299条1項)、総会の日時・場所(298条1項1号、規則63条)、議題の記載(298条1項2号)、議案通知請求権(305条)、書面性(299条2項柱書)、役員等の選解任(341条)、招集通知記載の議題(309条5項、298条1項2号)、議案の追加請求権(304条)、説明義務(314条、規則71条)、定款による代理人資格制限(310条)
●参考:組織再編行為の承認決議については、取消訴訟(831条1項1号)と差止請求を本案として、効力発生前の差止め仮処分(民事保全法23条2項)の申立て可能。
●注意:(取消事由がある場合には)最後に、では裁量棄却されないか、を検討する。重大・影響の両方をあてはめる。
(被告)
第八百三十四条 次の各号に掲げる訴え(以下この節において「会社の組織に関する訴え」と総称する。)については、当該各号に定める者を被告とする。 一 会社の設立の無効の訴え 設立する会社 二 株式会社の成立後における株式の発行の無効の訴え(第八百四十条第一項において「新株発行の無効の訴え」という。) 株式の発行をした株式会社 三 自己株式の処分の無効の訴え 自己株式の処分をした株式会社 四 新株予約権の発行の無効の訴え 新株予約権の発行をした株式会社 五 株式会社における資本金の額の減少の無効の訴え 当該株式会社 六 会社の組織変更の無効の訴え 組織変更後の会社 七 会社の吸収合併の無効の訴え 吸収合併後存続する会社 八 会社の新設合併の無効の訴え 新設合併により設立する会社 九 会社の吸収分割の無効の訴え 吸収分割契約をした会社 十 会社の新設分割の無効の訴え 新設分割をする会社及び新設分割により設立する会社 十一 株式会社の株式交換の無効の訴え 株式交換契約をした会社 十二 株式会社の株式移転の無効の訴え 株式移転をする株式会社及び株式移転により設立する株式会社 十二の二 株式会社の株式交付の無効の訴え 株式交付親会社 十三 株式会社の成立後における株式の発行が存在しないことの確認の訴え 株式の発行をした株式会社 十四 自己株式の処分が存在しないことの確認の訴え 自己株式の処分をした株式会社 十五 新株予約権の発行が存在しないことの確認の訴え 新株予約権の発行をした株式会社 十六 株主総会等の決議が存在しないこと又は株主総会等の決議の内容が法令に違反することを理由として当該決議が無効であることの確認の訴え 当該株式会社 十七 株主総会等の決議の取消しの訴え 当該株式会社 十八 第八百三十二条第一号の規定による持分会社の設立の取消しの訴え 当該持分会社 十九 第八百三十二条第二号の規定による持分会社の設立の取消しの訴え 当該持分会社及び同号の社員 二十 株式会社の解散の訴え 当該株式会社 二十一 持分会社の解散の訴え 当該持分会社
(認容判決の効力が及ぶ者の範囲)
第八百三十八条 会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する。
(無効又は取消しの判決の効力)
第八百三十九条 会社の組織に関する訴え(第八百三十四条第一号から第十二号の二まで、第十八号及び第十九号に掲げる訴えに限る。)に係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされ、又は取り消された行為(当該行為によって会社が設立された場合にあっては当該設立を含み、当該行為に際して株式又は新株予約権が交付された場合にあっては当該株式又は新株予約権を含む。)は、将来に向かってその効力を失う。
売渡株式等の取得無効の訴え(846条の2)
●問題:無効事由の明文なし
●結論:他よりは広い
●理由:一人に株式が集中するのみであり、新たな法律関係の積み重ねはない。
●展開:非公開会社では、より広く。
●理由:市場価格がなく、不適正になりがち。
第二節 株式会社における責任追及等の訴え
(株主による責任追及等の訴え)
第八百四十七条 六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第百八十九条第二項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第四百二十三条第一項に規定する役員等をいう。)若しくは清算人(以下この節において「発起人等」という。)の責任を追及する訴え、第百二条の二第一項、第二百十二条第一項若しくは第二百八十五条第一項の規定による支払を求める訴え、第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え又は第二百十三条の二第一項若しくは第二百八十六条の二第一項の規定による支払若しくは給付を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。
2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは、「株主」とする。
3 株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。
4 株式会社は、第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しない場合において、当該請求をした株主又は同項の発起人等から請求を受けたときは、当該請求をした者に対し、遅滞なく、責任追及等の訴えを提起しない理由を書面その他の法務省令で定める方法により通知しなければならない。
5 第一項及び第三項の規定にかかわらず、同項の期間の経過により株式会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、第一項の株主は、株式会社のために、直ちに責任追及等の訴えを提起することができる。ただし、同項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
(旧株主による責任追及等の訴え)
