民事訴訟法(R4)

【問題文】

(〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は、3:2)
次の文章を読んで、後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
【事例】
Xは、自動車の愛好家らによって創設されたクラブであり、20年近くにわたって継続的に活動
を行ってきた。Xの構成員は、現在はA、B、Cらを含む計30名である。また、Xは、その財産
として、不動産、動産及び預金等を有している。Xの規約によれば、Xの意思決定は、原則として、
Xの構成員全員で構成される総会の多数決によることとされているが、不動産等の重要財産を処分
するに当たっては、構成員の3分の2以上の特別多数の同意を要するものとされている。Xの現在
の代表者はAである。
甲土地は、従前、Xの構成員の1人であるCの名義で登記されていた。もっとも、甲土地は、X
の構成員が利用してきたことから、Aは甲土地をXの財産であると認識していた。しかし、Aが登
記を確認したところ、登記名義がCからYに移転されていることが判明した。なお、Yは、Xの構
成員ではない。AがCに対して事情を尋ねたところ、Cは、甲土地はXの財産ではなく、自己の財
産であり、Yの求めに応じて売り渡したと説明した。また、Aは、Yに対して甲土地がXの財産で
ある旨を主張したが、Yは自己の所有権を主張して譲らなかった。
Xの構成員は、現在、甲土地を車の部品などの資材置き場として使用している。
〔設問1〕
AはYとの間で裁判によって甲土地がXの財産であることを確定したいと考えたが、Yに対して
訴えを提起することについては、Cのほか、Cと関係の近い相当数の構成員による反対が予想され
た。以下は、Aの相談を受けた弁護士L1と修習生Pとの対話である。
弁護士L1: 本件においては、Xは権利能力のない社団であり、Xの財産が構成員全員に総有的
に帰属することを前提として、甲土地の総有権の確認を求める訴えを提起することが
考えられますが、その場合、誰が原告となることが考えられるでしょうか。
修習生P : ①Xが原告となり、AがXの代表者として訴えを提起する方法が考えられます。ま
た、②権利の帰属主体である X の構成員らが原告となって訴えを提起する方法も考え
られると思います。
弁護士L1: では、訴えの適法性について、①及び②の方法ごとに考えてみることにしましょう。
本件では、Xの構成員の中に反対者がいるようですが、そのことは、訴えの適法性に
影響を与えるでしょうか。更に考えてみてください。
修習生P : はい。わかりました。
訴えの適法性について、①及び②の方法ごとに、下線部の事情を考慮して、判例の理解を踏まえつ
つ、検討しなさい。なお、解答に当たっては、Xが当事者能力を有することを前提とし、確認の利益
については論じなくてよい。
【事例(続き)】(〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。)
Xは、Yを被告として、甲土地の総有権の確認を求める訴えを適法に提起した(以下「本件訴訟」
という。)。
Yは、当初、訴訟代理人L2に対し、自己の所有権を主張してXの請求の棄却を求めるだけでよ
いとの意向を伝えていたが、本件訴訟の審理が進んだ後で、L2に対して、Xに対して甲土地の明- 7 — 7 –
渡しを求めたいとする意向を伝えた。
L2は、反訴ではなく、㋐本件訴訟係属中に、所有権に基づく甲土地の明渡しを求める訴えをX
に対して別途提起すること(以下「本件別訴」という。)を考えた。
また、L2は、その方法とは別に、㋑まず、本件訴訟においてXの請求を棄却する判決(以下「前
訴判決」という。)を得た上で、本件訴訟終了後に、所有権に基づく甲土地の明渡しを求める訴え
(以下「後訴」という。)をXに対して提起することも考えた。
〔設問2〕
㋐の本件別訴の適法性について、重複起訴が禁止されている趣旨を踏まえて、検討しなさい。ま
た、㋑の方法を採った場合における前訴判決の既判力の後訴に対する作用について、事案に即して
検討しなさい。なお、解答に当たっては、㋐及び㋑におけるXの被告適格については言及しなくて
よい。また、「信義則」及び「争点効」には触れなくてよい。

【メモ】

●自己評価:C
・論証甘い(明文なき任意的訴訟担当等)

【答案例】

第1 設問1
1.①
(1)いわゆる任意的訴訟担当に該当するが、明文がない。認められるか。
●明文なき任意的訴訟担当
(2)あ:処分と表裏の関係にあり重要。そもそも3分の2の賛成により、3分の1の反対は認められない。よって、必要性はあり、C等を除いて3分の2をクリアすれば相当であり要件に該当しOK。
2.②
(1)構成員全員が必要か、
●固有必要的共同訴訟
(2)あ:実体法的には、実体法上そもそも3分の2基準で問題なし。他は訴える必要なし。判例と異なる。ルールなき入会権とも異なる。
●Y敗訴の場合,Cに対する求償。は書いていない。無関係だろうから。
第2 設問2
1.㋐
●趣旨のみ書いて、訴訟物・当事者の同一、書かず。
趣旨に照らし、不適法。判例は、反訴の場合は適法とした。
2.㋑
「Xには所有権なし」(積極的作用)、同一・矛盾・先決(消極的作用)。
あ:明渡請求は不可(矛盾・先決)。不可(同一)。
→Yに所有権がある、ではない。
以上

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