刑事訴訟法(R6)
【問題文】
[刑事訴訟法]
次の【事例】を読んで、後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
【事例】
1 令和6年2月2日午後10時頃、A(30歳代、女性)は、H県I市J町内を歩いていたところ、背後から黒色の軽自動車に衝突された。Aが路上に転倒すると、すぐに同車から男性が降りてきて、「大丈夫ですか。」と声を掛けながらAに歩み寄り、立ち上がろうとしたAの顔面を拳で1回殴り、Aが手に持っていたハンドバッグを奪い取った上で、直ちに同車に乗り込んでその場から逃走した(以上の事件を、以下【事件①】という。)。このとき、Aは、同車のナンバーを目視した。
2 同日午後11時頃、B(50歳代、男性)は、同市K町内を歩いていたところ、背後から黒色の軽自動車に衝突された。Bが路上に転倒すると、すぐに同車から男性が降りてきて、「怪我はありませんか。」と声を掛けながらBに歩み寄り、倒れたままのBが手に持っていたセカンドバッグに手を掛けたが、付近にいた通行人Xと目が合うと同バッグから手を離し、直ちに同車に乗り込んでその場から逃走した(以上の事件を、以下【事件②】という。)。このとき、B及びXは、同車のナンバーを目視することができなかった。
なお、【事件①】と【事件②】の現場は、約3キロメートル離れていたが、いずれも、一戸建ての民家が建ち並ぶ住宅街で、夜間は交通量及び人通りが少ない場所であった。
3 同日以降、【事件①】の犯行に使用された車のナンバーに合致する軽自動車の名義人であった甲に対する捜査が開始され、所要の捜査の結果、甲は、【事件①】については強盗罪、【事件②】については強盗未遂罪により起訴された。
4 公判において、甲及び甲の弁護人は、【事件①】については争わず、金品を奪取する目的でAに軽自動車を衝突させたことなどを認め、裁判所は、証拠調べの結果、【事件①】について、甲に強盗罪が成立するとの心証を得た。
〔設問1〕
甲及び甲の弁護人は、【事件②】について、甲が犯人であることを否認したとする。その場合、甲が【事件①】の犯人であることを、【事件②】の犯人が甲であることを推認させる間接事実として用いることができるかについて論じなさい。
〔設問2〕
甲及び甲の弁護人は、【事件②】について、甲が軽自動車をBに衝突させたことは争わず、金品奪取の目的を否認したとする。その場合、【事件①】で甲が金品奪取の目的を有していたことを、【事件②】で甲が同目的を有していたことを推認させる間接事実として用いることができるかについて論じなさい。
【メモ】
●自己評価:C
●殴ったのは起き上がろうとしたから、だね。
・「衝突させた」を故意・過失で分ければ良かったか。語感からは故意なので認めても良かったか。
【答案例】
第1 設問1
①と②は、(A)令和6年2月2日の10時から11時頃、(B)I市内の人通りが少ない住宅街・夜間、(C)軽自動車衝突させ、で類似している。
1.●論証(類似事実)犯人性の結論のみ書いた。
2.あ:上記BCは普通のこと。Aは相当程度ありうる。3km離れている。車両ナンバー目視なく他に証拠ない。女を殴り、男を殴らず。むしろ違いがある。
よって、不可。
第2 設問2
1.●論証(主観的要素)
2.あ:故意については認識・認容なのでOK。
しかし、目的は別の事故もある。例えば、時間近接ゆえ、①の逃走中に焦って引いた。事後的奪取意思を生じた。等もありうる。
よって、不可。
以上