第八百四十七条の二 次の各号に掲げる行為の効力が生じた日の六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から当該日まで引き続き株式会社の株主であった者(第百八十九条第二項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主であった者を除く。以下この条において「旧株主」という。)は、当該株式会社の株主でなくなった場合であっても、当該各号に定めるときは、当該株式会社(第二号に定める場合にあっては、同号の吸収合併後存続する株式会社。以下この節において「株式交換等完全子会社」という。)に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、責任追及等の訴え(次の各号に掲げる行為の効力が生じた時までにその原因となった事実が生じた責任又は義務に係るものに限る。以下この条において同じ。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該旧株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式交換等完全子会社若しくは次の各号の完全親会社(特定の株式会社の発行済株式の全部を有する株式会社その他これと同等のものとして法務省令で定める株式会社をいう。以下この節において同じ。)に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。 一 当該株式会社の株式交換又は株式移転 当該株式交換又は株式移転により当該株式会社の完全親会社の株式を取得し、引き続き当該株式を有するとき。 二 当該株式会社が吸収合併により消滅する会社となる吸収合併 当該吸収合併により、吸収合併後存続する株式会社の完全親会社の株式を取得し、引き続き当該株式を有するとき。
2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「次の各号に掲げる行為の効力が生じた日の六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から当該日まで引き続き」とあるのは、「次の各号に掲げる行為の効力が生じた日において」とする。
3 旧株主は、第一項各号の完全親会社の株主でなくなった場合であっても、次に掲げるときは、株式交換等完全子会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、責任追及等の訴えの提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該旧株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式交換等完全子会社若しくは次の各号の株式を発行している株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。 一 当該完全親会社の株式交換又は株式移転により当該完全親会社の完全親会社の株式を取得し、引き続き当該株式を有するとき。 二 当該完全親会社が合併により消滅する会社となる合併により、合併により設立する株式会社又は合併後存続する株式会社若しくはその完全親会社の株式を取得し、引き続き当該株式を有するとき。
4 前項の規定は、同項第一号(この項又は次項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)に掲げる場合において、旧株主が同号の株式の株主でなくなったときについて準用する。
5 第三項の規定は、同項第二号(前項又はこの項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)に掲げる場合において、旧株主が同号の株式の株主でなくなったときについて準用する。この場合において、第三項(前項又はこの項において準用する場合を含む。)中「当該完全親会社」とあるのは、「合併により設立する株式会社又は合併後存続する株式会社若しくはその完全親会社」と読み替えるものとする。
6 株式交換等完全子会社が第一項又は第三項(前二項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定による請求(以下この条において「提訴請求」という。)の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該提訴請求をした旧株主は、株式交換等完全子会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。
7 株式交換等完全子会社は、提訴請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しない場合において、当該提訴請求をした旧株主又は当該提訴請求に係る責任追及等の訴えの被告となることとなる発起人等から請求を受けたときは、当該請求をした者に対し、遅滞なく、責任追及等の訴えを提起しない理由を書面その他の法務省令で定める方法により通知しなければならない。
8 第一項、第三項及び第六項の規定にかかわらず、同項の期間の経過により株式交換等完全子会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、提訴請求をすることができる旧株主は、株式交換等完全子会社のために、直ちに責任追及等の訴えを提起することができる。
9 株式交換等完全子会社に係る適格旧株主(第一項本文又は第三項本文の規定によれば提訴請求をすることができることとなる旧株主をいう。以下この節において同じ。)がある場合において、第一項各号に掲げる行為の効力が生じた時までにその原因となった事実が生じた責任又は義務を免除するときにおける第五十五条、第百二条の二第二項、第百三条第三項、第百二十条第五項、第二百十三条の二第二項、第二百八十六条の二第二項、第四百二十四条(第四百八十六条第四項において準用する場合を含む。)、第四百六十二条第三項ただし書、第四百六十四条第二項及び第四百六十五条第二項の規定の適用については、これらの規定中「総株主」とあるのは、「総株主及び第八百四十七条の二第九項に規定する適格旧株主の全員」とする。
