民事訴訟法(R2)
【問題文】
(〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は,7:3)
次の文章を読んで,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
【事例】
X運転の普通乗用自動車が,Y運転の普通自動二輪車に追突する事故が発生した(以下「本件事
故」という。)。
Xは,Yに生じた損害として,Y所有の自動二輪車の損傷について損害賠償債務が発生したこと
を認め,このYの物損については,XY間の合意に基づき,Xの加入する保険会社から損害額の全
額が支払われた。しかし,本件事故によるYの人的損害の発生については,XY間の主張が食い違
い,交渉が平行線となった。
そこで,Xは,Yに対し,本件事故に基づくYの人的損害については生じていないとして,X
のYに対する本件事故による損害賠償債務が存在しないことの確認を求める訴えを提起した(以
下「本訴」という。)。
Yは,この本訴請求に対し,本件事故によりYに頭痛の症状が生じ,現在も治療中であると主
張して争うとともに,本件事故による治療費用としてYが多額の支出をしているので,その支出
と通院に伴う慰謝料の一部のみをまずは請求すると主張し,Xに対し,本件事故による損害賠償
請求の一部請求として,500万円及びこれに対する本件事故日以降の遅延損害金の支払を求め
る反訴を提起した。
なお,以下の各設問では,遅延損害金については検討の対象外とし,論じる必要はない。
〔設問1〕
受訴裁判所は,審理の結果,Yを治療した医師の証言等の結果から,以下のような心証を形成
した。
Yには本件事故後に頭痛の症状が認められたが,既に必要な治療は終了している。そして,そ
の頭痛の症状及び程度からすれば,本件事故前からのYの持病である慢性頭痛と考えるのが相当で
あるから,本件事故による損害とは認められない。その他,本件事故によるYの人的損害の発生を
認めるに足りる証拠はない。そして,Yは,本件事故による物損について損害額の全額の支払を受
けているから,Yの損害はすべて填補されたというべきである。
この場合に,受訴裁判所は,本訴についてどのような判決を下すべきか,判例の立場に言及し
つつ,答えなさい。また,本訴についての判決の既判力は,当該判決のどのような判断について生
じるか,答えなさい。
〔設問2〕
裁判所は,〔設問1〕のとおり本訴について判決するとともに,反訴(一部請求)について請求棄却
の判決をして,同判決が確定した(以下「前訴判決」という。)。
しかし,前訴判決後,Yは,当初訴えていた頭痛だけでなく,手足に強いしびれが生じるようにな
り,介護が必要な状態となった。
そこで,Yは,前訴判決後に生じた各症状は本件事故に基づくものであり,後遺症も発生したと主
張して,前訴判決後に生じた治療費用,後遺症による逸失利益等の財産的損害とともに本件事故の後
遺症による精神的損害を理由に,Xに対し,本件事故による損害賠償請求の残部請求として,300
0万円及びこれに対する本件事故日以降の遅延損害金の支払を求める新たな訴えを提起した(以下「後
訴」という。)。- 7 –
前訴判決を前提とした上で,後訴においてYの残部請求が認められるためにどのような根拠付けが
可能かについて,判例の立場に言及しつつ,前訴におけるX及びYの各請求の内容に留意して,Y側
の立場から論じなさい。
【メモ】
●参考:最判H22.7.16
【答案例】
第1 設問1
1.金額を明示しない債務不存在確認の訴えの適法性
(1)●(この点、判例は・・・。適法。請求の原因等のみ特定すれば足りる。金額等は債権者が知悉。等)
(2)あ
よって、適法。
2.債務不存在確認の訴えにおいて給付訴訟の反訴がなされた場合の確認の利益
(1)●(この点、判例は・・・。・・・)●最判H16.3.25
(2)あ
よって、単体で見れば、訴え却下をすべきかに思われる。
3.明示的一部請求(反訴)
(1)●(この点、判例は・・・。・・・)●最判S34.2.20、最判S37.8.10、最判H10.6.12
(2)あ
よって、残部については、既判力が及ばないこととなり、紛争の一回的解決とならない。
●B:反訴の存在故に訴えの利益がないとする一方、反訴において有利な本案判決を得る利益を付与しないことは背理。
4.判決
そこで、全部認容判決。
5.既判力
本件事故による損害賠償債務の不存在について。
第2 設問2
1.前訴(反訴)の既判力
本訴判決に対応する形で請求棄却判決がされているはず。
本訴及び反訴の既判力は、本件事故による損害賠償請求権の不存在につき生じる。
2.残部請求(Y側の立場から)
しかし、・・・。そこで、後遺症について、損害の追加請求が出来ないか。
(1)●(この点、判例は・・・。・・・)●最判S42.7.18
(2)あ
よって、残部請求は認められる。
以上