(最終完全親会社等の株主による特定責任追及の訴え)
第八百四十七条の三 六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式会社の最終完全親会社等(当該株式会社の完全親会社等であって、その完全親会社等がないものをいう。以下この節において同じ。)の総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は当該最終完全親会社等の発行済株式(自己株式を除く。)の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、当該株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、特定責任に係る責任追及等の訴え(以下この節において「特定責任追及の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 特定責任追及の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社若しくは当該最終完全親会社等に損害を加えることを目的とする場合
二 当該特定責任の原因となった事実によって当該最終完全親会社等に損害が生じていない場合
2 前項に規定する「完全親会社等」とは、次に掲げる株式会社をいう。
一 完全親会社
二 株式会社の発行済株式の全部を他の株式会社及びその完全子会社等(株式会社がその株式又は持分の全部を有する法人をいう。以下この条及び第八百四十九条第三項において同じ。)又は他の株式会社の完全子会社等が有する場合における当該他の株式会社(完全親会社を除く。)
3 前項第二号の場合において、同号の他の株式会社及びその完全子会社等又は同号の他の株式会社の完全子会社等が他の法人の株式又は持分の全部を有する場合における当該他の法人は、当該他の株式会社の完全子会社等とみなす。
4 第一項に規定する「特定責任」とは、当該株式会社の発起人等の責任の原因となった事実が生じた日において最終完全親会社等及びその完全子会社等(前項の規定により当該完全子会社等とみなされるものを含む。次項及び第八百四十九条第三項において同じ。)における当該株式会社の株式の帳簿価額が当該最終完全親会社等の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超える場合における当該発起人等の責任をいう(第十項及び同条第七項において同じ。)。
5 最終完全親会社等が、発起人等の責任の原因となった事実が生じた日において最終完全親会社等であった株式会社をその完全子会社等としたものである場合には、前項の規定の適用については、当該最終完全親会社等であった株式会社を同項の最終完全親会社等とみなす。
6 公開会社でない最終完全親会社等における第一項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式会社」とあるのは、「株式会社」とする。
7 株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に特定責任追及の訴えを提起しないときは、当該請求をした最終完全親会社等の株主は、株式会社のために、特定責任追及の訴えを提起することができる。
8 株式会社は、第一項の規定による請求の日から六十日以内に特定責任追及の訴えを提起しない場合において、当該請求をした最終完全親会社等の株主又は当該請求に係る特定責任追及の訴えの被告となることとなる発起人等から請求を受けたときは、当該請求をした者に対し、遅滞なく、特定責任追及の訴えを提起しない理由を書面その他の法務省令で定める方法により通知しなければならない。
9 第一項及び第七項の規定にかかわらず、同項の期間の経過により株式会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、第一項に規定する株主は、株式会社のために、直ちに特定責任追及の訴えを提起することができる。ただし、同項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
10 株式会社に最終完全親会社等がある場合において、特定責任を免除するときにおける第五十五条、第百三条第三項、第百二十条第五項、第四百二十四条(第四百八十六条第四項において準用する場合を含む。)、第四百六十二条第三項ただし書、第四百六十四条第二項及び第四百六十五条第二項の規定の適用については、これらの規定中「総株主」とあるのは、「総株主及び株式会社の第八百四十七条の三第一項に規定する最終完全親会社等の総株主」とする。
株主代表訴訟(847条・847条の2)
●方針:「訴訟提起を請求(847条1項)し、適宜株主代表訴訟(同条3項・5項)を提起することが考えられる。」。「株主代表訴訟(847条1項、3項、5項、423条1項)」。●参考:「解任」(339条1項、854条)
●趣旨:取締役等に対する責任追及は、会社が行うのが原則。しかし、取締役等と他の会社関係者等との関係性から、不十分になりがち。そこで、株主が自ら(●キーワード:馴れ合い防止)。
●問題:「責任」
●結論:取引上の債務も含まれる(判例)。
●理由:①会社が責任追及を怠る可能性がある点において等しく趣旨が妥当。(②文言上「責任」に限定なし。)
●補足:職務範囲外の不法行為責任は除く。「役員等…の責任」なので。
●補足:847条5項もある。
●参考:いわゆる株主代表訴訟による損害賠償請求(847条3項、423条1項)、と表現する。
●参考:株主でなくなった者の訴訟追行(851条)→更に平成26年会社法改正→847条の2
●参考:「悪意」(847条の4)は、不当訴訟・不法不当な目的ありと言える場合(東京高裁裁判例・通説)。趣旨に照らし歯止めは最低限。
●参考:単なる訴訟参加は、特段要件なく可能(849条1項本文)。●認識:問題にはならないが、前提として書く場合も?
(訴えの管轄)
第八百四十八条 責任追及等の訴えは、株式会社又は株式交換等完全子会社(以下この節において「株式会社等」という。)の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
第三節 株式会社の役員の解任の訴え
(株式会社の役員の解任の訴え)
第八百五十四条 役員(第三百二十九条第一項に規定する役員をいう。以下この節において同じ。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき又は当該役員を解任する旨の株主総会の決議が第三百二十三条の規定によりその効力を生じないときは、次に掲げる株主は、当該株主総会の日から三十日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができる。 一 総株主(次に掲げる株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。) イ 当該役員を解任する旨の議案について議決権を行使することができない株主 ロ 当該請求に係る役員である株主 二 発行済株式(次に掲げる株主の有する株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。) イ 当該株式会社である株主 ロ 当該請求に係る役員である株主
2 公開会社でない株式会社における前項各号の規定の適用については、これらの規定中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
3 第百八条第一項第九号に掲げる事項(取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行している場合における第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(第三百四十七条第一項の規定により読み替えて適用する第三百三十九条第一項の種類株主総会を含む。)」とする。
4 第百八条第一項第九号に掲げる事項(監査役に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行している場合における第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(第三百四十七条第二項の規定により読み替えて適用する第三百三十九条第一項の種類株主総会を含む。)」とする。
(被告)
第八百五十五条 前条第一項の訴え(次条及び第九百三十七条第一項第一号ヌにおいて「株式会社の役員の解任の訴え」という。)については、当該株式会社及び前条第一項の役員を被告とする。
(訴えの管轄)
第八百五十六条 株式会社の役員の解任の訴えは、当該株式会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
取締役解任の訴え(854条)
●趣旨:通常、多数派により選任される役員を株主総会決議により解任すること(339条1項、341条)は難しいため、少数株主保護として。
●条文:監査役が代表(386条1項)、管轄(856条)
●論点:「役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき」(司法平成28年)●結論:趣旨から、流会の場合でも該当。●認識:現場問題
登記(908条1項後段)
●定義:「正当な事由」とは、登記制度の信頼性保護のため、登記簿の消失、天変地異等の客観的障害を指すと解される。
●参考:商法9条1項後段
各種「役員」
●問題:選任決議を欠く。
●結論:原則非該当
●趣旨:908条2項の趣旨は、外観への第三者の信頼保護
●理由:善意の第三者保護のため、就任登記について承諾した帰責性があれば
●例外:908条2項類推(「登記した者」は、申請者たる会社なので類推。)
●補足:429条等の責任を負う。黙示も含む。●私見:就任OKしている以上、登記もOKしているはず。議論意味なし?
●問題:退任登記未了(選任決議を欠く、も)
●結論:原則非該当。
●趣旨:趣旨
●要件:明示的承諾等の特段の事情があれば(判例)
●例外:908条2項類推(「登記した者」は、申請者たる会社なので類推。)
●補足:429条等の責任を負う。退任登記には関与しないのが通常なので、黙示では足りない。●確認済み
●問題:事実上の取締役
●結論:原則非該当。908条2項類推も不可。●私見:使用人として。
●問題:名目的取締役
●結論:原則「役員」該当(366条1項、362条2項2号適用あり)。例外あるかを検討。
●補足:監視義務の免除は、424条によっても不可。●私見:会社の根本的仕組みを害するため、法が予定していない。